事業内容 | ANAグループの商社部門を担う。航空機部品の調達、航空機の輸出入・リース・売却、機内サービス物品の企画・調達、および全国空港売店の運営などの航空附帯事業のほか、紙・パルプや食品の輸入販売、半導体・電子部品の輸出入、広告代理業、インターネットショッピングサイトの運営など、事業分野は多岐に渡る。 |
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企業規模 |
連結 1,785名 単体 454名(2023年3月31日現在) |
導入サービス |
1日目:マナープログラム 2日目:報連相プログラム 3~5日目:ビジネススタンスプログラム |
コロナ禍での新入社員研修はオンラインで実施せざるを得ず、ビジネスマインドを身に付け体現できる、実践的な内容の実施が難しかった。
コロナ禍の前に比べ、学生から社会人への切り替えがより難しくなっていると感じており、ある程度の「厳しさ」がある研修を実施したかった。
実践的でリアルなプログラムによって、商社パーソンにとって大切な「相手の立場に立って考えること」や「顧客のニーズを捉えること」を身に付けることができた。
研修で、採用時とは別の視点からの性格や考え方、行動特性に触れることができ、配属決定をする際の参考になった。
「自ら考え、判断行動できる人財」になるための「STARの観点」は、新入社員だけでなく、社内でのOJT等でも共通言語となり、浸透した。
「事業および部署の概要」
森山氏:弊社は、ANAグループの総合商社です。そのなかで、人事部の重要なミッションのひとつが人財育成です。弊社では、財産の「財」の字を使って「人財」と表現しており、人財育成を経営課題の根幹に据えています。今回の新入社員研修をはじめとして組織長に向けた「組織長塾」や、各種研修の企画立案・運営は、私たちが担う中心的な役割です。もちろん採用も重要なミッションであり、新卒・キャリアを問わず活躍できるメンバーを積極的に採用しています。
上野氏:社員の採用・育成のほか、労働環境の整備や人事制度設計も私たちの大切な仕事です。人事の仕事のベースにあるのは、社員のみなさんの幸せであり、この会社で存分に力を発揮して、幸せなキャリアを歩んでもらいたいという思いがあります。そのために、会社としてできる限りの環境や制度を整えていきたいと思っています。
「新人育成の課題と研修導入の背景」
森山氏:コロナ禍で2年間、採用をストップしていたため、今年(23年度)の前は20年度が直近の新卒入社になっていました。20年度のメンバーには内製で新入社員研修を実施しましたが、当時はちょうどコロナのピーク時期でしたので研修はすべてオンラインで行いました。期間を通常よりも長くしていろいろと創意工夫を凝らしたものの、やはり現場で教えなければ難しいことについては、やりきれなかった部分もあります。
上野氏:当時はコロナ禍でもあり、やむを得ない状況ではありましたが、20年度のメンバーには現場に出てから大変な思いをさせてしまったのではないかと思っています。研修中もすべてオンラインであったことから空気感が伝わりにくく、厳しい指導というよりは、お互いのコミュニケーションを優先した研修となっていました。
森山氏:その後2年空いて、再び新卒採用をスタートしました。今回、社外の講師のお力も借りながら新入社員研修を行う方針にしたのは、再び対面での研修に戻すとともに、納得度の高まる外部講師の方からある程度の「厳しさ」をもって指導してもらいたいという狙いがあったためです。
また、今年の新入社員は大学時代の大半をオンライン講義で過ごしてきた世代です。社会人になれば当然、対面でのコミュニケーションが不可欠になりますが、その切り替えに不安があったのも事実です。学生から社会人になるためには大きな気持ちの切り替えが必要ですが、切り替えの大きさをコロナ前よりも大きくする必要があるイメージがありました。スムーズに切り替えしてもらうためには、単にビジネスマナーを学ぶだけでなく、ビジネスマインドから身に付けるスタンス研修が必須だと考えました。
「リンクアンドモチベーションを選んだ理由」
森山氏:弊社は、2011年から2019年までリンクアンドモチベーションさんの新入社員研修を導入していました。今回、再び御社を選ばせていただいたのも、過去の研修の評価が高かったからです。御社の研修では、講師が一人ひとりの受講者に対し親身になってご指導されます。その結果、社内でもよく話に出るのが、「講師の方が新入社員にとって最初の上司のようだ」ということです。
人事は採用から長く関わっていることもあり、人事による研修だと、どうしても新入社員のなかに馴れ合いの感情が生まれてしまいます。その点、御社の研修は、厳しさもあるなかで愛のあるご指導をいただけるのが大きな特徴です。さらに、この愛が受講者にちゃんと伝わるのも素晴らしいところです。それゆえ、「厳しくダメ出しされた」という印象だけで終わらず、「自分の成長のために厳しく言ってくれた」という信頼感が生まれ、ポジティブな学びにつながるのだと思います。
上野氏:良い意味で、「研修の枠をはみ出している」のが御社の研修です。一般的な研修の場合、「いかにも研修」と割り切った感覚で受講する人も多いのですが、御社の研修はひと味違います。
前半は受講者もまだ研修感覚ですが、後半に進むにつれて徐々にリアルな距離感になっていき、終盤にはまるで上司・部下のような関係性になっています。また、現場で学ぶのと同レベルのリアルな意識で学びが得られます。現場に入ってから初めて体験するのではなく、新入社員研修で配属前に体得できるのは御社の研修の大きな魅力ではないでしょうか。
「リンクアンドモチベーションの研修に感じる価値」
森山氏:「STARの観点(※)」を学べるのは、御社の研修の大きなメリットです。STARの観点は社会人として絶対に必要な観点であり、新入社員にとって良い指針になるものだと思います。
※「自ら考え、判断行動できる人財」になるための、スタンス強化の4つの観点
ご参考:「STARの観点」について詳細はこちら
今、新入社員はOJT期間に入っていますが、OJTレポートで、STARの観点に則った行動ができているかどうかを振り返っています。今回、全日空商事グループ3社で新入社員研修を受講したので、3社とも同じ基準でモニタリングをしており、当社では本人と先輩社員が行動目標に対しそれぞれ「○」「△」「✕」を付けています。加えて、少なくとも月に1回はOJTレポートをもとに面談をするよう、現場のリーダーに伝えています。
このOJTレポートは人事部にも共有されていますが、新入社員本人が「△」や「✕」を付けていても、先輩から見ると「〇(できている)」というケースも多く見受けられました。研修で厳しく教えていただいたので、新入社員自身、高い基準を持つことができているのでしょう。
上野氏:STARの観点が共通言語にもなり、様々なシーンで「STARの観点で言うと・・・」というような会話も聞かれます。それだけ、しっかりインプットされ、浸透しているのだと思います。
現場に配属されれば、誰でも困難にぶつかって迷うことがあるはずです。そんなとき、「STARの観点で考えると今はこうすべきだ」というように、いつでも基本に立ち返ることができます。STARの観点は、ある意味、新入社員にとって考え方のガイドラインのようになっているのかもしれません。同期はもちろん、人事も先輩社員も知っていて共通言語化されているのは大きいと思います。
森山氏:OJTリーダーは若手が中心ですが、リーダー自身も過去の研修でSTARの観点を習っています。教える側も教わる側もSTARの観点をベースにしてOJTを進められるのは、御社に長くお世話になっているからこそのメリットです。
上野氏:御社の研修では受講者が感情をあらわにする場面もよく見受けられます。それだけ本気で取り組んでいるということだと感じます。本気になっているからこそ、課題に向き合う中でできない自分が悔しかったり、逆にできた時にはとても喜んだりするのだと思います。
御社の講師の方は、受講生を自分の部下として見てくれます。一人ひとりに対して、「成長するためにどこを改善し、どこを伸ばせば良いのか?」を本気で考えて指導されるので、メンバーの本気度も高くなり、喜怒哀楽が生まれるのだと思います。
森山氏:御社には約1週間の期間をお任せしていました。研修期間中は毎日研修後に、私たち人事部との打合せのお時間を取っていただき、「Aさんは、こういうふうに変わってきました」といったフィードバックをいただいていましたが、一人ひとりをすごく細かく見てくださっていることに感心させられました。このフィードバックがあったおかげで、私たちも現状把握がしやすかったです。
上野氏:研修の中で、求人広告を顧客に提案するワークがあるのですが、私たち人事はそれぞれのメンバーが顧客役の講師の方にどんな提案をしているのか確認できない場合があります。ですが、その日のフィードバックのときに、顧客役の講師の方から細かく状況を説明していただくことで「だからBさんは、ああいう様子だったんだ」など、メンバーの行動変容との辻褄が合うんです。
「今日はこういう改善点を伝えました」「明日はこんなところに期待しています」といったフィードバックをいただけるので、翌日はその話を踏まえてメンバーを観察することもできました。研修を見る私たちにとっても、密度の高い時間になったと思っています。
「得られた効果」
森山氏:研修も4日目・5日目になると、入社した時の新入社員とは思えないほど、全員スタンスが大きく変化し、目の色が変わるほど、本気で取り組んでいるのが伝わってきました。
弊社の現場のリーダー層は、どちらかと言うと寄り添うことが得意なタイプの人が多いです。御社の研修では、講師の方や顧客役の方から厳しいことも指摘いただけるので、「このままじゃいけないんだ」ということを強く自覚できたのではないでしょうか。特に、求人広告を提案するワークでは、顧客役から求められる基準と自分たちの提案の基準が異なると、顧客役から取り合ってもらえないメンバーもおり、そこで「自分基準じゃダメなんだ」ということに気付けたこともあったと思います。
現場に出れば、顧客先で厳しい局面に立たされるケースも多々あるでしょう。今回の新入社員研修で、これから商社パーソンとして歩み始める者にとって大切な「相手の立場に立って考えること」や「顧客のニーズを捉えること」を身に付けられたのは非常に大きな収穫でした。
また、当社の経営陣は人財育成への意識が非常に高く、今回の新入社員研修では社長も最終プレゼンに参加しています。私たち人事メンバーも、グループ会社を含めると24名が研修をオブザーブしました。研修を通して、「意外と熱いものを持っているんだな」「こんなふうに周りを巻き込めるんだな」といった発見があります。採用時とは別の視点からの性格や考え方、行動特性に触れることができ、配属決定をする際の参考にもなりました。
上野氏:どの会社も、新入社員が入ると会社が活性化すると思います。この2年間は新卒採用をストップしましたが、やはり新入社員が入ってくることで雰囲気が変わりますし、既存の社員も刺激を受けると思います。新入社員の育成は、新入社員だけでなく、実はその上の先輩も一緒に育っていく機会になっていると感じています。
「新人研修にかける思い」
森山氏:弊社は商社ですから、やはり「人がいちばん大事」だという考え方が根底にあります。そのなかでも、入り口である新入社員研修は非常に大切なものであると認識しています。
上野氏:弊社は、現場から学ぶことに重点を置いており、配属後に階層別で行う研修機会は多くは設けておりません。そのため、社会人として会社共通で必須のスタンスを身に付けるための新入社員研修には、力を入れています。入り口の新入社員研修は極めて重要であり、「この段階でもう、社会人として一人前に育てたい」というくらいの意気込みで新入社員研修に取り組んでいます。
私たちが、新入社員研修に実践的でリアルなプログラムを求めたのも、その後の階層別研修が一部に限定されるからです。配属された後は実際の現場に入って、現場で学んでもらおうというのが基本的な考え方です。御社の研修では、現場に出る前の段階で現場で起こることを体感することができます。だからこそ、配属後の新入社員のスムーズな立ち上がりにつながっているのだと思います。