MBOとは?混同されがちなOKRとの違いやメリット、デメリットなどを詳しく解説
MBOとはボトムアップ方式の目標設定方法のことを指します。従業員が自ら目標を設定することが特徴であり、従来の会社・上司などからの指示で決める方法とは異なります。近年、日本企業においての導入率も高くなっており、注目されている手法です。この記事では、MBOについて解説します。
KPIとの相違点や、MBOを導入するメリット・デメリットなどについても解説しているので、参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.MBO(目標管理制度)とは
- 2.OKRやKPIとの違い
- 3.MBOを導入する5つのメリット
- 4.MBOを導入する3つのデメリット
- 5.MBOの進め方
- 6.MBOを成功させるコツ
- 7.まとめ
MBO(目標管理制度)とは
MBOは、著名な経営学者であるP.F.ドラッカーが、「現代の経営」という本の中で導入した概念です。正式名称は「Management by Objectives and Self Control」です。日本語では、目標管理制度とも呼ばれます。
MBOの特徴は、従業員が自ら目標を設定する点です。従来の、会社や上司からの指示で目標を設定する方法とは異なる、ボトムアップ方式の目標設定方法です。
近年の日本企業ではMBOの導入率が高くなっている
近年、日本企業におけるMBOの導入率は上昇している傾向にあります。データとしては、労務行政研究所が2022年の2~5月にかけて行った調査「人事労務諸制度の実施状況調査」が証明しています。
実に、日本の企業の78.4%が目標管理制度を導入している状況です。成果主義の人事制度が注目されるなかで、結果を重視するMBOを合わせて取り入れる企業が多かったことが要因として挙げられます。
※参照:人事労務諸制度の実施状況調査|労務行政研究所
M&AにおけるMBO(マネジメントバイアウト)とは異なる
MBOという言葉は、M&Aの領域においても使われる言葉です。しかし、こちらのMBOはマネジメントバイアウトの略であり、大企業の事業拡大や中小企業の事業承継を目的として取られる手法です。
目標管理におけるMBOとは意味が異なります。どちらもビジネスシーンで用いられる言葉ですが、混同しないように注意しましょう。
OKRやKPIとの違い
MBOと混同されやすい言葉として、OKRやKPIが挙げられます。それぞれの言葉の相違点は以下の通りです。
MBO |
OKR |
KPI |
|
目標の単位 |
個人・グループ |
部署 |
個人・グループ |
性質 |
定量的 |
定量的・定性的 |
定量的 |
さらに、それぞれの言葉とMBOの相違点について、詳細に解説します。
OKRとの違い
MBOとOKRの違いは、人事評価への反映の有無です。MBOは、組織内における従業員の役割を明確にします。そして、個々の貢献度を考慮して一定の人事評価へと反映させます。
一方、OKRが対象とするのは、従業員個人に留まらず組織全体です。あえて達成が難しい目標を設定することで、個人と組織に飛躍的な成長を促します。そして、結果が出たとしても、従業員の人事評価へは直接的に反映させません。
KPIとの違い
MBO とKPIは、目標の性質という点で異なっています。MBOが定性的目標と定量的指標を組み合わせる一方、KPIが指すのは定量的な指標のみです。
MBOでは定性的な目標を1つ決めた後、その目標を基準として定量的な指標を複数作成します。KPIは、まず最終目標を確立して、達成に向けた具体的なプロセスや目標を数値で示します。
MBOを導入する5つのメリット
MBOを導入するとさまざまなメリットを得ることが可能です。以下では、代表的な5つのメリットを解説します。それぞれの詳細についても解説するので、参考にしてみてください。
1.従業員が成長しやすい
MBOでは、目標の設定や達成に必要なプロセスの管理を従業員自らが行います。そのため、自己管理能力が向上したり、目標達成のための工夫・努力の考案などが促進されたりして、従業員が成長しやすいです。
上層部が与えた目標を達成しようとすると、従業員は受動的になりがちです。しかし、自主的に努力ができれば、業務効率化や高度なスキルの習得も期待できます。
2.従業員の主体性やモチベーションの向上
MBOにおける主役は、従業員それぞれです。そのため、個人の自主性・自立性が促進されて、主体性やモチベーションが向上しやすくなります。
与えられた目標やプロセスをこなすだけでは、受動的になって成長の実現は難しい傾向にあります。しかし、MBOでは目標設定から達成に必要なプロセスまで、従業員の管理範囲です。自らを管理する経験を得られることも利点です。
3.人事評価に対する納得感が高まる
MBOにおける人事評価は、透明性・納得感が高い傾向にあります。なぜなら、従来の情緒的な評価やプロセス評価と比べて、評価者の主観が少ないためです。
MBOでは目標の達成の有無や進捗状況が可視化されているため、客観的に評価がしやすいです。また、評価に対する根拠が確認しやすいため、不適切な評価や不満を持つような事態が起こりにくいのも利点となります。
4.目標に対する対策が具体的にイメージしやすい
課題達成型のMBOであれば、設定された目標をより詳細に分解して、現状を鑑みた具体的な行動計画を立てやすくなります。具体的な行動計画が立てられれば、目標達成に向けた効果的な施策も考案しやすいです。そのため、業務を円滑にこなしたり、効率的に過程を進めたりできます。
5.人材育成につながる
MBOは、目標の設定や目標達成のための過程を従業員それぞれに考案・管理させます。そのため、与えられた業務をこなすだけの受動的な人材に育ちにくいことがメリットです。
自ら考えて行動に移せる人材は、能動的であり企業に貢献してくれる可能性が高まります。そのため、人材育成という側面においても、MBOを導入するメリットがあります。
MBOを導入する3つのデメリット
メリットの多いMBOですが、デメリットも発生しかねないため注意が必要です。以下で、MBO導入に伴う具体的なデメリット3つとそれぞれの詳細を解説します。
1.難易度の低い目標を設定してしまう
MBOを導入すると、従業員の目標のレベルに差が生じやすくなります。なぜなら、目標を従業員自ら設定する性質上、難易度の低い目標を設定してしまうこともあるからです。
目標の達成度で評価するMBOにおいては、意図して難易度の目標を設定した方が、見かけ上の達成度は高くなる傾向にあります。従業員の自己申請だけで目標を決めていると、適切な評価ができない事態にもつながりかねないため、注意しましょう。
2.従業員によってはモチベーションの維持が難しい
MBOは結果重視の評価方法です。そのため、実際に結果が出るまでの期間において、モチベーションを保つのが難しい場合があります。
また、数値のみを評価の指標にしてしまうと適切な評価が難しくなりがちです。相手の都合で目標を達成できなくなった場合、それまでの過程がまるごと評価されなくなります。そのため、進捗状況の程度や、結果に影響を与えるプロセス・アクションなども評価することが大切です。
3.従業員の不満が増す恐れもある
MBOを導入しても、上位組織が目標を設定してしまうと、従業員の不満が増す可能性があります。従業員個人の意思を尊重しきれていない可能性が高く、不適切な目標やノルマを課してしまう場合があるためです。
MBOでは、目標の達成よりも従業員が自発的に目標を設定することが重要視されます。MBOを導入する目的や意味を間違えないようにしましょう。
MBOの進め方
MBOを効果的に進めたい場合、適切な順序に則ることがおすすめです。ここからは、MBOの効果的な進め方と、それぞれの順番における詳細を解説します。
1.目標を設定する
MBOを実践する際は、目標設定から始めましょう。MBOを通して成果を出したり、個々の成長を促したりするには、適切な目標設定が不可欠だからです。
まずは従業員それぞれの目標を設定してもらいます。その後、上長が内容を確認して適切かどうか判断したり、従業員とすり合わせたりしましょう。
2.目標達成に向けたアクション
目標が決まったら、目標の達成に必要な過程・行動などを決めます。目標が明確でも、プロセスが曖昧では達成が難しくなるからです。
目標達成の期限から逆算して、必要となるアクションを明確にしましょう。また、他のメンバー・部署などの目標も加味して、目標の横並び調整などをするとより効果的です。
3.進捗を確認する
MBOでは目標設定と結果評価が重要視されがちですが、目標達成までのプロセスも大切です。そのため、目標達成までの期間中における、フォローアップも怠らないようにしましょう。
また、目標達成を促進することも大切です。たとえば、定期的に面談を実施して進捗状況を確認したり、必要に応じてサポートを提供したりするなどです。
4.結果を評価する
設定していた期間が終わったら、結果の評価に移ります。なお、結果評価のプロセスについても、目標設定と同じように各メンバーが自己申告します。
自己申告においては、達成度の程度と根拠も申請してもらうのが望ましいです。マネジメント側は、それらの情報を参考にして総合的な評価をしましょう。
MBOを成功させるコツ
MBOを成功させるコツはいくつかあります。以下で詳しく解説します。
自発的に目標を設定してもらう
与えられた目標を達成するだけでは、受動的となってしまいモチベーションも保ちにくいです。そのため、自発的に目標設定をしてもらい、従業員のモチベーションを高めましょう。
この際、上長が根拠なく否定したり意見を主張したりしないように注意しましょう。自主性を尊重することが重要なためです。
組織の目標につながる内容にする
設定してもらう目標は、組織全体の目標達成にもつながるような内容にしてもらいましょう。従業員それぞれの成長・利益も重要ですが、あくまで組織に属する人間として動くためです。目標の内容が個人の成長・利益にしかならず、組織にとって無益な場合は、別の目標に変えるように指示しましょう。
客観的に評価できる目標を設定する
目標を客観的に評価できないと、さまざまな弊害が発生します。たとえば、目標達成に向けた行動が分からなかったり、進捗状況を把握しづらくなったりするなどです。
そのため、数字を用いて定量的に表せることが理想的です。定量的に表すことが難しい場合でも、主観的ではなく客観的な評価できるように意識しましょう。
まとめ
MBOの概要やOKR・KPIとの違い、MBOを導入するメリット・デメリットなどを解説しました。MBOに限らず、従業員のモチベーションを上げる施策は重要視されています。なぜなら、業務の効率化や生産性の向上などにつながり、組織の発展にも貢献するためです。
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