人材育成で大切なこととは?考え方や重要な理由から具体的な方法まで詳しく解説
人材は企業の将来を担う存在です。そして、企業が成長するためには人材の育成が必要不可欠です。しかし、人材育成を始めようとしても、適切な進め方が分からない企業も少なくありません。
この記事では、人材育成の手法や取り組む際の注意点などを解説します。人材教育・人材開発との違いや、人材育成における大切なことなども解説しているので、参考にしてみてください。
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人材育成とは
人材育成は、従業員に業務上必要な知識・スキルを身につけさせたり、業務へ取り組む際のマインドを教育したりすることです。
従業員が優秀な人材となれば、企業の経営目標を達成しやすくなったり、競争力が向上して利益が増えたりします。そのため、企業が持続的に成長・発展するために、人材育成は必要不可欠な取り組みです。
人材教育や人材開発との違い
人材育成と似た言葉に、人材教育や人材開発があります。以下は、人材育成とそれぞれの言葉の違いです。
人材教育との違い
人材育成と人材教育は、どちらも従業員の能力向上を目的としています。しかし、焦点を当てている部分が明確に異なります。
人材育成の目的は、企業経営の目標達成に貢献できる人材を育てることです。一方、人材教育では、従業員に特定の知識・スキルを身に付けてもらうことを目標としています。
人材開発との違い
人材育成と人材開発の主な相違点は、対象とする従業員や実施期間です。人材育成は、経験の浅い従業員や管理職など、特定の層を対象として中~長期的に実施します。一方で、人材開発は個人や部署などに限らず、組織全体かつ短期間で取り組む傾向にあります。
企業にとって人材育成が必要な理由
人材育成が必要な理由は多岐に渡り、企業によっても理由は異なるため一律ではありません。しかし、どのような企業でもおおよそ共通している理由もあります。代表的な理由は、以下の5つです。
・少子高齢化による人手不足
・企業を取り巻く環境の変化
・生産性の向上
・優秀な人材の流出防止
・企業理念や方針の浸透
人材育成の現状と課題
人材育成における現状および課題として、人材育成に充てる時間を確保しづらいことが挙げられます。
厚生労働省が行った調査によれば、全体の53.5%の従業員が業務の多忙さによって、人材育成に必要な時間を確保できないと回答しています。業務配分を見直す際は人材育成も業務として認識したうえで、適切に計画を立てることが大切です。
※参照:平成30年版 労働経済の分析|厚生労働省
人材育成の3つの手法
人材育成における手法はいくつかあります。ここからは、代表的な3つの手法とそれぞれの詳細を解説します。
OJT
OJTは「On the Job Training」の略で、実際の業務を通じて部下を直接的に指導・育成する手法です。日本では、職場内訓練や職場内教育、職場内指導などとも呼ばれます。
日本企業では、社内における上司と部下の関係が密接な傾向にあります。そのため、日常的かつ的確に指導・育成・評価などがしやすいことが特徴です。
Off-JT
Off-JTは、知識やスキルの習得を目的として、特別に用意された場所・時間を通じて学習を進める手法です。正式名称は「Off The Job Training」であり、日本では職場外研修とも呼ばれます。
体系的なスキルを学べる場であり、業務の効率や生産性を上げるために貢献します。また、短期間で効果を実感しやすい傾向にあるのも特徴です。
自己啓発
自己啓発とは、自主的に学習の機会を創出することです。具体的には、読書や資格取得などの知識・スキルを向上させるための活動が該当します。
人材育成においては、従業員の自己啓発を支援する方法もおすすめです。たとえば、書籍の購入を支援したり、資格取得までの過程をサポートしたりします。
人材育成で使えるフレームワーク
人材育成を効果的に進めたい場合は、フレームワークを活用しましょう。以下は、人材育成で使えるフレームワークとそれぞれの詳細です。
HPI
HPIとは、成果達成までのプロセスを明確にしたうえで、企業の持つ資源を活用して解決まで導く流れのことで、正式名称は「Human Performance Improvement」です。人材育成の枠組みでは、組織として目指す状態を特定し、現状との差異を改善することに焦点を当てます。
SMARTの法則
SMARTの法則は、目標の具体的な設定に活用できるフレームワークです。目標が具体的になれば、達成までに必要なプロセスの制度も向上させられます。SMARTのそれぞれの詳細は以下の通りです。
・Specific:具体的かつ分かりやすい
・Measurable:計測可能
・Achievable:達成可能
・Relevant:関連性の高い
・Time-bound:期限が明確
「70:20:10」の法則
70:20:10の法則は、個人の能力開発における影響度合いを示すフレームワークです。ロミンガーの法則とも呼ばれます。
人材教育における70:20:10の法則は、7割が業務経験、2割が指導、1割が研修の割合とされています。人材の成長に必要な要素と、それぞれの効果が発揮される割合を意識して活用しましょう。
階層別に人材育成を行う際のポイント
人材育成を行う際のポイントは階層ごとに異なります。階層ごとのポイントとそれぞれの詳細は、下記の通りです。
新入社員
新入社員の育成は、早期退職の防止を意識して取り組むことが大切です。自社の経営理念や組織構造などを理解してもらい、帰属意識を向上させることが有効な手段となります。
また、指導の際は新入社員の視点に立つことを意識しましょう。丁寧な指導は新入社員のメンタルにも負担をかけにくく、定着率の向上につながります。
中堅社員
中堅社員の育成においては、組織の中枢を担う人材であることを自覚させるのが効果的です。また、中堅社員は数年間同じ会社に勤めている関係上、マンネリ化してモチベーションが低下している可能性があります。
そのため、育成担当者や管理職候補として、新たなスキルを身に付ける機会を提供しましょう。新たな学びは、マンネリ化を防ぎモチベーションを回復させることにつながります。
管理職
管理職は、経営理念に基づいた行動や、他の従業員をマネジメントして目標達成に導く役割を担っています。これらの能力・スキルを向上させるために、組織論や経営論に関する知識を習得させましょう。組織論や経営論に関する知識の習得には、社外研修や各種研修プログラムの実施・提供がおすすめです。
人材育成において求められるスキル
人材育成において求められるスキルは多岐に渡ります。ここからは、求められるスキルとそれぞれの詳細を解説します。
コミュニケーションスキル
人材育成において重要となるスキルの1つが、コミュニケーションスキルです。育成を進めるにあたり、担当者と育成対象者の信頼関係は重要視されます。
なぜなら、担当者が効果的な指導をしても、コミュニケーションスキルが低ければ育成対象者が聞き入れてくれない可能性があるためです。双方の間で情報を正確にやり取りするためにも、コミュニケーションスキルは大切です。
現状把握・目標設定スキル
現状を適切に把握して、適切な目標を設定できるスキルが人材育成では求められます。まず理想と現状のギャップを確認し、その差異を埋めるための方法・手段を見つけることが必要です。
そして、個人の性格や能力を考慮して、理想の状態へと辿り着くための適切な目標を設定します。一連の流れをこなすには、現状把握と目標設定のスキルが必要不可欠です。
人材育成に取り組む際の注意点
人材育成に取り組む際は注意するべき点もあります。以下は、具体的な注意点とそれぞれの詳細です。
育成担当者のスキル不足をそのままにしない
人材育成を円滑かつ効果的に進めるためには、育成担当者のスキルが欠かせません。必要なスキルが欠けたまま育成を進めると、育成担当者・育成対象者の両者に悪影響が出かねないため注意しましょう。
人材育成は企業によって重要な課題です。そのため、育成担当者の継続的な成長を促したり、スキル獲得をサポートしたりしましょう。
従業員が意欲を持たなければ効果は得られない
人材育成プログラムや研修が優秀だとしても、対象となる従業員が意欲を持って取り組まないと、十分な効果は得られません。
また、モチベーションが低下している人がいると、周囲にも悪影響を及ぼしかねないため注意しましょう。特定の誰かが取り組んでいない状況を見て、自分も取り組まなくてよいと判断してしまうためです。
明確な目標を設定せずに始めない
人材育成において失敗する原因は、育成担当者・メンバー間で明確な目標が設定されていないことにもあります。
目標が曖昧なままでは、獲得・向上したいスキルが分からず、適切なプロセスの計画が難しくなります。また、パフォーマンスの向上のためのアクションも取りづらいです。
人材育成に取り組むうえで大切なこと
人材育成に取り組むうえで大切なことはいくつかあります。ここからは、具体的なポイントとそれぞれの詳細を解説します。
目標・ゴールを明確にする
育成担当者や対象者がどのような状況・状態になりたいのかを、明確にしておくことは大切です。具体的な目標やゴールが設定されていると、逆算して適切なプロセスも組みやすくなります。
逆に、目標やゴールが曖昧だと問題の発見が遅くなりがちです。結果として、適切な対応やサポートができず、事態が悪化する恐れがあります。
経験・能力・やる気を把握する
人材育成を効果的にするためには、相手のことを理解したうえで適切な対応を取ることが大切です。なかでも重要視するべきなのは、経験・能力・やる気の3点です。
相手のプロフィールを確認したり、実際にコミュニケーションを取ったりして、経験・能力・やる気の程度を把握しましょう。
自分自身も成長する
人材育成という観点においては、育成対象者に限らず育成担当者も共に成長することが望ましいです。
育成担当者自身が成長すると、人材育成をより効果的かつ円滑に進められます。また、さらに重要なポジションへの挑戦につながったり、全体の組織力の強化にも貢献できたりします。
まとめ
人材育成は企業の継続・発展という観点から重要な取り組みであり、適切かつ効果的に実施することが望ましいです。
しかし、優秀なプログラムや研修を用意しても、対象者の意欲がない状態では十分な効果を発揮できません。そのため、従業員のモチベーションを向上させることが大切です。
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