ジョブクラフティングとは?具体的な方法や手順、メリットなどを徹底解説
従業員のモチベーションを上げるための手法として注目されているのが、ジョブクラフティングです。価値観の多様化やモチベーションの把握の難しさが課題となっている今、組織にとって望ましい環境を築く手法としても重要視されています。この記事では、ジョブクラフティングや意味、注目されている背景などについて解説します。メリットや活用方法も合わせて解説しているので、参考にしてみてください。
目次[非表示]
ジョブクラフティングとは
ジョブクラフティングは、従業員が仕事を自らの意識で再構築して、やりがいを見出す手法です。与えられた業務をこなすだけの受け身な姿勢から脱却し、自身の興味や意欲に基づいて取り組むことを重要視します。
なお、ジョブクラフティングは、管理学者であるAmy WrzesniewskiとJane E. Duttonが、2001年に提唱した概念とされています。
ジョブデザインとの違い
ジョブクラフティングは、従業員が自主的に仕事を再構築して、やりがいや満足度を高める手法です。ジョブデザインは、経営者が働きがいのある仕事を計画して、従業員に向けて発信・割り当てをします。ジョブクラフティングは従業員が主体となる一方、ジョブデザインは組織・上司が指示を与えるため、従業員が受け身の立場になります。
ジョブクラフティングが注目されている背景
ジョブクラフティングは、理由なく注目されている訳ではありません。ここからは、具体的な理由とそれぞれの詳細を解説します。
VUCA(ブーカ)時代の到来
VUCAとは、先行きが不透明かつ、将来の予測が困難なことを指します。近年では、経済やビジネス、個人のキャリアなどさまざまなシーンで使用され、ビジネスの世界に浸透している状態です。
昨今は技術の発展により、あらゆるものが複雑化しています。そして、物事の複雑化に伴い、将来の予測も困難になっています。ジョブクラフティングが注目されている理由は、このような状況を改善する手段として活用できるからです。
トップダウン方式の薄れ
従来の日本企業では、トップダウン方式による経営が主流でした。しかし、働き方の多様化や顧客ニーズの変化に伴い、トップダウン方式は成果を生み出しにくくなっています。
そのため、指示された作業をこなすだけではなく、付加価値を提供できるような方式が求められています。ジョブクラフティングが注目されている理由は、そういった需要に合致する可能性が高いからです。
従業員の価値観における多様化
昨今は価値観が多様化し、利益や効率の追求だけが求められる時代ではなくなりつつあります。特に、やりがいを重視する傾向が顕著になっています。
指示された仕事をこなすという考え方から、自らの意義やモチベーションを求める人が増えているためです。生産性向上には、主体的なモチベーションが不可欠です。それに伴い、従業員のやりがいや意義の追求も重要視されています。
ジョブクラフティングのメリット
ジョブクラフティングにはさまざまなメリットがあります。具体的なメリットとそれぞれの詳細は下記の通りです。
従業員のウェルビーイングにつながる
従業員のウェルビーイングにつながることが、ジョブクラフティングのメリットです。ウェルビーイングとは、身体や精神、社会的に良好な状態を指します。
ジョブクラフティングでは、自らの興味や能力に基づいた仕事に取り組みやすい環境で働けます。ストレス・不満が軽減されて仕事への満足度や幸福感が高まると、従業員・企業共に好影響を得やすいです。
従業員の自主性が向上する
指示されたからではなく、従業員が自ら仕事を再構築することで自主性が高まります。上司や組織の指示に依存しない姿勢は、従業員の成長や自己管理能力の向上につながります。
また、自ら考えて行動することはモチベーションの維持にも効果的です。指示された仕事を機械的にこなすのではなく、自分の意思で選択をするためです。
生産性が向上する
生産性が向上するのも、ジョブクラフティングのメリットとして挙げられます。従業員が主体的に仕事へ取り組んだり役割を果たしたりする姿勢は、モチベーションを高められます。
モチベーションが高い状態は作業効率を改善させやすく、生産性の向上にも効果的です。自己決定権を持って仕事を進めるため、より効率的な方法・プロセスの発見もしやすいです。
新しいアイデアが生み出されやすくなる
ジョブクラフティングでは、新しいアイデアが生み出されやすくなります。なぜなら、従業員が自らの仕事に、創造性やイノベーションを取り入れやすい環境になるからです。
新しい視点やアプローチは、問題の解決や既存の手法の改良につながる可能性があります。結果的に、組織全体のイノベーション力も向上しやすいです。
社内コミュニケーションが活性化する
ジョブクラフティングのメリットとして、社内コミュニケーションが活性化することが挙げられます。ジョブクラフティングでは、従業員が自らの仕事に関心を持ちやすいです。そのため、仕事を効率的にこなしたり、生産性を向上させたりする手段を探します。
手段を模索することは、他のチームメンバーや部署と、積極的にコミュニケーションを取るきっかけになります。
ジョブクラフティングのデメリット
適度なプレッシャーは効果的ですが、過度にジョブクラフティングを行うと逆効果になりかねません。仕事の負担が増えすぎて対応しきれなくなり、燃え尽き症候群を引き起こす可能性があります。
他にも、成果が出ないことに従業員が焦りを感じ、パフォーマンスが落ちることも懸念点です。従業員がプレッシャーを感じないように、適切な配慮が求められます。
ジョブクラフティングを実践する方法
ジョブクラフティングを実践する際は手順が重要です。ここからは、4つの手順とそれぞれの詳細を解説します。
1.業務内容を把握する
突発的にすべての業務にジョブクラフティングを適用しても、効果は期待できません。現在の業務の種類・状況や、関わる人物を抽出して、ジョブクラフティングの対象となる業務を決めます。
また、ジョブクラフティングの本質は自己に合わせることです。そのため、従業員それぞれのやりたくない仕事や、苦手な業務を考慮して選定しましょう。
2.自己分析をする
業務内容を把握できたら、自己分析をしましょう。把握するべきなのは、自分が得意とすることや経験が豊富なことなどです。
1人で分析するのが難しい場合は、従業員同士のインタビューも効果的です。客観的な視点で自己分析を行い、強みや価値観を洗い出します。
3.具体的なアプローチを検討する
対象となる業務や、自身の強み・価値観が把握できたら、それらを参考に具体的なアプローチを検討します。
対象業務を主体的に捉え直したり、実践しながら改善を繰り返したりすると有効です。また、業務に伴う人間関係を見直す機会も設けましょう。
4.実践と振り返りをする
行動計画を立てたら実践に移りましょう。しかし、計画を行動に移して実践するだけでは効果的ではありません。
一定期間後に成果を振り返り、良かった点や悪かった点を把握しましょう。また、周囲からのフィードバックがあれば、次回のジョブクラフティングの参考として活かせます。
ジョブクラフティングを取り入れる際の注意点
ジョブクラフティングを取り入れる際は、いくつかの注意するべき点があります。以下は、具体的な注意点とそれぞれの詳細です。
仕事が属人化しないようにする
ジョブクラフティングで陥りやすい状況として、仕事の属人化が挙げられます。業務を従業員それぞれに任せきりにせず、情報をまとめたり共有したりすることを促しましょう。
また、適切な範囲で業務に取り組んでいるか上司が確認することでも、属人化を防ぐ効果が期待できます。
従業員が主体的に力を発揮する場をつくる
従業員が主体的に力を発揮するためには、環境を整えることも重要です。従業員が自主性を持っていたとしても、それらを評価しない状況では意味がありません。個人のアイデアを尊重したり、命令・指示を出したりせずに自主性を促しましょう。
上司からの押しつけがないよう留意する
ジョブクラフティングにおいて重要なのは、従業員それぞれの自主性です。そのため、上司が業務改善の方法を提案したり、従業員のやり方を否定したりしないように留意しましょう。
コミュニケーションを通して従業員の考え方を把握したうえで、手段・方法が効果的になるような指導をしましょう。
ジョブクラフティングを生かせる場面を選択する
ジョブクラフティングはどんな場面でも有効という訳ではありません。特に、チームワークが必要な場面では効果を発揮しにくいです。
しかし、個人主義が発揮しやすいシーンではジョブクラフティングは効果的です。ジョブクラフティングは活用する場面を選び、適切な指導とバランスを保つようにしましょう。
まとめ
価値観の変化や時代の変遷と共に、企業における従業員の在り方も変わってきました。特に、昨今は企業を取り巻く環境の変化が激しいこともあり、組織として柔軟な対応が求められています。
しかし、どんな手法を取るにしても、従業員のモチベーションが低いと効果を発揮することは難しくなります。
リンクアンドモチベーションは、世界初のモチベーションにフォーカスを当てた、組織人事コンサルティングサービスを提供しています。従業員のモチベーションを高めたり、改善したりしたいと考えている企業の担当者の方は、ぜひ下記より確認してみてください。