OODAとは?PDCAとの違いやメリット・デメリットは?実行手順もご紹介
OODAとは、最近注目されている意思決定のためのフレームワークです。
現代はVUCA時代と言われており、外部環境が目まぐるしく変化し、複雑で予測不可能な時代になっています。
この急激な変化に対応するためには、各企業は迅速に意思決定を行い、臨機応変な行動を取っていくことが重要です。その1つの手段として、OODAというフレームワークを活用することが有効です。
本記事では、OODAがどのようなフレームワークなのか、PDCAとの違い、OODAのメリットやデメリット、OODAの実行手順や留意点などについて説明します。
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OODAとは?読み方や意味は?
OODAループは「ウーダループ」と読み、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(実行)の4つの英単語の頭文字で構成されています。
決まった目的やゴールがあるのではなく、現状把握から始めて、状況に応じて「今どうするべきなのか」という意思決定をしていくためのフレームワークとして知られています。
■OODAの歴史・起源
OODAループは、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐によって開発されました。
ジョン・ボイド大佐が在籍していた当時のアメリカ空軍では、朝鮮戦争の真っ只中で、大佐自身も戦闘機のパイロットとして活躍していました。大佐は参加した作戦の経験をもとにして、指揮官が持つべき意思決定プロセスを構築しました。それがOODAループの原型です。
彼のこの考え方は、世界の多くの軍隊で採用され、それまでの軍事戦略に大きな変化をもたらしました。
ボイド大佐は、この考え方は軍事戦略だけでなくビジネス等もっと一般的に使える汎用性のあるものと考え、整理し開発したものをOODAループと呼びます。
1989年にはアメリカのビジネス界で有名な経営評論家であるトム・ピーターズによって紹介され、現代ではビジネススクールでも教えられているほど有名なフレームワークとなっています。
■OODAループについて
OODAループは、ビジネスにおいて重要な判断や決断を迅速に行うための「意思決定プロセス」として知られています。
事業活動におけるOODAループの一連の流れを、打ち勝ちたい相手よりも少しでも速く回すことで、優勢な立場で物事を進められるようになるのが、OODAループの本質です。
OODAループは、下記の4つのステップに分かれています。
①観察(Observe)
②情勢判断(Orient)
③意思決定(Deside)
④行動(Act)
各ステップの詳細は後ほど記述しますが、このループを「速く」回し続けることで勝ち続けられる組織こそが、業績向上を実現できるのです。
OODAループの活用方法や導入方法については以下の記事もご覧ください。
OODAとPDCAの違いとは
OODAとよく比較されるフレームワークとして、PDCAがあります。この2つの違いをご紹介します。
■PDCAとの使い分け
OODAと一緒に、PDCAが紹介されることが多いですが、この2つのフレームワークにはどのような違いがあるのでしょうか。
PDCAが「計画を立ててから、行動する」というプロセスを踏むのに対し、OODAループは「状況を見てとりあえずやってみる」ところから始まります。それぞれのコンセプトに沿って、特徴を具体的に説明します。
PDCA
PDCAとは、Plan・Do・Check・Actionの頭文字を取ったものです。これは、業務の円滑な改善を実現するためのフレームワークとして知られています。
このフレームワークは、下記のような状況で使われることが多いです。
- 前提:自組織を取り巻く環境は変わらない
- 使い方:プロセス管理ツール
- 適している状況:変化の少ない市場の既存商品やサービスの販売数などをアップさせたいといった場合
OODA
冒頭にも記載しましたが、OODAはObserve・Orient・Decide・Actの頭文字を取った意思決定モデルです。OODAは、迅速な意思決定と行動を可能にするフレームワークとして知られています。
このフレームワークは、下記のような状況活用されることが多いです。
前提:外的要因によって常に環境変化が起こる
使い方:思考ツール
適している状況:新規事業や新たな商品、サービスを開発する場面
以上のように、OODAループとPDCAには前提や活用方法に大きな違いがあります。どちらかが良いということではなく、状況に応じて分けることが重要となります。
OODAが重視される理由
OODAループは、1989年からビジネスに活用されていますが、昨今注目されている理由として下記の3つが挙げられます。
①AIやSNSが急速に発達してきたため
ここ数年で、SNSやビックデータ、AIなどが発達し、低コストで大量のデータが収集できるような環境が整いつつあります。そのため、ビジネスにおいて、リアルタイムにデータを収集し、即座に判断して行動に写すことが、競争優位を築くための鍵になってきています。
②経営において、スピードが重視されてきているため
近年のビジネスにおいては、スピードという時間軸が重視されてきています。特に、イノベーションのスピードが速く、事前に予期できない動きがいつ生じるかわからない業界では、長期的な計画を立てることはリスクになりうると言われています。
そのため、意思決定を迅速に行うことができるOODAループは、近年の状況に適したフレームワークと言えるでしょう。
③PDCAでは対応できない状況を、補完することができるため
PDCAはビジネスでよく使われるフレームワークですが、計画を重視するあまり適切なタイミングを逸脱するという弊害も見られます。
しかし、OODAループでは事実の観察から始まるため、事態の流れを的確につかみ、小刻みな実験・行動を積み重ねていくことができます。
そのため、変化の激しい時代でも事実に適した対応を取ることができます。 このような違いから、PDCAでは網羅できない部分を補完することができます。
OODAはどんな企業・業界で取り入れられている?
OODAは、開発されたきっかけが戦争という変化が激しく、即座の判断が求められる環境のため、今後の見通しや計画を立てにくい状況において、役立つフレームワークです。ここからは、OODAを活用すると効果的な企業や業界を解説します。
競争率の高い業界
インターネットをはじめとしたテクノロジーの進化や、新型コロナウイルスの流行、ウクライナ危機など、世の中は急速に変化していきます。特にインターネットの進化は、次々と新しいサービスが登場しても、情報の流通スピードが速いためすぐに模倣されるという状態を作りました。結果多くの競合が現れ、激しい顧客獲得の競争が起こっています。
すぐにサービスを模倣されるという、競合が多くいる状況で業界のシェアを勝ちとるためには、変化のタイミングを逃さずスピーディーに新しいサービスや付加価値を作れるサイクルが必要です。このような状況で最大限効果を発揮するのがOODAの強みといえます。
新規事業・起業した場合
新規事業の立ち上げや、新サービスの開発、企業など、今後どうなっていくかの計画を立てにくい状況でも、OODAは効果的です
どれだけ計画を立てたとしても、新規事業や新サービス開発は予想のしない課題に当たることが多くあります。この場合、PDCAサイクルではどれほどスピードを上げて回しても、予想しない事態に連続でぶつかってしまった場合はその都度計画の立て直しが必要になり、結果変化のチャンスを逃してしまう可能性もあります。
しかし、OODAループであれば、現場での観察から始まるので、ぶつかった課題に対して即座に「こうしてみよう」と対応していくことができるのです。したがって、OODAループを磨くことは、競合他社に打ち勝ち、優位性を獲得することに繋がるのです。
企業がOODAを取り入れるメリット
ここでは、企業がOODAを導入するメリットをご紹介します。
メリット①環境変化に柔軟に対応できる
1つ目は、環境の変化に対して柔軟に対応できることです。 現場のトップが上位者の決定を待つのではなく、たえず行動を微修正しながら活動できるようになるので、突然の環境変化にも柔軟に対応できます。
メリット②施策のスピードアップが図れる
2つ目は、施策の実行スピードを高めることができます。 なぜなら、OODAループでは、現場のトップに意思決定が委ねられているためです。現場が意思決定できることにより、組織の行動のスピードが早くなり、成果につながりやすくなります。
メリット③生産性が向上する
3つ目は、生産性が向上することができます。 OODAループを活用すると、小集団単位でとにかく実行によって成果をあげることができるので、 組織全体で「指示待ち」の時間が大幅に削減されます。
企業がOODAを取り入れるデメリット
メリットはご紹介した通りですが、OODAにはデメリットもあります。適切に活用していただくために、デメリットとそれに対する解決策をご紹介します。
デメリット① 失敗する確率が高くなる
デメリットの1つ目は、失敗する可能性が高くなることです。OODAループでは、状況に応じて迅速に行動することが求められます。
最初の段階で仮説を立てる際に、時間をかけて考えることはしないので、間違った仮説を立ててしまう可能性もあります。特に計画を立てて検証をするPDCAサイクルと比較すると、失敗する確率は高くなります。
デメリット② 定型型業務の改善では活用しづらい
2つ目は、ルーティンワークには向いていないことです。
後ほど詳しく紹介しますが、OODAループのステップは「Observe=観察」から始まります。つまり、「このようなことを解決したい」や「このような結果を得たい」ということから始まるのではなく、「このようなことが起こっている」という事実の観察から始まります。
そのため、「~~の作業効率を上げたい」などの業務改善プロセスには向いていないフレームワークです。
OODAのデメリットを解決する方法
次に、上記デメリットを軽減する方法を2つ紹介いたします。
解決策① OODAを活用する目的を明確にする
デメリットの軽減方法1つ目は、OODAというフレームワークを活用する目的を明確にすることです。デメリット②でもお伝えした通り、OODAループが向いている状況とそうでない状況があります。
そのため、OODAループを使うことによって、どのようなことを成し遂げたいのかを明確にすることが必要です。特に、PDCAサイクルと上手く使い分けることが重要になります。
解決策② ObserveやOrientのステップでは、論理的かつ複数の視点を用いる
2つ目の軽減方法は、観察~情勢判断のステップでできるだけ客観的な分析ができる状態を整えることです。特に観察のステップの情報は、その後の判断や行動に大きく影響を与えます。
デメリットの1つ目で紹介した「失敗の確率」を下げるために、最初の段階で正確な事実を捉えることが必要です。そのためには、誰か1人のみで観察するのではなく、チームメンバーの複数人で取り組むことが望ましいでしょう。
※参考:
セールスマネジャーRemix CLOUD「PDCAは時代遅れ!? いま注目を集める「OODAループ」とは」
engage「OODAループとは?メリット・デメリットや効果的な取り入れ方を解説」
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OODAの実行手順
次に、OODAの実行手順についてご説明します。実行手順については、様々な方法が紹介されていますが、今回は「OODA LOOP -次世代の最強組織に進化する意思決定スキル」に基づいて紹介します。
①Observe(観察する)
まず1つ目のステップは、「観察」です。ここでは、外部環境や状況の変化に関するデータを収集します。
このステップにおいて、一番重要なポイントは「意識して観察すること」です。周りの状況をなんとなく観察するのではなく、意識的に観察します。
意識的に観察する際のポイントは、3つあります。
(1)主観的な視点や固定概念を排除すること
(2)ありのままの状況を見ること
(3)観察に集中すること
これらのポイントを押さえ、正確な情報を捉えることで、次のステップからの精度が向上しやすくなります。
②Orient(情勢判断する)
2つ目のステップは、「情勢判断」です。OODAループのプロセスにおいて、一番鍵となる部分です。
ここでは、ステップ①で得た情報を、自身の経験との照合や分析などによって、方向づけを行います。ステップ①では客観性を重視していましたが、本ステップでは主観的要素も交えながら、分析していきます。
本ステップでのポイントは、「悪い情報にも目を向ける」ことです。良い情報だけでなく、悪い情報にも意識を向け、その上でどのような方向に向かっていくのかを判断する必要があります。
③Decide(意思決定する)
3つ目のステップは、「意思決定」です。前ステップで行った判断に基づき、明示的な意思決定を行います。
ここで注意していただきたいのは、図にも表示されている通り、直感的な判断ができるのであれば、本ステップは省略しても構いません。
OODAループでは、判断・行動の機敏性を向上させることを目的としています。そのため、可能であれば「②情勢判断」から即座に行動に移ることが望ましいでしょう。
④Act(実行する)
最後のステップは、「実行」です。「②情勢判断」もしくは「③意思決定」に基づき、実際の行動に移ります。
このステップでのポイントは、2つあります。
(1)決断したら、即座に実行すること
(2)決断したことを完遂すること
この2つのポイントを押さえることで、今回の仮説が成功なのか、それとも失敗なのかを判断し、次のループに活かすことができます。
※参考:
「OODA LOOP -次世代の最強組織に進化する意思決定スキル」著:チェット・リチャーズ / 訳: 原田勉
OODAを取り入れる際の注意点
最後に、OODAを活用する際に注意しておくべきポイントをご紹介します。
①明確なビジョンを設定する
OODAループでは、PDCAサイクルのように計画を立てるのではなく、即座に意思決定し行動に移していきます。そのため、一定の判断軸が必要になります。明確なビジョンを設定することで、判断基準ができ、OODAループを迅速に回していくことができます。
②即座に行動に移す
実行手順の部分でも触れましたが、「③意志決定」を行った後は即座に行動に移すことが大切です。本フレームワークは、計画を立てない分、スピードを上げることで価値が発揮されます。そのため、行動実行までのスピードを意識すると良いでしょう。
③現場主義的な観察や判断を行う
OODAループは、外部環境やその場の状況に基づいて判断されることが特徴です。そのため、ビジネスにおいては、ある程度現場に権限を委譲していくことが重要となります。現場に関わっていない上司が口を挟むのではなく、現場の判断に任せてみると良いでしょう。
次に、OODAループを効果的に活用するポイントを2つご紹介します。
①管理職のリーダーシップが必要になる
導入ポイントの3つ目で、「権限を現場に委譲することが大切である」とお伝えしました。その上で特に重要となるのは、管理職のリーダーシップです。しかし、ただ単に現場に一任するのではなく、組織の目指すべきビジョンや戦略を理解できている方に任せることが重要です。
下記、図のように管理職(ミドルマネジャー)がどれだけ組織のビジョンや戦略を理解しているかによって、組織の業績は大きく変わってきます。そのため、組織の結節点である管理職に任せられるように、しっかりと育成していく必要があります。
②意思決定のための決断力が必要である
2つ目のポイントは「決断力」です。本記事にて、「行動までの実行スピード」が大切であると述べています。
そのためには、早く強い決断をすることが重要です。特に「②情勢判断」~「③意思決定」のフェーズにおいて、いかに早く適切に判断し、実行する決断を下すかが、組織成果を大きく左右します。
※参考:
Active and Company 「OODAとマネジメントで注意すべきこと」
まとめ
今回はOODAについて解説しました。昨今注目されてきているフレームワークですが、きちんと使い方や活用すべき状況を理解したうえで使い分けることが重要です。
特に、PDCAサイクルとの違いを十分に理解し、適切に活用することで組織のパフォーマンス向上に繋がるのではないでしょうか。
迅速な動きが求められている現代に、本コラムが少しでも助けになれば幸いです。
OODAに関するよくある質問
・OODAとはなんですか?
OODAループは「ウーダループ」と読み、ビジネスにおいて重要な判断や決断を迅速に行うための意思決定のためのフレームワークです。
決まった目的やゴールがあるのではなく、現状把握から始めて、状況に応じて「今どうするべきなのか」を決めていく必要がある際に使うと効果的な手法です。
・OODAとPDCAの違いはなんですか?
OODAは「状況を見てとりあえずやってみる」ところから始まるのに対し、
PDCAが「計画を立ててから、行動する」というプロセスを踏んで進めるものです。
OODAは戦争といった計画を立てる時間がない場面を想定して開発されており、PDCAはもともと工場等での製造工程の改善手法の一つとして開発されています。両者ではスタートの起点となる発想も、活用する場面も違います。
・OODAとPDCAを使い分けるコツはなんですか?
OODAは、現状を観察し、そこから仮説を立てて実行していくという特性上、新規事業の立ち上げ、新商品や新サービスを開発したいなど、イノベーションを生み出したい場面や、前例主義を打破したいといった場合に使うと効果的です。
PDCAは、計画を最初に立てるため、商談数を上げたい、商品サービスの受注率をアップさせたいといった、前例や使えそうなデータがあり、既に一定の形があるものの改善活動を行いたい場合に使うと良いでしょう。
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