「創造(革新)・挑戦・変化 お客様の満足・共感 会社と個人の成長」 という価値観・行動指針を掲げる株式会社ジェイアイエヌ。
「私たち一人ひとりが、仕事を通じて人間力を高め、 それぞれがジェイアイエヌの主役として活躍できる組織にしたい」 「会社の成長はスタッフ一人ひとりの成長と密接にかかわっている。 スタッフの成長なくして会社の成長はありえない」
このような考えの中で、新入社員を育成するにあたり持ったこだわりとは何だったのか。 そして、そのこだわりからどのような成果が得られたのか。 株式会社ジェイアイエヌ 管理本部 人事グループ サブマネジャーの東村氏にお話しいただきました。
2010年まで実施していた新入社員研修は、ビジネスとはかけ離れたシチュエーションでの かなり厳しい特訓のようなものでした。
「それがお前の本気か!」と頭ごなしに怒鳴りつけるような研修で、 参加者が頑張っているかいないかの基準が声の大きさだったりするので、 要領のいい参加者ならうまく切り抜けられてしまうような仕組みだったのです。
よって、その場では怒ったり泣いたりする参加者も多いのですが、 研修が終わると案外けろっとしていて、何か気づき得られているとは思えませんでした。 「社会人としてのスイッチを入れる」という目的から考えると研修効果としては 物足りなさや疑問を覚え、翌年の新入社員研修は違うやり方にしたいと思うようになりました。
2011年の新入社員研修について決める際は、 まずはやはり「社外の研修を導入する」ということにこだわりました。 当社の社員が講師として研修を実施するとなると、 研修後も面倒を見ていくスタッフたちなので、 どうしても本気で厳しく指導できない部分があります。
一方社外の講師なら、その後の関係がないからこそ逆に厳しく指導してもらえるのではないかと思ったからです。 また、「研修でどれだけビジネスの擬似体験をさせられるか」ということにもこだわりました。 リンクアンドモチベーションさん(以下LM)の新入社員研修なら、参加者が本気になって 実際のビジネスに近いシチュエーションをリアルに体験できると感じたので、導入することに決定しました。
LMの新入社員研修を導入することは決定したものの、当初、「STAR」の観点ではなく、 プログラムの内容を一部変更して当社の行動指針を理解させる研修にしようという議論もありました。
しかし、新入社員が研修を終えて各店舗での業務を始めると、 彼らよりも眼鏡の知識があり、会社の理念や行動指針についても 詳しく理解しているような経験の長いアルバイトがたくさんいます。
かつ、アルバイトの人たちにしてみれば 「社員というのはそれなりに仕事ができて当然」と思っています。 そのような状況で、「では新入社員は何を武器にアルバイトの人たちをマネジメントできるのか」と考えたときに、 「STARの観点=普遍的なビジネススタンス」はおそらくアルバイトにはない部分なので、 そこで違いを出せるのではないかと考えました。
当社の店舗ではもともとお客様に提供する付加価値として 「スマイル」「SHOW」「スピード」「チームワーク」という4つのキーワードを考えていたのですが、 それらは「STAR」と連動しているところがあるので違和感なく受け入れることができました。
例えば、普通の眼鏡屋さんでは1人の店員が受付から測定まで全ての工程を担当することが多い中、 当社の店舗ではホール・受付・測定・お会計・お渡し、と別々の担当がつくため、チームワークが必要となります。 そこでは次の担当者にどれだけそのお客様についての情報発信(=「Say」)ができるかが重要です。
また、そもそも当社はお客様満足のためにビジネスをしているので「Target」を意識することは当然ですし、 目の前にお客様がいらっしゃったら「どう接客しようか」と考えているのではなく、 「スピーディにお客様のところへ行く」「行けば答えはそこにある」と伝えているので「Action」の観点が当てはまります。
さらにお客様目線でニーズをキャッチしたり、チームワークを円滑に進めていくためには 「Role Play」を意識すべき……といったように、私たちがもともと掲げていたお客様に提供する付加価値のキーワードは、 LMの新入社員研修に出てくる「STAR」という言葉でよりきれいにまとめることができるので、 その言葉を使いながら私たちがやりたいことを伝えられるいい機会になりました。
「怪獣型ロボットベロゴンを製作せよ!」と 「クリエイトモチベーションに求人広告を提案せよ!」が印象に残っています。
<怪獣型ロボットベロゴンを製作せよ!> 一般的に新人レベルであればそれほど深く考えてやるような仕事はあまりなくて、 取りかかってしまえばすぐに答えが出せる仕事ばかりだと思います。 当社の新入社員はそれなりに頭の回転が速いのですが、良くも悪くも理屈で考えがちなところもあります。
しかし、ビジネスでは理屈で考えてばかりいないで、まずはとにかくやってみることが大切。
ですからベロゴン製作エクササイズにおいて、初動の早さと修正行動が いかに速くベロゴンを完成させられるかどうかを左右し、 ある程度の完成図が描けたら行動したほうが結果的に速いこと、 つまり「走りながら考え、考えながら走ることが重要」というメッセージはかなりポイントになったと思います。
実際、このエクササイズにおいての気づきや学びが多かったスタッフと少なかったスタッフとでは、 その後、業務に取りかかるスピードにも差が出ていますね。
<クリエイトモチベーションに求人広告を提案せよ!> 当たり前ではあるのですが、自らが変えるべき箇所に気づけてこそ人は変わることができます。 いくら気づきのチャンスを与えてもらっても、そのチャンスに気づけない人は変わることができません。
その点、求人広告提案エクササイズでは、クリエイトモチベーションの社員役の方や 同じチームのメンバーとのコミュニケーションを通して、ほとんどの参加者が自らの変えるべき箇所に気づけるような仕組みになっていましたね。
自分たちがなぜ受注できなかったのか納得いかないチームもあったようですが、 実際のビジネスにおいてはお客様が基準で評価軸はばらばらになり、より一層納得いかないことばかりになります。
このエクササイズでは、「ビジネスに正解はなく、自分たちがどれだけ本気でお客様のことを考え 最善を尽くしお客様に満足してもらえるかどうか、それが全てである 」というメッセージも強く打ち出してもらったので、そういった面でも参加者がよりビジネスに近い体験ができたと思います。
毎年4月に、新入社員には店舗での業務で気づいたことをレポートで提出させています。 昨年は「現場の人たちが温かく迎え入れてくれてよかった」とか 「お客様に『ありがとう』と言われる毎日が楽しいです」といった内容が多かったのに対し、 今年は「自分が全く戦力にならないことを実感した」といった内容が多くありました。
今年のLMの新入社員研修で「ビジネスはその場その場の応用力で勝負がつく」と 口を酸っぱくして言ってもらい、彼らにもそういう意識がちゃんと根づいたからこそ、 自分たちがなかなか現場で通用しないことを実感したのだと思います。
彼らは新入社員研修のときも十分厳しいと感じていましたが、今振り返ってみると、 店舗での業務のほうがずっと厳しいと感じているようです。 いきなり店舗業務での厳しさを目の当たりにするのではなく、 新入社員研修というワンクッションがあったからこそ、現場での厳しさにポジティブに向き合っていけるのでしょう。
「自分たちが早く戦力にならなくては」という意識がとても強く、 本気で1年以内に店長になることを目指して頑張っているスタッフもいますし、 実際、早ければ9月くらいに副店長になれそうなスタッフも出てきています。 早いタイミングでビジネスの厳しさ・ビジネスでかかるストレスを研修で体験させたというのは、 彼らにとってかなり効果がありましたね。
昨今、「モノが売れない時代」と言われていますが、ありがたいことに当社のエアフレームは2年で約150万本売れています。 では、「売れる」「売れない」の違いはどこにあるのかと考えると、 「売る側の古い常識が通用しない時代」だということを認識できているかどうかだと感じます。
お客様のニーズはかなり多様化していて情報スピードも速く、お客様のために私たちはどんどん変化し、 新しいものを創造することに挑戦していかないといけません。
よって、今後は「自ら動いて挑戦していける人」、例えば「ベロゴン製作エクササイズ」をやったときに 「まず行動しようよ」と言えるくらいのスタッフを意識して採用していきたいですね。
決して「考えずにやる」ということではなく、少なくとも多少考えながら走る、というのが 当社のやり方なので、それができるスタッフに入社してほしいと思っています。
いい意味ですごくお節介な会社ですね(笑)。 いろいろな場面で「よくそこまで気づいてくれるな」と思います。
昔いた近所のおじいちゃんみたいな存在で、よく指導してくれてうるさかったりもするのですが、 大人になってみると「あのおじいちゃんの言っていたことは間違いなかったな」と思えます。
実際、今年の新入社員研修も、終わってみると予想していた以上の成果が出ました。 LMの温度感は当社と似ているので仕事がしやすいです。
また、当社より先のステージを行っているイメージで、当社も1,000人を超えたスタッフのモチベーションを上げる仕掛けをつくっていかなくてはいけない中で勉強させられることもとても多いです。
私たちは自分たちだけでは走っていけないので、 LMにはかなり支えてもらっています。 正直まだ関係構築中な部分もあるのでお互いぶつかり合いつつというところはあると思いますが、 お互いの存在が欠かせないような状態になっていけたらいいですね。