OKRとは?Googleも採用する効果的な運用方法を解説
昨今、人事評価や研修などにおいて次々と新しい手法が生まれています。今回は、Googleやメルカリといった多くの有名企業が採用している目標管理法である、OKR(Objectives and Key Results)についてご紹介します。
KPIやMBOとの違いや導入メリット、運用のポイントなどについても整理しています。
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目次[非表示]
- 1.OKRの意味
- 2.OKRの要素
- 3.OKR導入のメリット
- 4.OKR導入のデメリット
- 5.OKRが注目されている背景
- 6.OKR導入のために必要なステップ
- 7.OKR運用のポイント
- 8.記事まとめ
OKRの意味
まずは、OKRの定義とともに、MBOやKPIとの違いについてご紹介します。
■OKRとは
OKRとは、「 Objectives and Key Results 」の略称で、 組織が掲げる目標(ゴール)を目指すために、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)をリンクさせ、組織・個人の方向性とタスクを明確にする目標管理方法 の一つです。
その特徴は「企業」「チーム」「個人」の目標がリンクすることで、同じ目標に向かって計画を進められること。加えて、「半期」、「1年」といった長期間で目標管理していた従来の方法と比べ、「数か月」という短期間で目標管理するのも特徴です。
GoogleやFacebook、Intelなどの大企業が取り入れていることからOKRという目標管理手法が注目を集めていきました。
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目標管理とは?行動振り返り、MBO、OKRを詳しく解説
■MBOとは
MBOとは、「Management By Objectives」の略称で、P. F.ドラッカー氏やダグラス・マクレガー氏らによって提唱されたマネジメント理論です。
ドラッカー氏が提唱したMBO(Management By Objectives and Self-control)とは、社員自らが自分で目標を決めて取り組むことで社員のモチベーションアップを促し、それを企業の成果につなげるマネジメント手法を指します。
個別に何を達成させるのかを明確にし、個人と組織のベクトルを合わせ、最終的に個人の目標と組織の目標をリンクさせます。
上司から一方的に指示し業務を遂行させるのではなく、個人が、組織の目標についてどのように考え、自身はどのように目標設定をするかを考え上司やリーダーと共に話し合いリンクさせていくので、「やらされ感」がなくなり、組織の成功に貢献するという参画意識を持たせることができるので、個人個人が意欲的な取り組みができます。
MBOが多くの日本企業に導入され始めたのは、バブル経済崩壊後の1990年代です。日本企業が、年功序列型の雇用制度から成果主義人事に舵を切った時代で、年俸制の導入や評価制度としてのMBO導入が進みました。
■KPIとは
KPIとはKey Performance Indicatorsの略で、日本語に翻訳すると「重要業績評価指標」です。
KPIは、最終目標(KGI)達成にいたるまでのプロセスをチェックする中間指標です。KGIを達成することが主眼となるため、KPIは現実的な数値を置きます。
KPIを適切に設定することで、目標が明確になり、チーム内の方向性が統一されます。KPIを設定しておくことは、後に控える最終目標達成のための重要な要素として機能します。
■OKR、MBO、KPIの違いとは?
OKRは、企業が一丸となって目標を達成するための手法なので、「高い目標設定」をすることに意味があります。評価に活用されることはありません。もし評価に反映してしまうと、高いレベルの目標設定がされにくくなります。OKRは評価制度とは別であることを認識しておきましょう。
対してKPI(重要業績評価指標)は、最終目標(KGI)達成にいたるまでのプロセスをチェックする中間指標です。達成することに意味がある指標なので、評価にも活用されます。
MBO(目標管理制度)は、より「評価制度」としての意味合いが強いものです。MBOは報酬の決定にも使われ、定量的・定性的ともに考慮します。
レビューサイクルは毎年、あるいは半年に1回とやや長めです。OKRは報酬の決定には使われませんし、定量的な項目のみを測定対象とします。レビューサイクルも、OKRの方がMBOより短いという違いがあります。
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OKRの要素
OKRでは、まず目標(Objectives)を決め、その達成のために必要な要素を3〜4の成果指標(Key Results)に分解し、進捗をトラッキングします。まず、会社としての「O」と「KR」をそれぞれ設定します。
■Objectiveの内容
会社としての「Objevtive」の内容は、例えば「売上XXXX円を達成する」「年内にXXX店舗の展開を目指す」といったものです。OKRにおける目標の特徴はシンプルで覚えやすいものであることです。
チームのモチベーションを高めるような挑戦しがいのあるもので、1カ月から四半期(3カ月)で達成できるような目標であると定義されています。
■KeyResultの内容
そして、上記の目標に対してインパクトを持つ成果指標を、「KeyResult」に置きます。 売上目標に対しての場合、例えば「サービスのユーザー数をXX人にする」「1人当たりの課金額をXX円にする」「顧客満足度をXX%高める」などがKRとして考えられます。
KRは定量的な指標、つまり数値的に測れることが必要となります。一つのObjectiveに対してKRは2~5つ程度あるとよいとされ、多すぎるとチーム内のコミュニケーションを阻害する可能性があると考えられています。
OKR導入のメリット
OKR導入においてのメリットをご紹介します。
■生産性向上
優先順位の明確化やコミュニケーションの活性化により、生産性が向上する効果が期待されます。
社員一人一人が様々な業務を担当していると、「どの業務を優先的に行えばよいかわからない」「重要度の高い業務よりも、自分のやりたい業務を優先してしまう」といった問題が生じることもあると思います。
しかし、OKRを設定すると最終目標を常に意識することができるため、「優先順位が明確になる」「目先の業務や小さな目標に惑わされにくくなる」といった効果が期待できます。
(※参考:d’s JOURNAL「【5つの施策例付】生産性向上に取り組むには、何からどう始めればいいのか?」)
■目標達成率の向上や大きな目標設定が可能
企業として大きな目標を達成しやすくなるという効果も期待できます。OKRでは、目標達成の期待水準が60~70%となっており、もともとの目標が高く設定されています。
目標の難易度の高さは「企業」「チーム」「個人」全てのOKRで共通しているため、OKRを実施することにより組織全体で高い目標を追い掛けることができ、その結果、最終的に企業が掲げる目標を達成しやすくなるというメリットが期待できます。
■全社的な相互連携
各社員が同じ目標と結果を共有しているため、会社全体の動きが具体的にイメージできるようになります。
これは、チームや個人間の意思疎通を容易にし、結果としてコミュニケーションを活性化させ全社的な相互連携を生むことに繋がっていきます。
■従業員エンゲージメント向上
OKRでは、企業のビジョンに沿った目標を設定することが一般的です。そのため、OKRの進捗を確認する過程で、常に会社のビジョンを社員に示すことができます。
一人一人が「会社からどのような行動・成果を期待されているか」を理解することで、「全員が一丸となって行動できる」「企業と社員の信頼関係が深まる」といった効果が期待できます。
組織の目標と従業員の個人目標を連動させるため、個人が自社にどのように貢献しているかが可視化されやすく、 従業員の企業に対する愛着や貢献意欲を高められます。
さらに、MBOとは異なり、月1回から四半期に一度の振り返りが実施され、従業員は企業に対する貢献度や業務の納得度を都度確認できるので、 従来の目標管理方法と比べても相互的な信頼関係を強化できます。
OKR導入のデメリット
逆に、OKR導入におけるデメリットや注意点についてもご紹介します。
■定着するまでに時間や手間をかける必要がある
OKRは従来の目標管理方法とは異なるため、いざ導入してもそう簡単には定着しない可能性があります。
「社員にOKRの仕組みや導入する意義を理解してもらう」「1回限りで終わりではなく何度か繰り返し、自社に合った運用方法を検討する」など、社内で定着するまでには時間や手間をかける必要があります。
■企業によって向き不向きがある
OKRは、短期間でのOKR設定や振り返りができるマネジメント体制が整っている企業に向いている目標管理方法だとされています。
一方で、「社員一人一人が複数の業務を兼任している」「OKRの設定や振り返りをそう頻繁にはできない」といった企業にはあまりマッチしないと思われます。
自社の体制と合うかどうかを考えたうえで、OKRの導入を検討した方がよいでしょう。
■場合によっては社員のモチベーション低下を招く
「そう簡単には達成できない」という難易度の高い目標が、OKRでは設定されます。そのため、「100%の目標達成」が求められた従来のMBOやKPIに慣れている社員にとっては、100%の達成が難しいOKR自体がストレスとなる場合があります。
モチベーションの低下を防ぐため、OKR導入前には「従来の目標管理のように、100%の達成は求めていない」「挑戦的な目標に全員で取り組むことに価値がある」といったOKRの意義を社員に伝えることが重要になります。
OKRが注目されている背景
Google・Facebook社が導入・成功している事などを背景に、日本でもメルカリをはじめ多くの企業で活用されています。OKRが注目されている背景についてご紹介します。
■幅広い職種で対応が可能
MBOの場合だと、営業現場では機能していても、エンジニア組織には適応しづらいという問題を感じている企業もありました。
「何を求められているのかわからない」「プロダクトの方向性は?」「これをやっている意味は何なのか」と言った声が上がり、コミュニケーションの難しさを感じるている企業も少なくなかったようです。
その点、OKRを使うことで、「会社の方針はこれ、それを受けた部署の方針はこれ。その中で評価していくから、この範囲の中で各自がオリジナリティを出そう」といった形で明確に示せるようになります。
そうすると、エンジニア組織であってもみんな仕事に対して「やる意義」を感じられるようになったといいます。このように、幅広い職種で対応可能な点がOKRの魅力といえます。
(※参考:SELEK「sansan 自ら「働き方の革新」に挑むのがSansan流。OKRによる目標管理や社内SNS運用を紹介」)
■全社的な生産性向上に寄与
全社と個人の目標を連動させることで、労働時間縮減の中でも生産性UPが見込めることで注目している企業もあります。
OKR導入のために必要なステップ
OKRの導入は以下のようなステップで行います。
①企業OKRの設定
まずは、企業全体のOKRとして企業OKRを設定します。
②チームからのフィードバックを元に企業OKRを調整
企業OKRを各チームに展開しフィードバックを受けます。このフィードバックをもとに必要に応じてOKRを修正します。
③チーム(部署)OKRの設定
企業OKRをもとにそれと連動させて各部門、チームのOKRを設定していきます。
④チームOKRを共有しあい、調整
自分のチームのOKRと他のチームのOKR、企業OKRを参照し、整合性を確保するために必要に応じて修正を行います。
⑤個人OKRの設定
部門/チームOKRと連動した個人のOKRを設定します。マネージャーと相談しながら、状況に応じてメンバーにも相談して決定していきます。
⑥個人OKRを共有しあい、調整
チーム内で各メンバーの個人OKRを確認。整合性を確保するために、必要に応じて修正します。
(※参考:カオナビ人事用語集「OKRとは? 【Google、Facebookが使う目標管理ツール】KPI・MBOとの違い、導入・運用・目標設定方法について解説」)
OKR運用のポイント
OKRの運用には高い頻度での進捗確認が鍵となります。この方法として効果的なのがチェックインという短いミーティングです。
■進捗の共有
週に一度「チェックイン」を行い、チーム内で進捗を確認します。チェックインとは進捗を確認するための短い儀式を意味します。
ペースは一週間に一度、1時間以内の短時間で行います。チェックインの中で確認すべきポイントは、「OKRの進捗」「自信度の確認・更新」「課題、達成阻害要因」「ネクストアクション」といった点です。
■フィードバックの高頻度化
設定したレビュー期間の中間地点(四半期の場合は1.5~2カ月経過時点)で、全体的なレビューを1、2回行います。このとき、進捗に遅れがあれば改善点を議論し、必要に応じて目標を変更しても構いません。
最終的には、レビュー期間の最後にスコアリングを行い、各OKRの結果を評価します。
その際に要因を分析し、達成度が低すぎる/高すぎることはないかを確認し、今後同じ目標を続けるか、別の目標に切り替えるかを判断します。
記事まとめ
OKRという手法には、企業の目標を個人とリンクさせ、コミュニケーションを活性化させるという特徴があります。特に生産性や社員の士気の低下を改善したいと考えている企業にとっては、OKRは効果的かもしれません。
しかし、会社によって向き不向きがある点、社内で定着させるためには時間がかかるという点も含め、しっかり検討してみていただきたいと思います。
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