スキルトランスファーとは?目的やメリット・成功のポイントなどを解説
スキルトランスファーは、組織内で従業員が持つスキルや知識を共有し、企業全体の成長や競争力強化を図る手法です。スキルトランスファーの実践により、人材育成の効率化や業務の属人化防止が期待でき、組織のパフォーマンス向上が期待できます。
この記事では、スキルトランスファーの目的やメリット、成功のためのポイントを詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
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スキルトランスファーとは
スキル(skill)は「技術」「技能」、トランスファー(transfer)は「移動させる」「譲渡する」という意味を持つ言葉です。
企業におけるスキルトランスファーとは、知識やノウハウを共有したり、伝達したりすることを指します。先輩から後輩への教育だけでなく、チーム内での情報共有もスキルトランスファーに含まれます。
スキルトランスファーとナレッジトランスファーの違い
ナレッジ(knowledge)は「知識」「学識」を意味する言葉です。ナレッジトランスファーを直訳すると「知識の移転」となります。スキルトランスファーとナレッジトランスファーは、ほとんど同じ意味で使われています。
スキルトランスファーの目的
スキルトランスファーの目的は、スキルの属人化防止です。組織内で知識やノウハウを共有することで、特定の人に業務が集中するのを防ぎ、人手不足の解消につながります。労働力人口の減少が社会問題化するなかで、企業には人手不足を解消するための取り組みが求められています。
スキルトランスファーの要素
スキルトランスファーで共有される知識やノウハウは「形式知」「暗黙知」の2種類に分けられます。それぞれ詳しく解説します。
形式知
形式知とは、操作方法や作業手順などマニュアルで共有できるものです。形式知は「明示的知識」と呼ばれることもあります。文章や計算式、図を用いて説明できるため、暗黙知と比べると伝えやすい要素といわれています。
暗黙知
暗黙知とは、言語化できない経験や勘、直感などのことです。「経験的知識」と呼ばれることがあるとおり、個人の経験に基づく知識となるため、練習や試行錯誤が必要です。マニュアル化が難しい要素ですが、暗黙知から形式知への置き換えを実践している企業も少なくありません。
スキルトランスファーのメリット
スキルトランスファーを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、企業側の視点からスキルトランスファーのメリットを紹介します。
人材育成を効率化できる
スキルトランスファーの導入により、人材育成を効率化することが可能です。スキルトランスファーでは、単なる業務の引き継ぎではなく、経験や勘といった暗黙知の共有も行います。経験が豊富な従業員が持っている知識やノウハウを若手に伝授することで、短期間で効率よくスキルが身につき、組織全体のパフォーマンス向上も期待できます。
ノウハウを蓄積できる
社内にノウハウが蓄積され、組織としての生産性が高まる点もスキルトランスファーのメリットです。スキルが属人化していると「担当者が不在で対応できない」「退職によってノウハウが失われてしまう」といった問題が生じやすくなります。
スキルトランスファーが適切に行えていると、万が一従業員が転職・退職した場合でもスムーズに組織が運営できます。
顧客からの信頼を得やすくなる
従業員のスキルレベルを一定以上に保つことで、顧客からの信頼を得やすくなります。たとえば、担当者のスキルにばらつきがあると、サービスの質が落ちてしまう恐れがあり、顧客満足度も低下します。スキルトランスファーを導入することでスキルの底上げが可能となり、顧客離れを防げます。
スキルトランスファーを進める5つの方法
スキルトランスファーを進める方法には、5つのパターンがあります。共有したい知識やノウハウの種類に応じて、それぞれ使い分けていきましょう。
連続移転
連続移転は、同じ業務で生かせるノウハウを共有する方法です。同じ部署の先輩が後輩を育成したり、担当者変更による引き継ぎを行ったりする場合は、連続移転を使って進めていきます。
具体的な取り組みとしては、定期的なミーティングの開催が推奨されています。チーム内でディスカッションする機会を設けることで、暗黙知も伝わりやすくなります。
近接移転
近接移転は、別の業務や組織で生かせるノウハウを共有する方法です。たとえば、営業で使用する情報共有のツールを、カスタマーサポートでも活用するといったケースが近接移転に該当します。基本的には、スキルを伝達する先の業務が伝達元と似ていることが前提となります。
専門知移転
専門知移転は、専門的なノウハウを従業員に共有する方法です。専門知は活用できる場が限定されますが、移転が進んでいないと企業に損失をもたらす恐れがあります。勉強会や講習などを開き、質疑応答や議論の場を設けると、組織全体のスキルアップが見込めます。
遠隔移転
遠隔移転は、感覚的な内容や暗黙知を共有する方法です。近接移転と似たパターンですが、遠隔移転は非定型的業務の移転時に使われます。移転するスキルは暗黙知が中心となるため、直接会って打ち合わせをしながら継承していきます。
戦略移転
戦略移転は、活用する頻度の低い非定型業務を共有する方法です。代表的な事例としては、M&Aに関するノウハウなどが挙げられます。直接的にM&A業務に関わる従業員は少なく、ノウハウが属人化しやすいため、積極的に移転を進めていかなければなりません。
スキルトランスファーに成功するためのポイント
スキルトランスファーを成功させるためには、企業側が念入りに準備し、現場の従業員の負担を減らすことが大切です。ここでは、スキルトランスファーに成功するためのポイントを5つ紹介します。
経営主導で進める
スキルトランスファーを成功させるためには、経営層が主導することがポイントです。経営主導で進めることによって、スキルトランスファーの重要性を広く周知できます。現場に任せてしまうとチームによる差が生じやすくなるため、各部門にスキルトランスファーのリーダーを置くなどして、全社的な浸透を図りましょう。
スキルトランスファーの対象範囲を決める
ノウハウを移転する範囲を明確にすることで、スキルトランスファーがスムーズに進めやすくなります。対象範囲は、ノウハウの価値や汎用性などを考慮したうえで決めていきましょう。トップダウンで判断するのではなく、現場の意見を反映しながら範囲を決めていくと、従業員が当事者意識を持って移転に取り組みやすくなります。
環境を整備する
企業側は、従業員がノウハウを移転しやすいよう、環境を整えなければなりません。スキルトランスファーを円滑に行うためのマニュアル作成や、必要に応じてツールの導入なども検討します。ツールを導入する際は、ノウハウの蓄積だけでなく、検索性の高いものを選びましょう。
従業員をフォローする体制を構築する
ツールでの共有が難しい暗黙知については、対面での打ち合わせが効果的です。一方で、従業員がノウハウの共有に抵抗を感じるケースも少なくありません。特に、ノウハウを教える側は「苦労して身につけたノウハウを簡単に人に教えたくない」と考えてしまいがちです。
企業は従業員をフォローする体制を構築しつつ、状況に応じて評価方法も見直す必要があります。
専門企業による研修を受ける
専門企業による研修を受けることで、スキルトランスファーに関する理解が深まります。各部門から数名を選出し、研修に参加できれば、企業として共通認識を持ってスキルトランスファーに取り組めます。自社に適したスキルトランスファーの手法が学べる点も、専門企業の研修を受講するメリットです。
まとめ
スキルトランスファーを導入することで知識の属人化を防ぎ、人材育成を効率化できます。自社に適した方法で知識やノウハウを共有し、生産性の向上や従業員のスキルアップを目指しましょう。
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