事業内容 |
鉄鋼、鉄鋼原料、非鉄金属、機械、情報産業、溶材各製品の売買及び輸出入 |
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業種 |
専門商社 |
会社規模 |
1001名〜2000名 |
導入サービス |
・人事ポリシー策定 |
従業員は、過去の慣例にならって物事を考える前例踏襲主義の傾向が強かった。
会社として「このような人材を求めている」という人事ポリシーがなかったので、従業員がそれぞれ違う方向を向いていた。
多様化する従業員に対して、どのように体系立てて研修を設計すればいいのか分からなかった。
人事ポリシー、それを踏まえた育成体系の構築から役割理解研修まで、一気通貫した施策により、それぞれの従業員が目指すべき姿がクリアになった。
研修に対して、やらされ感や受け身の姿勢がなくなり、自ら考え、自ら求めていく姿勢が醸成された。
「事業および部署の概要」
渡部氏:弊社は神戸製鋼系の鉄鋼専門商社として設立されましたが、2021年に75周年を迎えたなかで、鉄鋼だけでなく、非鉄金属、機械・情報などの分野も取り扱う「明日のものづくりをささえる商社」として業容を拡大しようとしております。人事部は、人材採用、人材育成、労務も含めて、人事全般の業務を通じてこの業容拡大を支えるミッションを担っています。
「人事制度改革をおこなった背景」
渡部氏:弊社は、2021年度から中期経営計画が新しいものになっていますが、この中期経営計画を考えるときに、今までの計画の焼き増しではなく、新たな観点で作っていこうという議論をしました。そのとき、人事の我々が意識したのが「第三者目線」です。「神鋼商事って外からどう見えているんだろう?」「神鋼商事って従業員にとってどんな会社なんだろう?」といったことに重点を置いて考えました。
以前から「人づくりが大切だ」「働きやすい環境が大切だ」と言ってはいるものの、弊社独自の仕組みづくりができていないという反省もありました。そこで、第三者からの意見や社内の意見をもらい、「自ら学び、行動する人」を輩出するために新人事制度を策定したという背景があります。
弊社が今掲げている、新長期経営ビジョンは、「明日のものづくりを支え、社会に貢献する商社へ」というものです。これまでは、「神戸製鋼所の中核商社として」というイメージが強く、長期ビジョンについても長く変えずに固定化されたまま、社員もそれが当たり前のことと受け止めていました。
このままでいいのか?と問い直し、2021年度からの中期経営計画においては、新たな観点で「あたりまえ」を見直して、新たな言葉で長期ビジョンを策定しました。従業員に対しても、今までの感覚や物の捉え方を変えていこうというメッセージを込めています。
「抱えていた課題」
渡部氏:素材の世界では、良い素材を扱えることが大きな強みになります。ですから、我々には、神戸製鋼が作ったものを優先的に扱うことができるというアドバンテージがあります。そのことが、ある意味で「甘え」につながっていた部分はあったと思います。
前例踏襲主義が強いのも、甘えの現れなのかもしれません。従業員は、過去の慣例にならって物事を考える傾向がありました。フレッシュマンとして入社しても、慣例に染まってしまうと言うか、いつからか前例を当然のこととして受け入れるようになってしまいます。
井上氏:たとえば、新しい地域に新しい会社を作ろうとなったときも、「それならば、あの人に聞けばいい」というように、知っている方に聞きにいきます。そうなると、自らの経験から新しい知識を蓄えにくく、結果的に成長が阻害されますし、次の世代への引き継ぎもなかなかできません。
村畑氏:従業員に「変わりたい」「やりたい」という気持ちがあっても、本人に知識がなかったり、周囲に挑戦した経験のある先輩がいなかったり、会社としてバックアップする体制も不十分だったのかなと思っています。決してやりたいことができないわけではなく、自由にやらせてもらえる会社ではありますが、全体感として挑戦を後押しする雰囲気は欠けていたと思います。
「サービス導入のきっかけ」
村畑氏:社長の森地が「第二の創業」と位置付けて中期経営計画を発信したことで、会社として向かっていく方向は明確になりました。一方で、従業員が腹落ちするにはどうしたらいいのだろう?という悩みがあったのも事実です。この点が、リンクアンドモチベーションに相談した理由の一つです。
もう一つは、我々も従業員になって欲しい姿から逆算し、理想だと思える研修を作っていたのですが、果たして本当に最適なものになっているのだろうか・・・という不安がありました。やはり、プロの目を入れたほうがいいのではないかという判断から、リンクアンドモチベーションにお声がけさせていただきました。
井上氏:新しい人事制度の策定にあたっては、「自ら学び、行動する人」というのが大きなキーワードになっていましたが、当時は、人材育成制度までなかなか手が回っていませんでした。
また、私は研修も担当していたのですが、研修の目的や受講者に期待することを明確に伝えられていませんでした。「会社として、この階層の人にはこういうことを求めています。ですから、それを鍛えるための研修を実施します」というように、しっかりとした文脈を作ったうえで研修をしなければいけないため、その領域に精通する方に相談したかったんです。
一瀬氏:人事部は前例踏襲的に研修をおこない、受講する側も「言われたから受ける」という形でした。「本当に学びたいことはこれじゃない」と感じていた従業員も少なくなかったと思います。世代の異なる様々な従業員がいるなかで、どのように体系的に研修を設計すればいいのかと悩んでおり、なかなか前に進めない状況が続いていました。そのような状況を見て、私もプロに手を入れてもらったほうがいいと判断し、リンクアンドモチベーションに人材育成体系の設計と研修をお願いすることにしました。
「取り組みとその成果」
村畑氏:リンクアンドモチベーションには、人事ポリシーの策定も含めた人材育成体系の設計に加え、各種研修のご支援をいただいています。全ての施策の元となる人事ポリシーや体系設計から、実際に従業員に浸透させるための研修までお願いできるのはとてもありがたいです。これまでに策定していた新人事制度も踏まえて、人事ポリシーから施策まで一気通貫で設計していただけたので、より効果のあるものにできたと思います。
井上氏:今までは、配属された部署や上司の方針によって、従業員の考え方がバラバラだったと思います。会社として「こういう人材を求めている」という人事ポリシーがなかったので、従業員がそれぞれ違う方向を向いている感じでした。ですが、リンクアンドモチベーションの力を借りて一緒に人事ポリシーを策定したことで、「こういう人を目指そう」という前段を明確に示すことができました。
渡部氏:弊社に人事ポリシーがなかったのは、ある意味、「阿吽の呼吸」でうまくいっていたからだと思います。しかし、今はキャリア採用の人材や外国籍の人材など多様な価値観の人材が入ってきて、しかもコロナ禍ということもあり、阿吽の呼吸だけではうまくいかないところが出てきました。今回、新しい人事制度に紐づけた人事ポリシーを策定することで、うまく「見える化」できましたし、同時に研修をおこなうことで、従業員にきちんと落とし込むことができたと思っています。
私の立場からすると、すごく良い人事ポリシーを作っていただいたと思っており、統合報告書にも載せています。業績のように数字だけ見て評価できることではありませんし、実際に投資家の方とのコミュニケーションにおいても人材活用や人材育成はよく聞かれるテーマです。昨今の人的資本経営の流れもあり、投資家の方からも事業と組織の接続が求められているのを肌で感じています。だからこそ、従業員だけでなく投資家にも人事ポリシーを開示して取り組みを知ってもらう必要があると考えているんです。
せっかく良い人事ポリシーを作ったのだから、もっとアピールして、もっと見てもらって、良い評価をもらえたらなと思っています。
(出所)神鋼商事株式会社「統合報告書 2022」
村畑氏:研修に関しては、階層別におこなう「役割理解研修」に加え、役割の実践度を測る「フォロー研修」を導入しています。役割理解研修では、やりたいこと(WILL)、やれること(CAN)、やるべきこと(MUST)の3つの輪を重ね合わせることで、従業員が自らの目指す姿やキャリアをデザインしていきます。
リンクアンドモチベーションからは、従業員の考え方や受け取り方など貴重なアドバイスをいただき、一緒に研修を作りあげてきました。この1年、実際に研修をおこなってきましたが、今までありがちだったやらされ感や受け身の姿勢がなくなり、自ら考え、自ら求めていく姿勢が醸成されてきたなと感じています。
研修と言うと「スキルアップ」というイメージが強いですが、リンクアンドモチベーションのコンサルタントの方からは、磨くべきなのはスタンスコミュニケーションだと言われています。研修で学んだことが浸透し、スタンスが変わるまでには時間がかかると思いますが、そこまで一緒に取り組んでいきたいなと思っています。
井上氏:研修を始めるにあたっては、「我々は今後、こういうことをやっていきます。そのなかで、みなさんにはこういう役割を果たしてもらいたいと思っています」という説明をしています。これを明確に示すことで、普段はなかなか意識できないことも意識できるようになってきたなと感じています。
村畑氏:研修を受けた従業員からは、組織が目指す姿や、会社がどんな人を求めているのかがクリアになったという感想も聞かれます。また、人事ポリシーと人事評価のひも付けができたので、そのあたりも従業員の納得感につながっているのかなと思っています。幹から作り始めて、枝や葉までつなげることができたのは非常に良かったですね。
一瀬氏:私は、受講者として研修に参加させていただきました。ライン長をやっていると、どうしても日々の仕事に追われがちで自分を振り返る機会がありませんでしたが、研修に参加することで「自分の役割って何だろう?」とあらためて考える良いきっかけになりました。
今までは、部長になったら部長研修に出て、「部長はこういう人だ」ということをモヤっと学んで終わりでした。ですが、今やっているように継続して研修の機会があると、そのぶん身に沁みていくと言うか、機会が増えることで間違いなく「変わるチャンス」も増えていると思います。
「今後に向けて」
渡部氏:経営陣の意識改革も重要だと考えていますので、今後は経営陣向けの研修も充実させていきたいと思っています。今は、経営陣同士が意見交換する機会も少ないので、たとえば会社のポリシーやKPIについてどう思っているのか?といったことを話し合う座談会のような機会があってもいいのかなと思っています。経営陣が、自分の考えや行動を棚卸しする機会を設けていけたらいいですね。
従業員に関しては、やはり「気概を持って挑戦する」「気概を持ってリスクに立ち向かう」といったスタンスを重点に置いた研修を進めていきたいと考えています。スキルだけではなく、気持ちの持ち方や仕事への向き合い方ですね。もっとチャレンジする気持ちや挑戦力を高められるように仕向けていきたいと思います。
一瀬氏:前例踏襲主義という話がありましたが、前と同じようにやるのは誰でも楽ですよね。ですが、それをしているとみんな思考停止に陥ってしまいます。「自ら学び、行動する人」と掲げているように、前例にとらわれず、より良い方法を考え続け、自ら動ける従業員に育ってほしいので、そこに向かっていろんな施策を打っていきたいと思います。
井上氏:日々忙しく仕事をしていると、目的を意識できなくなってしまうこともあると思います。だからこそ、研修を通して目的を認識することはとても大事です。
研修って、受ける前は「嫌だなあ」という人も多いかもしれませんが、受けてみると様々な発見があるものです。このような研修を通して学んだことを実務で活かし、それが定着していくような取り組みをしていきたいと思います。
もちろん、1回の研修で変わることはありませんので、継続していくことが大切です。繰り返すことで徐々に浸透し、スタンスが変わっていくのだと思います。その過程で、従業員がワクワクするようなことを見つけたり、「そもそも神鋼商事に入ったのは、こういうことがしたかったからだ」と再認識したり、「そのために、今の自分には何が足りないんだろう」と考えたりしてほしいですね。
一瀬氏:ちょっと背中を押してあげれば、グンと前に進めると思うんですよね。この「ちょっと押す」というのが、我々に不足していたところだと思います。自信がなくて一歩を踏み出せない従業員もいるはずなので、自信の源になるようなスキルやスタンスを習得できて、背中をポンと押してあげられるような研修を作っていけたらいいですね。