「建物に最適な防水を提供する総合防水メーカー」を目指し、新製品、新工法の開発、そして国内はもとより海外への展開も進めるT社。営業部門と開発部門を一体化し、グループ会社も含めた市場対応型の事業体制に変革した同社が、コミュニケーション促進のために中間管理職研修(マネジメント研修)を導入した理由を人財育成グループのN氏に伺いました。
弊社は雨風から建物を守り、生活環境をより良くするための防水技術にいち早く注目し、先発メーカーとして発展してきました。好景気時代など製品を作れば売れる時期もありましたが、近年のバブル経済崩壊や、競合メーカーの出現などもあり、従来の営業方法では成長の限界が見えてきたのです。
そこで競合他社との差別化を図るだけでなく、潜在需要を掘り起こせるよう市場ニーズに対応した事業体制に改編、提案型のメーカーにシフトしました。提案をするためには、お客様から伺った要件や課題のポイントを製品や工法に照らし合わせ、開発、生産、営業の各部門が連絡を密に取りながら、組織が一体となってソリューションを提供する必要があります。
しかし、そこで課題となったのが「コミュニケーション」。特に管理職クラスで情報の流れがスムーズではないケースが見受けられました。以上のような背景から管理職を対象にコミュニケーションの重要性を理解してもらい、コミュニケーションを通して組織を活性化させるマネジメントを習得できるリンカーン研修を導入しました。
コミュニケーションは、企業の血流。特に情報が集まる管理職は、その十字路の役割を担っていると言えるでしょう。しかし、なまじ「作れば売れる」という成功体験を持っていたため、受発注の連絡以外はコミュニケーションの大切さを認識していないようでした。
また、部下のマネジメントや育成においても、一方的なコミュニケーション、ともするとトップダウンで指示を出す傾向がありました。これでは、情報の血流が滞ってしまいます。提案型の組織体制を構築するには、管理職一人ひとりが「コミュニケーションの結節点」であるという自覚を持たなければなりません。
今回の研修では、管理職のコミュニケーションにおける役割意識の変革と、コミュニケーションを活用して組織が協働意思を共有できる具体的なマネジメント技術の習得を期待しました。
意識改革という点で効果的だったのは、マネジメントサーベイを実施したことです。
受講者自身が感じていたことと、部下が上司に求めていたこととのギャップ、特に「伝える」と「伝わる」との違いを客観的な評価で体験したこと、また、自分に足りていなかった「弱み」や、自分自身も気付かなかった「強み」を把握できたことは受講者にとって大きな発見になりました。
また、プログラムにあった「ブラインドスクエア」では、コミュニケーションとマネジメントが密接に関連し合って、部下のモチベーションを左右することを体感し、管理職として自分自身を今後どのように変革しないといけないのかの道筋が見えてきたようです。
研修によって「やる気」が沸いてきたという感想がありました。研修というと「弱点を指摘されたので、それを直す」というイメージがあるのですが、それではマイナスからゼロに戻すだけで、後ろ向きな受講になってしまいます。
その点、エデュケーションとエンターテインメントが一体となった体感型の研修は、受講者の参加意識や集中力が最後まで持続できる優れたプログラムでした。
特に、議論やお互いにアドバイスし合うグループワークでは、メンバーの本音を引き出すコーディネーターが付き、「弱み」を克服する後押しや、サーベイで気付いた「強み」の伸ばし方をアドバイスしてくれ、本人たちのモチベーションを高めたようです。
受講者の頭の中に、情報を受発信するアンテナが立ったようです。その彼らがキーパーソンとなり部下との面談や普段のマネジメントの中でコミュニケーションを活性化させているおかげで、組織のあらゆる階層、そして実務の様々なシーンでコミュニケーションの重要性が語られ、企業風土として根付きはじめています。
今までは結果の伝達、例えば営業成績の報告だけで終わった会話が、成果に至る過程や今後の取り組みなどの情報交換も行われており協働意識も高まっているようです。また、以前は建築や防水に関するテクニカルな研修の要望が多かったのですが、コミュニケーションの研修をリクエストする社員も増えてきました。
組織のインフラとしてコミュニケーションが欠かせないことに社員全員が気付いたことで、提案型メーカーへのシフトが加速することを期待しています。