リアルなビジネスの厳しさで
新入社員のスタンスを変える。

日産自動車株式会社

当たり前のコミュニケーションがとれない。 自ら考え、行動することができない。 学生気分から抜けられない。

多くの人事担当者を悩ませる新入社員の課題にいかなる方法をもって対応すべきか――。 ビジネススタンスへの切り替えを目指した日産自動車の新たな研修とはどのようなものか。

人財開発グループのお二人にお話を伺いました。

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新入社員たちの学生気分を切り替えたい

―貴社の新入社員研修を見直すにあたって、どのような課題があったのでしょうか。

荒川:とにかく、学生気分が抜けていない新入社員が多い。そのことに尽きると思います。 現場で指導を行う所属長やOJTリーダーから、「報告・連絡・相談がきちんとできない」 「自立していない」「与えられたこと以上のことをしようとしない」といった声が頻繁に上がってきていました。 責任感をもって自分の仕事に前向きに取り組む姿勢が欠けていると言えそうです。

河合:顕著に見られるのは“ものごとの本質を見ない” こと。 これは、若い人に共通した課題だと思いますが、結果として自発的な思考・行動が欠けている気がします。 自分でものを考えないから、行動できない、となる。 これは日産だけに見られることではないと思いますが…。

―以前はどのような研修をなさっていたのでしょうか。

荒川:日産について知る研修と、ビジネスマナーに関する研修を行っていましたが、 新入社員の仕事に対する意識や、行動に働きかけるような要素が不足していると認識していました。 学生から社会人への切り替えを図るために、どういう手が打てるのか。 我々だけでは答えを見出せずにいました。

河合:日産の人財育成における喫緊の課題として、「グローバルに動ける人財」を育成することが挙げられます。 ここで言う「グローバルに動ける人財」とは、語学力を前提に、自ら考え、自ら動く姿勢を持ち、 確かなコミュニケーションがとれる人財を指します。

研修においても、そうした部分にこだわっていきたいと考えていました。 そんな中で、ビジネスの厳しさに触れ、社会人としてのスタンスを醸成し、 仕事への姿勢をつくる研修を行いたいと考えたのです。

ただのゲームでビジネススタンスは醸成されない

―数多くの提案から、リンクアンドモチベーションの研修を採用した決め手は何だったのでしょうか。

荒川:私たちは、リアルなビジネスシーンに近いシミュレーションを探していました。 そのノウハウをしっかりと持っていたのがリンクアンドモチベーションだったからです。 研修として行うからには、ただの楽しいゲームでは終わりたくなかった。 厳格で緊張感の高いロールプレイングを求めていたのです。

河合:何度かゲーム性の高い研修を行ったこともありましたが、どうしても遊び感覚が抜けきらないのです。 結果として「面白かったね」だけで終わってしまう。 ですから、リアルにビジネスを体感できる今回のプログラムは非常に魅力的でした。

荒川:他の研修会社からも提案を受けましたが、現実のビジネスシーンとは大きく乖離している印象を受けました。 それでは我々が伝えたいメッセージは伝わらないと考えました。 スタンスを醸成するなら、現実のシーンを想定しなくては何の意味もありません。

河合:提案時に、研修のメインプログラムとなるビジネスシミュレーションの一場面を動画で見せてもらったのですが、 私たちが求めている“厳しさ”と合致するな、と感じました。

そのアプローチ方法にどういった技術背景があるのかについても丁寧に説明していただけたので、 「この研修は上手くいく」と確信できました。

現場との接続を念頭に置いたカスタマイズを

―準備段階での印象をお聞かせください。

荒川:リンクアンドモチベーションが、ここ数年の新入社員の傾向を踏まえ、 導き出された求められる基本姿勢「STAR」の観点と、 弊社社員の行動指針である「NISSAN WAY」を結び付けることは苦心した点です。

そこを一緒に考えてもらって、研修プログラムの最終日に振り返る時間を設けました。 具体的には、ここまで学んできた「STAR」の観点を「NISSAN WAY」に変換してみると どのキーワードに当てはまるのか、というアレンジをしてもらいました。

河合: 現場との接続が、どの研修でも課題になります。 研修で学んだことを職場でいかに活用していくか、体現していくかが重要です。 じっくり振り返る、そして現場との接続に活かしていけるようにする、という構成はすごくよかったと思います。 事前準備や当日の進行もスムーズでしたね。

短期間での準備にもかかわらず、ひとつずつ丁寧に中身を詰めながら、 スピーディーに準備をしていただけたので、とても満足しています。 研修当日も200人以上の新入社員を2クラスに分け、同時開催することとなりましたが、 しっかりした対応で、円滑に進めていただけたと感謝しています。

新入社員をシフトチェンジするアプローチとは

―新入社員研修で印象に残った場面を教えてください。

荒川:本来は見守ってサポートする役割の講師の方が喝を入れる場面はとくに印象的でした。 新入社員が真剣に取り組んでいないと、すぐに察してイレギュラーな対応を判断してくれました。 しかも、やる気のない特定のグループに対して喝を入れるのではなく、 「そうしたグループを放置している、またグループの中でもそういう人間を許してしまっている周囲にも責任がある」と指摘していただけた。

当事者だけではなく、周りにも気づきを与えてくれたことがよかったです。 ストレートに感情を出して、包み隠さず伝えてくれたので、 新入社員たちが「負けずに頑張ろう」と声をかけ合い、立ち上がっていく様を目の当たりにしました。

河合:私が立ち会ったクラスの講師は、新入社員に、アニキ的に接してくれていたのが印象的でした。 研修の節目ごとに小ネタを挟みながら、「仕事への姿勢は、こうあるべき」といった根本的なことを、ご 自身が経験した具体的な事例を踏まえて説明していただきました。 新入社員ってどうしても具体的事例がなければ、納得しないところがありますからね。

荒川:シミュレーションのクライアント役については、新入社員に近い年齢の方を揃えてもらったことがよかったですね。

新入社員に近い目線で、今取り組むべき課題を提示してもらえたと思います。 「それは、新入社員の立場としてはどうか?」といった基本的なスタンスから問いかけ、 学生から社会人への意識を変えるきっかけをつくっていただけました。 新人にとっては、心に響く指導だったと思います。

本気にさせるプログラムで意識を変える

―研修に参加した新入社員にどのような変化がありましたか。

荒川:厳しく喝を入れられたことに対して、応えていこうとする姿勢が見られました。 様子見をしていたグループも、どう動いていったらいいか、自分たちで気づき、 誰かがリーダーになり、徐々にエンジンがかかってくる様子がわかりました。

与えられた情報で何とかしようという姿勢からどうやったらクライアントに もっと話をしてもらえるかといった議論に変わっていきました。 自ら考え、動くようになったな、と明確に感じとることができました。

河合:研修を進めて行くうちに本気度が増していったし、議論も活発になっていきました。 ホワイトボードを使って、いろいろな話を整理しながら結論を出していくといったように、 仕事の進め方にも変化が見られました。

―研修が終了して3か月余りですが、その後の効果は見られたのでしょうか。

河合:終わった後の反響でここまでインパクトのあった研修は初めてでした。 アンケートなどを見ても「極めて印象深いプログラムでした」と。 もちろん、厳しさも含めてですけど(笑)。

我々が課題としていた部分に深く刺さってくれたと満足しています。 また、今回はこのスタンス研修の後に、ビジネスマナー研修を行ったのですが、 ここで学んだことが、ビジネスマナー研修であらためて「こういうことか」と 気づくことができたと話す新入社員もいました。 そういう意味でも非常に大きな効果が得られたと思います。

知識から姿勢まで総合的に支える新たな研修のかたち

―最後に今回の新入社員研修を総括していただけますか。

荒川:新入社員にとって自分の姿勢について問われる貴重な機会だったと思います。 現場で“仕事の質”を問われることは多いですが、姿勢まで問うことのできる上司はなかなか少ないですからね。

河合:これまで弊社が行っていた新入社員研修は「日産を知ろう講座」という名前の、 日産自動車とはという知識ベースの研修とビジネスマナー研修の二本立てで行っていました。

その中で今回は学生から社会人へのスタンスを変えるという初めての試みに取り組みました。 日産について知る。ビジネスマナーも学ぶ。 そして仕事への姿勢まで含めた総合的なプログラムで新入社員のこれからを支えていく。 おかげさまで、新しい日産の研修体系をつくり上げることができました。

リンクアンドモチベーションは若々しさが大きな魅力です。 今後も老舗が提案するような研修ではなく、大胆な発想のプランを期待しています。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。
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