答えを教えるのではなく自分で気づきを得る研修だからこそ、ずっと心に刻まれる

トレンドマイクロ株式会社

人事総務本部 採用・人材開発グループ 水内 周平 氏
事業内容 コンピュータ及びインターネット用セキュリティ関連製品・サービスの開発・販売

企業規模

7,669名 (2022年12月31日付)

導入サービス

新入社員ビジネススタンス開発研修

セルフモチベーションコントロール研修

課題

  • 学生から社会人へ確実に意識転換を図るとともに、自律的に判断・行動できる新入社員を育てられる研修を求めていた。

  • 長期目線で新入社員を育成し、研修で学んだことの実践・定着を図りたかった。

効果

  • 研修を通して、多くの新卒メンバーにブレイクスルーが起こり、間違ってでも前に進もうという力強さが芽生えてきた。

  • 5月のビジネススタンス研修で納得感のある気付きが得られるので、現場に出てからの実践・成長が促され、12月のフォローアップ研修に自信を持って臨めるようになった。

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人々のデジタルライフを守り、社会のITインフラを守る会社

「事業および部署の概要」

水内氏:弊社は「ウイルスバスター」というセキュリティソフトで認知をいただいておりますが、個人や法人のお客様をサイバー空間の脅威から守るためのセキュリティ関連製品やサービスの開発、販売をおこなっています。次々に登場する脅威やリスクからお客様のデジタルライフを守り、社会のITインフラを守ることを使命とした会社です。

私が所属している人事総務本部の採用・人材開発グループは、その名のとおり、新卒採用やキャリア採用、採用後の人材開発が主な業務になります。そのなかでも私は、新卒入社して1年目から3年目のメンバーに対して継続的に教育研修をおこなっています。

最初の数ヶ月で終わりにせず、1年かけて新人を育てていく

「導入している研修内容」

 水内氏:弊社では、リンクアンドモチベーション社のご支援のもと、「新入社員ビジネススタンス開発研修(以下、ビジネススタンス研修)」と「セルフモチベーションコントロール研修(以下、フォローアップ研修)」という2つの研修を導入しています。

 ビジネススタンス研修は、社会人としての基本的なスタンスを身に付けることを目的とした研修で、弊社の場合は5月に2日間で実施しています。フォローアップ研修は、ビジネススタンス研修で学んだことを振り返るとともに、より高いレベルで定着させるための研修で、12月に1日間で実施しています。

 一般的な新入社員研修は、1ヶ月から2ヶ月くらいかと思います。しかし、我々は人事が担当する研修だけでも3ヶ月あり、7月の配属後も継続的に人事が関わっています。具体的には、配属後の8月と10月に「ミートアップ」という場を設けています。8月のミートアップでは、初心に返るために、新入社員研修で学んだことや「配属後にこうなりたい」と思い描いていたことを再確認しています。10月のミートアップでは、自分のモチベーショングラフをつくったり、職場での取り組みを自己評価してもらったりしています。

この活動を通じて新入社員の継続的な成長を促し、困っているメンバーがいれば個別にフォローしています。最初の数ヶ月で終わりにせず、1年かけて新人育成に取り組んでいくのが我々の考え方です。

 新卒メンバーにとって、人事がいつでも帰ってこられるベースキャンプのような場所であるために、各部署の上司と協力して育成できる体制を整えています。ですから、新入社員研修で学んだ内容は現場の上司にも伝えていますし、研修後に「現場で実践できるようにこのようなサポートをしてください」といったお願いもしています。

「自律的な判断・行動の促進」と「社会人意識の醸成」を目指して

「新人育成の課題と研修導入の背景」

水内氏:我々の新入社員研修ではITスキルやビジネススキルを学び、当社のビジネス・組織・企業文化を正しく理解する取り組みを行っています。さらに人事としての狙いが2つあります。一つが自律的に判断・行動できる人材を育てることで、もう一つが学生から社会人へ意識転換を図ることです。

自律的に判断・行動できる人材を育てることに関しては、我々が人材育成において大切にしている「キャリア自律」という考え方が根底にあります。キャリア自律とは、自分自身でキャリアのオーナーシップを持つということです。誰かにレールを敷いてもらうのではなく、主体的にキャリアを築いていくために自ら継続的に学習し、成長していける人材を育てたいという思いがあります。

そのために、最初の3ヶ月間で自律的に判断・行動できるようになるためのスタンスの習得を徹底したいと思っています。知識やスキルは後からでも習得できますが、土台になるスタンスは最初が大事だと思っていますので、新入社員研修ではスタンスの習得を第一に考えています。

学生から社会人への意識転換は、ただ単に「社会人とはこういうものだ」と教えるだけでなく、配属後にスムーズに立ち上がって業務に取り組める状態にすることが大事だと思っています。ですから、新入社員研修で社会人意識を醸成しきった状態にして、確実に社会人としてのパフォーマンスを発揮できるところまで持っていきたいと考えています。

私が思う社会人と学生の大きな違いは、お客様がいるかどうかです。学生時代は「自分がゼミで活動する」「自分が研究発表をする」というように、多くの場合、主語は一人称です。しかし、社会人になると「お客様のために」「社会のために」という考え方をしなければいけません。これは、頭では分かっていても実際に行動に反映するのは難しいものです。一人称の状態から「誰かのために」という意識で行動できるようにすることが、新入社員研修の肝になると思っています。

「知識やスキルよりもスタンスが大事」という考え方がマッチしていた

「リンクアンドモチベーションを選んだ理由」

水内氏:新入社員の自律を促すためには、何よりもまずスタンスが重要です。「知識やスキルよりもスタンスが大事」というリンクアンドモチベーション社の考え方が、我々が目指すところとマッチしていたのが一番の決め手になりました。

弊社は、新卒の育成に力を入れており、経営陣も「キャリア採用入社者だけでなく、新卒で入ったメンバーからも将来のリーダーや経営者が生まれてほしい」と切に願っています。弊社のビジネス全体を引っ張っていけるリーダーを育てるためには、大前提として、社会人として仕事に取り組む姿勢を身に付けなければいけません。その点でも、リンクアンドモチベーション社のビジネススタンス研修で学ぶ「STARの観点(※)」などは、我々が求めていたものと極めて近いものでした。

※Say(情報発信)、Target(目的立脚)、Action(行動)、Roleplay(相手視点)というビジネスパーソンにとって不可欠な4つの心構え

頭脳と感情を揺さぶられ、良質な気付きを得られる研修

「リンクアンドモチベーションの研修に感じる価値」

水内氏:人材育成に対する考え方に「70:20:10の法則」というものがあります。これは、「人の成長を促すのに効果的なのが、70%の実践と、20%のフィードバックと、10%の講義」という考え方です。我々も非常に共感している考え方なのですが、リンクアンドモチベーション社の研修はまさに「70:20:10の法則」を体現したものだと感じています。

一般的な研修は、講義が70%になりがちですが、リンクアンドモチベーション社の研修は違います。最初のインストラクションで必要なことは教えますが、講義は最低限で、あとは演習で徹底的に実践させる。そして、演習の後にきっちりと時間をとってフィードバックをするのが御社の研修です。

70%の部分に当たる演習は、新入社員が有益な気付きを得られるプログラムになっています。リンクアンドモチベーション社の講師の方は、「こうしてください」「ああしてください」「次はこうしましょう」などと細かく手ほどきすることはありません。「それはOK」「これはダメ」というように○✕を与えることもありません。うまくヒント与えて、考えさせるんです。

たとえば、お客様役の方に提案するという演習では、最初はほとんどのメンバーが「自分はこう調べてきました」「自分はこれが良いと思います」というように主語が自分になっています。「それはあなたの目線であって、お客様の目線ではないですよね」と指摘するのが一般的な研修だと思いますが、リンクアンドモチベーション社の講師の方はその通りには言いません。新入社員に問いかけ、考えさせます。そうすると、最初は新入社員も混乱するのですが、「ひょっとしたらこうなのでは?」「こう考えるべきなのでは?」などとチームで話し合い、徐々にお客様の目線に立てるようになっていきます。

新入社員にとってはまどろっこしいやり方かもしれませんが、最適解にたどり着くために、彼らは頭脳をフル回転させて考えます。ときには、感情を大きく揺さぶられることもあるでしょう。こうして自分の頭脳と感情を揺さぶられるなかで得た気付きは、ずっと心に刻まれるはずです。教えてもらったことより自分で気付いたことのほうが、遥かに納得感が大きいものです。答えを教えるのではなく自分自身で気づく機会を提供するリンクアンドモチベーション社の研修は理想的だと思います。

また、20%の部分に当たるフィードバックも、リンクアンドモチベーション社の研修の大きな価値です。講師の方が一人ひとりに対して細かくフィードバックをしてくれるだけでなく、新入社員同士でおこなう「相互フィードバック」の時間もあります。フィードバックを受けているときのメンバーの表情を見ていると、何かひらめいたときのようにパッと明るくなる瞬間があります。フィードバックタイムは、リンクアンドモチベーション社の研修のクライマックスとも言える時間ではないでしょうか。

演習も然り、フィードバックも然りですが、自らの行動に伴って得た気付きはかけがえのないものです。リンクアンドモチベーション社の研修で学ぶSTARの観点は、たとえば書籍や座学で勉強し、頭で理解することはできるでしょう。ですが、自分で実際にやってみて四苦八苦し、講師の方や同期のメンバーからフィードバックをもらって気づきを得ることで、その重要性に対する腹落ち感がまったく違うはずです。

12月におこなうフォローアップ研修では、あらためてSTARの観点を振り返ったり、STARの観点の応用になる「スイッチ&フォーカス(※)」を学んだりします。それに加え、上司からの手紙を受け取ります。この手紙には、「職場においてどのくらいSTARの観点を発揮できているか」という上司の評価や、上司が期待していること、あるいは日頃の感謝の言葉がしたためられています。手紙をもらう新卒メンバーはみんな嬉しいと思いますし、モチベーションも高まるでしょう。個人的にも、非常に良いコンテンツだと感じています。

※視界、時間軸、リスク、チャンス、ゴールという5つの観点から思考や行動を切り替え、自分自身のモチベーションをコントロールする技術

「間違ってでも前に進まなきゃ」という力強さが芽生えてきた

「研修の成果」

水内氏:研修中、「スイッチが入ったな」という様子は多くのメンバーに見て取れます。タイミングは人それぞれですが、たとえばお客様役の方に提案する演習で、前回は自信なさげに話していたメンバーが、次の提案時には猛然と立ち向かうというような変化が毎年あちこちで見られます。研修全体を通してほとんどのメンバーにスイッチが入り、ブレイクスルーが起こっているのではないでしょうか。

今の若い世代は総じて優秀で、特に、1の状態から10の状態に持っていくのが得意だなと感心させられます。その一方で、何もヒントのない状態から自分で仮説を立てて行動するのは苦手な人が多いなという印象がありました。苦手な理由を考えてみると、優秀だからこそ間違えることを恥ずかしいと感じる意識が強いのかもしれません。このような特徴が見て取れる世代ですが、リンクアンドモチベーション社のビジネススタンス研修は決して簡単ではないので、間違わざるを得ませんし、自分からどんどん前に出て挑戦しなくてはなりません。だからこそ、「間違ってでも前に進まなくては」という力強さが芽生えてきているように感じます。

5月のビジネススタンス研修は入社直後ということもあり、みんな緊張しているのですが、12月のフォローアップ研修は「楽しい」という感想が多く聞かれます。楽しくできている理由は、ビジネススタンス研修を受けた後、各自が成長を実感できているからだと思います。STARの観点を意識して仕事をすることで成長が促され、自信や余裕が生まれているから、楽しくフォローアップ研修に取り組めるのでしょう。

演習のやり方自体もビジネススタンス研修のような厳しさはなく、楽しく学ぼうという仕立てになっています。1年目をハッピーエンドで締めくくるという意味でも、フォローアップ研修は有意義な時間になっていると思います。

現状に満足せず、継続的に研修をブラッシュアップしていきたい

「今後に向けて」

水内氏:リンクアンドモチベーション社は、トレンドマイクロの新入社員育成というプロジェクトにおいて、中心的なプロジェクトメンバーとしてどんどん意見を出してくれます。外部の研修会社さんというより、弊社の新入社員を一緒に育てる「仲間」や「パートナー」のような存在です。

新入社員研修では、非常に質の高いプログラムを提供していただいています。ただ、現状に満足することなく、常に改善を図っていきたいと思っています。我々がいるサイバーセキュリティ業界は刻一刻と状況が変わっていますし、新入社員あるいは学生の傾向も、これからまた変わっていくでしょう。変化していかないと逆にリスクになってしまいますので、リンクアンドモチベーション社に意見をもらいながら変えるべきところは変えて、継続的に研修をブラッシュアップしていければいいなと思っています。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。
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