マインドフルネスとは?ビジネスで注目される理由や効果について解説
最近、「マインドフルネス」という言葉をよく耳にしませんか?マインドフルネスは、「今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに知覚し、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方、存在の在り様」と定義されています。
マインドフルネスは適切に理解し日常生活で実践することで、心身の健康の維持にもつながり、自分で健康を管理する(セルフメディケーション)にも寄与します。
またマインドフルネスはビジネスフィールドにおいても、職場のメンタルヘルスケアにおけるストレス軽減や、集中力UPにも非常に役立つため、生産性向上のために取り組む企業が増えている、今注目されているキーワードです。
▼【リンクアンドモチベーションのサービス特徴】が分かる資料はこちら
目次[非表示]
マインドフルネスとは?意味は?
マインドフルネスとは、今という瞬間に常に注意を向け、自分が感じている感覚や感情、思考を冷静に観察している心の状態のこと。つまり、「今、ここ」に100%心を向ける在り方のことです。元々はパーリ語の「サティ」という言葉の英訳で、日本語では「気づき」、漢語では「念」と訳されています。「自覚」「集中」「覚醒」とも言い替えられます。
マインドフルネスを具体的に理解するために、「マインドフルネスではない状態」=「マインドレスネス」な状態を考えてみましょう。マインドレスネスな状態は、注意が散漫な状態、無意識の状態のことを言います。ぼんやりしていて、集中力がない状態もあてはまります。
たとえば、心配してもしかたがないことを心配しすぎたり、終わって変えられない過去のことを延々と考えてしまったりして「今ここ」に意識を集中できていないこと、またそのことに自覚的でないことを言います。
マインドフルネスの瞑想を行うことで、今この瞬間、自分の内側に怒っていることに100%注意を集中させて観察するための、脳や心のトレーニングを行うことができます。マインドフルネス迷走を行うことで雑念が消え、集中力を高めたり、不安やストレスを解消して心身のコンディションを整える効果も期待できると言われています。
このような効果のあるマインドフルネスの瞑想はビジネスシーンでも多用されるようになっており、組織開発や人材育成の現場で注目されています。マインドフルネスの実践を通じて、自己認識力(セルフアウェアネス)や自己管理能力(セルフマネジメント)の向上を目指すことができます。
▼セルフマネジメントに関する記事はこちら
若手ビジネスパーソン向けセルフマネジメント強化のススメ
ビジネスでマインドフルネスが注目される理由
マインドフルネスの瞑想が「何か神秘的な体験をするもの」ではなく、ビジネスシーンに受け入れられ多くの企業で支持される背景には、企業現場が抱える課題が関係しています。
①労働生産性の向上
現在の日本では労働力人口が年々減少していると言われ、どの企業でもいかに限られた人材資源を活かすか・業務効率化や生産性の向上を推進していくかが問われています。
当然ながらシステム導入やビジネスプロセス改善による業務効率化なども進めていくべきテーマではあるものの、一方で個人のパフォーマンスをいかに上げていくのか、はあらゆる組織において大きなテーマとなっています。
②従業員のメンタルヘルス改善
人材不足による労働過多が原因で引き起こされるメンタルヘルスの問題もあれば、「働く目的や意義が見えない」などといったモチベーション疎外による問題もあります。
かつてのように、金銭的報酬だけを求め働く時代は変わり、働くことに様々な意味や価値を求める人が増えた中で、企業自体も選ばれ続けるために従業員へ働く意味を提供することが求められるようになりました。
上記のような状況を打開するために、Googleが開発したマインドフルネスメソッドがきっかけとなりながらあらゆる企業が導入しその効果・重要性を実感していくこととなりました。
現在あらゆる企業において、顧客だけでなく従業員から選ばれ続ける会社となるために「働き方改革」だけでなく「従業員の働きがいの向上」が注目されるようになっています。そのような中で、「エンゲージメント」「ウェルビーイング」などと同様に重要性が高まっていると考えられるでしょう。
それではここから、マインドフルネスの具体的な得られる効果などをご紹介していきます。
(参考)ウェルビーイングとは?意味・定義や取り組み事例について
マインドフルネスの効果
■身体的効果
(1)脳機能の変化
瞑想によって期待できる最も大きな身体的変化は、「脳が変わる」ということです。
そもそも睡眠中など、自分では脳を使ってるつもりじゃない時間でも普段の脳内では「デフォルトモードネットワーク(DMN)」と呼ばれる活動が行われており、これがどれほど休んでもすっきりしない要因だとも言われていますが、瞑想によってデフォルトモードネットワークを鎮めることが可能と言われています。
この変化により、集中力・生産性が上がるとも言われています。実際、マインドフルネスにより子どもの成績が上昇した、という研究報告があります。
カナダのブリティッシュ・コロンビア州の公立校で、9歳前後の生徒99人を対象にした研究では、毎日3分×3回の瞑想を4ヶ月行った生徒のグループとそうでないグループとの算数の成績を比較したところ、瞑想を行ったグループの方が15%高いスコアを獲得したという結果が出ています。
また記憶に関わる「海馬」をはじめ、脳の容積があちこちで増えるということが分かってきています。
(2)心理的ストレス低減による身体症状の改善
また、マインドフルネス瞑想によってストレスを受けたときに分泌される「コレチゾール」が減り、「オキシトシン」という幸せを感じられるホルモンが分泌されると言われています。マインドフルネス瞑想を行うことで心が安定し、それにより、身体的な回復にも影響するということが、様々な実験で証明されています。
■精神的効果
(1)集中力が高まり、仕事・スポーツ・勉強などの効率が上がる
瞑想とは、リラックスしながらたった一つのことに「集中する」と「集中が切れたことに気づく」を繰り返します。このプロセスによって心が鍛えられ、集中する状態が長続きするようになります。
これにより、仕事や学習の効率が上がり、思考や作業の処理速度の向上が期待できるため、同じ作業量をより短時間で集中してこなすことができるようになります。
(2)ストレスが解消され心が穏やかになる
意図的に何もしない時間を持ち、考えていることや感じていることを客観的に観察していくことで、心と身体が深く休息し、ストレスや緊張から解放されて心が穏やかになる効果が期待できます。
欧米ではすでにその効果について多くの実証的研究報告があり、うつ・トラウマなどの精神障害やがん・心臓病患者に対するストレス対処法の一つとして導入されていることがあります。
(3)EQが高まり、心が安定する
瞑想が習慣化していくと、こころの知能指数(EQ)が上がると言われています。呼吸や体を観察する練習を通して、自分の中で起こっていることに気づく力(アウェアネス)が高まります。
それによって自分の感情や思考を客観的に自覚できるようになり、イライラ・焦り・恐怖・不安などの感情に振り回されにくくなります。
▼【EQ】に関する記事はこちら
EQとは?高い場合のメリットは?EQが低い場合の改善方法や高める方法を解説
(4)自信が育まれる
マインドフルネス瞑想では、注意がそれたら呼吸に引き戻します。このプロセスによって「注意力」と「注意がそれたことに気づく力」が養われます。そうすることで日常でも自分がやるべきことに集中できるようになり、自己信頼感が高まります。
また瞑想によってありのままの自分を見つめ受け入れるおおらかさが養われていきます。
▼【自己効力感】に関する記事はこちら
自己効力感とは?高めるメリットや方法について徹底解説
マインドフルネスのメリット・デメリット
■メリット
マインドフルネスを行なう上で、どのようなメリットが考えられるでしょうか?既に前章にてマインドフルネス瞑想の効果をご紹介していますが、マインドフルネスを行うことで
- ストレス軽減
- 集中力の向上
- 記憶や判断力の向上
- 自分の気持ちをコントロールできる
- 精神が安定することによる対人関係のスムーズ化
などがメリットとして考えられます。
特に、様々なことに注意を払いながら日々忙しく過ごすビジネスパーソンにとっては、溜め込んでしまった疲れやストレスを解消し、自身の思考・身体共にパフォーマンスを上げるという意味でも理想的なメリットだと考えられます。
■デメリット
様々な調査・実験がある中で、メインドフルネス瞑想においてはほとんどデメリットについて言及されていません。とはいえ、何事にも良い面だけではなく悪い面はつきものです。マインドフルネスのデメリットとしては、
- 禅病
- 瞑想への依存
- 不安症状の促進
などが考えられます。
・禅病
禅病とはマインドフルネス瞑想の副作用のことで、幻聴が聞こえたり、頭痛や吐き気をもよおすなどの症状が出てしまうことがあるそうです。身体が緊張した状態(交感神経)から、急にリラックス状態(副交感神経)に切り替わった時に起こることが多く、慣れるまでは短時間だけ行うなど、少しずつ慣らしていくことが大事です。
・瞑想への依存
マインドフルネス瞑想によって心身がともにリラックスした状態になり、解放された心身環境が新たなアイデアや発想を生むことは、十分にあり得ますし、現にアップルの創始者のスティーブ・ジョブズは、日本の曹洞宗の禅僧に師事していたと言われています。
しかし、瞑想と何かしらの「結果」の結び付きを求めることは非常に危険であり、瞑想がいい結果に繋がった時はさらに瞑想に依存的になってしまいますし、悪い結果に繋がった時は「瞑想に責任がある」と考えてしまいます。
近年ビジネスパーソンが取れ入れつつあるマインドフルネス瞑想はまさにこの傾向にあると言えます。対処としては、その瞑想を止めるかよりいっそう瞑想に励むかになりますが、いずれにしても「結果を求めてしまう」ことは危険であり上記のように「禅病」につながる可能性もあります。
・不安症状の促進
マインドフルネス瞑想は、自分の身体や内面と向き合います。自分が感じている不安な部分を深く掘李下げすぎて、その不安が無くなるどころか、肥大させてしまう可能性もあります。上記の通り結果を求めたり、何かの判断を加えることはせず、その瞬間のありのままをただ「観る」だけにするよう心掛けましょう。
マインドフルネス瞑想の実践方法
■マインドフルネス瞑想の種類とやり方
(1)姿勢を整える
マインドフルネス瞑想を最も効果的に深めていくためには、姿勢を整えることが重要です。大切なポイントは、よけいな緊張をほぐし、最小限の力で背すじを伸ばしていくことです。
背骨が気持ちよく伸びていて、首や肩に余計な力が入っていないことがポイントです。座っている場合でも立っている場合でも、自分にとって「安定」しており「快適」と感じる姿勢をとりましょう。
(2)呼吸を整える
姿勢が整ったら、次は「呼吸」に意識を向けていきましょう。呼吸に意識を向けることで、「頭であれこれ考えた状態」から「身体を感じる状態」へ切り替わりやすくなり、「今ここ」に意識を向ける感覚を掴みやすくなります。
呼吸のポイントとしては、何より自にとって気持ちのいい呼吸であることは不可欠です。下記の「呼吸のテクニック」は、気持ちの良い呼吸を再現するための手法に過ぎないことをまずは認識しておきましょう。
▼呼吸のポイント
1.鼻先を出入りしている息を観察する
鼻から自然に出入りしている呼吸の流れに意識を集中し、その空気の質、温かさや湿り具合なども繊細に観察していきましょう。
2.呼吸によって変化している身体の感覚を観察する
呼吸によって、膨らんだりしぼんだりしている身体感覚の変化を見守りましょう。
3.呼吸に集中する
普段無意識にしている呼吸を意識することは最初は難易度が高く窮屈に感じるかもしれませんが、自分が無になるまで呼吸を数えながら意識してみましょう。呼吸には大きく分けて「胸式呼吸」と「腹式呼吸」があります。
(3)瞑想を実践
マインドフルネス瞑想にはいくつかの種類がありますが、今回は代表的な3つの方法をご紹介します。
マインドフルネス瞑想の代表的な5種類の瞑想法のうち、ここでは3種類の瞑想法のやり方を紹介します。
1.静座瞑想法
頭と首と背筋が一直線になるよう、椅子や床に垂直に座り、注意を呼吸に集中します。1日1回、まずは10分から始め、30分以上集中できるようになるまで少しずつ時間をのばしていきます。
ある程度の時間、呼吸に集中できるようになったら、次は注意を体全体や浮かんでくる思考に向けます。最後の段階では意識を完全に解放し、注意を何にも向けずにただ座っている状態になります。
2.ボディー・スキャン
横たわって目を閉じ、注意を呼吸に向けながら、体のさまざまな部分にも順番に向けていきます。左足の先から足の付け根、右足の先から足の付け根、骨盤から胴体を上方向へ移動して肩へ、次に両手の指先から肩へ、首から顔、後頭部へと注意を向ける部位を移動させていき、最後に頭の頂上に向けます。注意を向けている部位が感じている感覚や、生じてくる思いを感じとります。
3.歩行瞑想法
私たちは、日常生活の大半を無意識のうちに過ごしています。歩行瞑想法は、日常生活の中でも注意を集中するための訓練法です。周りの景色を見ずに視線を前方に固定して、普段より少し遅い速度で歩きながら、呼吸や足の感覚、体全体の動きや、自分の内部に生じてくる感覚に注意を集中します。
以上が、マインドフルネス瞑想の基本的なやり方になります。この一連の流れを毎日繰り返し行うことで、頭に浮かぶさまざまな考えは徐々に減っていき、今の自分の呼吸だけに集中できるようになっていきます。
■マインドフルネス瞑想ができる場所
マインドフルネス瞑想の基本は、「骨盤を起こして背骨をのばして座り、安定して快適であること」です。手の位置や、足の組み方に決まりはありません。そのため、自分が安定して座れる場所やマインドフルネス瞑想に集中できる静かな場所を選びましょう。
より具体的な座り方としては、下記のようなものがあげられます。
- あぐら:楽な瞑想姿勢
- 半蓮華座:片方の足を反対側の腿に乗せる瞑想姿勢
- 蓮華座:両方の足先をそれぞれ反対側の腿に乗せる瞑想姿勢
- 正座:日本では親しみやすい瞑想姿勢
- 椅子座:背骨をまっすぐに伸ばしやすい瞑想姿勢(背もたれに寄りかからず、骨盤を起こして浅めに腰掛けるようにします)
- 仰向け:布団やマットの上で仰向けになる。誰でもできる瞑想姿勢
※参考:吉田昌生「マインドフルネス瞑想入門」
マインドフルネス瞑想を取り入れた心理療法について
■マインドフルネスストレス低減法
マインドフルネスストレス低減法とは、ジョン・カバットジン博士がマサチューセッツ大学メディカル・センター内に開設した「ストレス低減クリニック」で特に痛みの緩和のために開発したプログラムです。グループ形式で行う8週間のプログラムで、2時間のセッションを週1回行うほか、参加者には期間中、毎日瞑想を行うことが求められます。
マインドフルネスストレス低減法では、テーラワーダ仏教の伝統的な瞑想法が基本的に取り入れられていますが、その他の仏教やヨガの実践方法も部分的に取り入れられているそうです。
初期の論文には、テーラワーダ仏教、曹洞宗と臨済宗などの禅宗を含む大乗仏教の他に、ベーダーンタ学派、クリシュナムルティ、ラマナ・マハルシなどのヨガの伝統が引用されていると言われていますが、より実用的に取り入れられる中で宗教を持つ持たないに関わらず誰でも気兼ねなく参加できるように、宗教性は排除されるようになっていきました。
マインドフルネスストレス低減法は1990年代には、後にうつ病の治療のためにマインドフルネス認知療法(MBCT)へと展開していきました。危険な副作用を持っている可能性は低く、教育、妊娠中、刑務所などで使用されています。
■マインドフルネス認知療法
オックスフォード大学臨床心理学名誉教授マーク・ウィリアムズ博士らが、マインドフルネスストレス低減法をもとに、うつ病の再発予防を目的として開発したプログラムです。
マインドフルネスストレス低減法と同様に、8週間にわたり各回2時間のセッションにより実施されます。
このプログラムでも、ボディスキャン、ヨガ、歩く瞑想、座る瞑想などを行います。これらの練習を通じて、参加者は、うつ再発のサインとなる出来事に対し、より上手に対処できるような力をつけていきます。
マインドフルネスストレス低減法との違いは、うつ病の再発予防を目的として開発されたため、気分の落ち込みや否定的な思考の癖に気づき対処法を身につけていく点であり、うつに関する知識習得や、思考と感情の関係性に焦点をあてた認知行動療法の手法も組み込まれています。
マインドフルネス認知療法は現在うつの再発予防にとどまらず、不安症、癌、慢性的疲労などの患者に対しても適用されています。
記事まとめ
いかがでしたか? マインドフルネスとは、自分の心の中や取り巻く環境をありのままに受け入れ、「今ここ」の瞬間に意識を集中することです。
この状態になるためのマインドフルネス瞑想は、「今、この瞬間」にいるために不可欠な注意力と集中力を養うことができるトレーニングであり、ビジネスパーソンにとっても様々なメリットがあります。
マインドフルネス瞑想は、スピリチュアルな意味や精神疾患などの治療法としてだけでなく、あらゆる人にとって生活の質を高め、より良い人生を送るための手段となりうるものです。デメリットもしっかり理解しながら、自分にとって最適なやり方で取り入れてみましょう。
▼【リンクアンドモチベーションのサービス特徴】が分かる資料はこちら