「入社後3年間で一人前の人財に育てる」という方針を掲げ、 若手育成に力を注いでいるコクヨ株式会社。
若手育成を充実させるが故に見えてきた課題とは何だったのか。 その課題をどのように解決し、その後、どのような変化が見られたのか。 コクヨ株式会社 人財開発部リーダーの河南氏にお話しいただきました。
2005年にコクヨが分社化し、入社3年間はコクヨの社員としてコクヨに籍があり、4年目から転籍する形態になりました。これを機に、それまで現場配属後はほぼ面倒を見てこなかったと言える若手社員の育成についても、「コクヨに籍がある3年間で一人前の人財に育てる」という方針に変更しました。
「3年間」にこだわる背景には、人を大切にするという会社の理念・風土が根底にあります。また、黒田社長と人財開発部の「最初の教育がとても大事である」という想いも強く、「3年目まで」に注力しています。
人財開発部としては「コクヨを人財輩出企業にしたい」「採用した以上は責任がある。彼らがコクヨで働き続けなくても『この会社にいたからこそ力がついた』と言ってもらえる状態にしたい。 もちろん“コクヨの社員として”というのもあるが、最初にしっかり教育して社会人としての基礎を身につけさせたい」という想いもあります。
当社の若手育成方針には、
1.早期戦力化
2.本気の育成
3.タイムリーなプログラム
という3つのポイントがあります。
1.早期戦力化
・「”一人前”を定義」 ⇒「3年が終わるときにはこういう人になってほしい」という想いから、2.本気の育成
・「マンツーマンモニタリング」の実施3.タイムリーなプログラム
・「年次別テーマ」を設定
⇒新入社員…社会人としての基礎を身につけてもらうために、きめ細やかにフォロー。
2年次社員…チューターからの自立を目指す時期として、自分の頭で考える機会を提供。
3年次社員…「転籍」という“一人前”になる節目が近づくので、その先のキャリアを考える機会を提供。
以上のように年次別に大きなテーマをつくり、大方針は変えないまま、その年の社員のカラーに合わせて細かいフォローの仕方を変えたり、プログラムを入れ替えるなどの試行錯誤を繰り返して現在に至ります。
なお、当初「研修はすべて内製にする」という意見もありましたが、「内製にするより効果が高いと判断できる場合は外部の研修を導入する」というスタイルになりました。
最近の学生は自分の成長やスキルアップにはとても関心が高く、採用イベントなどで「3年で一人前に育てます」「こんな育成体系があります」と説明すると、とても興味を持ってくれます。
しかし一方で、私が育成担当として2007年、2008年と見ていたときに、「3年で育ててもらえる」と思って入社してきている人が多く、葛藤や苦労も感じました。
例えば「チューターが面倒見てくれず放置されている」など「○○してくれない」という声がとても多く、いくらきちんと育てる仕組みがあっても、社員に「自分で育つ」という心構えや「自ら何かをしていこう」という意識がないと意味がないと思うようになりました。
ちょうど2009年の研修の企画をする際、入社後1ヶ月間の導入研修の内容を変えようという話になり、テーマを「自分で育つ心構え」と設定しました。
新入社員が各現場に配属されたあとにいろいろな壁にぶつかる機会は多く、そういった場面を導入研修に盛り込んで自分で壁を越える経験をして、「自分で乗り越えるんだ」という気持ちを持たせてから各現場に配属したい、と思ったのが大きなきっかけです。
そこで「どんな壁があるか」「何をさせたいか」を考えているときに、リンクアンドモチベーションさん(以下LM)から新入社員研修をご提案いただきました。 研修の映像を拝見し、「このプログラムでなら『自ら高い壁を乗り越えることの大切さ』を伝えられるのではないか」と感じることができたんです。
また、当時のLMの担当の方の本気を感じ「お任せして大丈夫」という安心感があったので、LMの新入社員研修(以下、ビジネススタンスプログラム)の導入を決定しました。 研修実施前の不安は全くなく、「この2日間で参加者がどのように変わり、どんな効果が生まれるのだろう」と楽しみでしたね。
「クリエイトモチベーションに求人広告を提案せよ!」と、「アドバイススクランブル」が印象に残っています。
クリエイトモチベーションに求人広告を提案せよ!
実際の仕事のシーンに近く、また、参加者が高い基準を求められたときに「自分たちは全然できない」と痛感できるところが大きな魅力です。 コクヨの求人広告を考える社内コンペという設定にしたほうがいいという意見も当社の中ではありましたが、実際にやってみてクリエイトモチベーションの求人広告の提案にしてよかったと思います。
お客様のことを考える経験は彼らにとって必要ですし、クリエイトモチベーションは設立10年くらいの会社でいろいろな想いがあって…とあれだけ必死に考えると、自社の場合は100年の歴史があり、そこにはもっといろいろな想いがあるので結果的に自分の会社のこともよく考えるきっかけになります。
「(営業として)提案する」ということについては、実際に営業する社員にとってはそのまま役立つ経験ですし、例えばオフィス空間の設計をするような社員だと「営業の人がこれだけ苦労して取ってきてくれたからこそ自分に仕事がくるんだ」と実感できます。
違う立場を経験することに意味があるので違和感はありませんでした。参加者が「怖い」と感じやすいエクササイズだとは思いますが、当社の参加者を見ていても、怖くて何もできないような状態にまではなりません。 変にプレッシャーをかけるのではなく、あくまで「理由のある怖さ」という印象です。また配属を考える上で、それぞれの社員のストレス耐性や物事を深く考える力・コミュニケーション力など、個々人の特性を見るのに使わせていただいています。
アドバイススクランブル
最後に参加者同士でアドバイスし合うところもとてもいいですね。
当社の新入社員は比較的高学歴でさまざまな会社を受けており、「自分はできる」と思って入社してくることが多いのですが、アドバイススクランブルでは自分の強みも弱みも同期メンバーから厳しくフィードバックしてもらうので今の自分を正確に把握できますし、それによって同期同士の絆・信頼感も増しています。
1ヶ月間の導入研修終了後の「何が一番学びになったか」というアンケートでは、大半の社員から「ビジネススタンスプログラムが一番学びになった」「ギアが変わった」という声が出るので、1つの大きなポイントになっている研修だと感じます。
導入研修後はどうしても普段の業務のほうがインパクトが大きく、ビジネススタンスプログラムで学んだことは薄れていきがちです。
ただ、過去3年間、継続して実施しているので、同期だけでなく先輩とも共通言語ができており、「このままじゃまずい」「研修のときの気持ちに立ち返って頑張ろう」といった、自らを奮い立たせる会話もよく聞かれます。
当社では最初にある程度のビジネスマナーや会社の基礎知識を学んだあと、すぐのタイミングでビジネススタンスプログラムを実施しており、ベストタイミングだと実感しています。
参加者がビジネススタンスプログラムで「自ら育つ心構え」を身につけた2日間を機に、その後の研修や仕事で「自ら何かを学び取ろう」と積極的な姿勢で臨むようになるからです。
4月に新入社員に知識を充足させる企業も多いですが、知識はあとからでも得ることはできます。 もちろん考え方にもよりますが、いかに早い段階で「自ら育つ心構え」を身につけさせられるかが重要ではないでしょうか。
何か仕事を任されたときにも、その心構えが身についている社員と「教えてもらう」と思っている社員とでは仕事の吸収率が全く違うので、新入社員を受け入れる企業は普遍的に入社初期に「心構え」を身につけさせたほうがいいと思います。
今までお会いしたLMの方全員に共通して本気を感じ、「モチベーション」を社名にしている会社だけあると感じますね。
また、LMの研修プログラムの組み立てや講師の質は素晴らしいと思います。特に講師の質の高さはLMの一番の強みではないでしょうか。
さらに、どんな講師を紹介してくれるかは担当営業の方次第だと思いますがLMは私たちが持っている課題に合う講師を紹介してくれます。
導入前は内製化も考えましたが、同じレベルの講師を社内で揃えようとするとかなり難しいので、それだけの費用を払ってお願いする価値のある研修だと思うことができました。
ほかの会社さんからも新入社員研修の提案を受け比較もしましたが、今でもずっとLMにお願いしています。LMが納品してくださったものに私たちが満足していても、LMは「まだこういう問題点がある」「講師はもっとこうしたほうがいい」などの意見を言ってくれます。
そういったことは言わない会社さんのほうが多い中、本当に当社にとっていいものを提供しよう、よりよい研修をしようと思ってくれるからこそ敢えてこういうお話が出てくるのだろうと思うので、より信頼することができます。