テレワークのメリット・デメリットとは?導入手順やデメリットの解消法まで徹底解説
テレワークとは、デジタルテクノロジーを活用した、場所・時間にとらわれない柔軟な働き方のことを言います。
テレワークは、働き方改革の推進によって注目されるようになり、新型コロナウイルスの感染拡大によって一気に導入する企業が増えました。
今回は、テレワークの種類のほか、企業・従業員にとってのメリット・デメリット、テレワークの導入手順や成功事例などについて解説していきます。
▼【人事制度設計・運用のポイント】が分かる資料はこちら
テレワークを導入するメリット
テレワークを導入する主なメリットについて、企業側のメリットと従業員側のメリットに分けてご説明します。
企業のメリット
従業員満足度の向上
テレワークの導入によって、場所や時間を選ばない働き方が実現します。出社か在宅勤務か、もしくはカフェなどでの仕事か、ライフスタイルに合わせて働き方を選べるようになると従業員のワークライフバランスの向上につながります。結果として、従業員満足度の向上も期待できるでしょう。
コスト削減
テレワークの導入によって在宅勤務者が増えれば、そのぶん、オフィススペースに余剰が生まれます。そうなれば、オフィスの縮小によって賃料や光熱費などを削減することも可能です。また、従業員の交通費も削減することができます。
生産性の向上
テレワークの導入によって時間や場所を選ばない働き方ができるようになると、従業員は通勤時間を削減できるほか、通勤によるストレスからも解放されます。そのため、より意欲的かつ効率的に仕事に取り組めるようになり、生産性の向上も期待できます。
従業員のメリット
場所を気にせずに働ける
従業員にとってテレワークの大きなメリットは、場所を気にせずに働けることです。どこでも仕事ができるため、たとえば、育児がしやすい地方で働いたり、地元にUターンして働いたりすることも可能です。
通勤時間を削減できる
テレワークの導入によって通勤時間を削減できれば、その時間を趣味の時間や家族との時間に充てることができます。また、通勤によるストレスが軽減されるのも大きなメリットだと言えるでしょう。
プライベートと両立しやすい
テレワークの導入によって在宅勤務が可能になれば、仕事とプライベートを両立しやすくなります。家事や育児、介護を理由に退職する従業員も減るでしょう。
テレワークを導入するデメリット
テレワークの導入によって考えられるデメリットについて、企業側のデメリットと従業員側のデメリットに分けてご説明します。
企業のデメリット
情報漏洩のリスクが高まる
テレワークを導入することで情報漏洩のリスクが高まるため、セキュリティ対策が不可欠です。物理的なセキュリティ対策はもちろん、社内でのルール策定や従業員のセキュリティ意識向上にも取り組む必要があります。
労働実態の把握が難しい
テレワークを導入することで、従業員の労働時間や勤務態度、タスクの進捗などを把握しにくくなります。そのため、勤怠管理システムやタスク管理システムの導入や、コミュニケーションツールを活用した作業報告などが必要になります。
チームワークが低下するおそれがある
テレワークを導入することで従業員同士のコミュニケーションが希薄になり、情報共有が滞ったり、認識違いが増えたりします。出社して働く場合に比べると、コミュニケーションに距離感が生まれるため、結果的にチームワークが低下してしまうことがあります。
従業員のデメリット
自己管理ができていないと作業効率が下がる
テレワークによって通勤時間が削減され、作業効率が向上する従業員がいる一方で、自己管理ができていないとプライベートとの境目があいまいになり、集中して仕事ができず、逆に作業効率が下がってしまう従業員もいます。
孤独を感じやすい
テレワークでは、Web会議システムやメール、チャットを使ったコミュニケーションがメインになります。オフィスで自然におこなわれていた気軽なコミュニケーションが減ることから、孤独を感じる人もいるようです。
不公平感が生まれやすい
職種や業務内容によってはテレワークができない従業員もいます。このような場合、テレワークができない従業員からだけでなく、テレワークをしている従業員からも「不公平だ」「正しい評価がされない」といった不満が生まれることがあります。
テレワークのデメリットを解消する対処法とは?
テレワークのデメリットを解消する対処法についてご説明します。
テレワークのルールを決める
テレワークには、個々の従業員の行動や成果が見えにくいというデメリットがあります。このデメリットを解消するためには、テレワークを導入する際のルールづくりが不可欠です。たとえば、チャットで業務開始・終了の報告をしたり、週次で報告書を作成するなど、短いスパンで従業員の行動や成果を確認できる仕組みをつくりましょう。
ただし、あまりにも細かいルールを設けると「マイクロマネジメント」に陥り、従業員のモチベーション低下を招いてしまうことがあります。マイクロマネジメントに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
>> マイクロマネジメントとは?増加理由や従業員に及ぼす影響を解説
→マイクロマネジメントからの脱出方法
上司が果たすべき役割を理解する/上司の意識を改革する/部下の主体性を育む/部下に権限を委譲する/メンバーマネジメントの時間を決める
最適なツール・システムを導入する
テレワークをおこなうためには、様々なツール・システムを導入する必要があります。詳しくは後述しますが、テレワークでよく用いられるツールとしては、Web会議システムやビジネスチャットツール、グループウェアや勤怠管理ツール、ファイル共有ツールや電子契約ツールなどがあります。
もちろん、すべてが必要になるわけではありませんが、自社に最適なツールを導入して、円滑にテレワークができる環境を整えることは重要です。
評価基準を明確にする
テレワークでは、個々の従業員の行動や成果が見えにくいため、従来どおりの評価制度では適正な評価ができなくなる可能性があります。また、テレワークをしている従業員と、出社して働いている従業員との間で評価にギャップが生まれてしまうことも考えられます。
このような事態を避けるためには、テレワークを考慮した評価制度を設けるのが得策です。できるだけ明確な評価基準を定め、従業員の納得を得たうえでテレワークを導入するようにしましょう。
一方で、評価制度をどれだけ精緻に設計したとしても、全ての環境要因や例外に対応することは出来ません。
逆に、評価制度という仕組み上の制約や現実とのギャップによって、納得感は低下してしまいます。
メンバーの納得感を高めるためには、適度に精緻な制度の設計に加えて、
- 上司による密なコミュニケーションと事実収集
- 上司の意思による決断
が鍵になります。
なぜならば、人が人を評価するうえで絶対的な正解はないからです。だからこそ、上司と部下の間で目標設定で明確なハードルを設定すること、そのハードルを元に評価をしていくことが重要になります。
そこで納得感のある評価をするためには、普段から「頑張った事実」の収集が肝要であり、事実収集にはコミュニケーションが不可欠となります。
参考:人事制度における評価者が持つべき観点
セキュリティ対策をおこなう
テレワークを導入する際は、情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策が不可欠です。会社レベルでセキュリティ体制を構築するのはもちろん、個々の従業員レベルでのセキュリティ対策も欠かせません。
従業員のセキュリティ意識を高めるとともに、会社の情報にアクセスする方法や権限、会社の情報を持ち出す際のルールなどを明確にするようにしましょう。
コミュニケーションを促進する
テレワークではコミュニケーションが希薄になりがちなので、「今までだったら気軽に相談できたことも相談できない」「以前より一体感・連帯感が低下した」「業務時間中に気分転換ができない」といった悩みも聞かれます。
このようなデメリットを解消するには、社内SNSやチャットを使ってフランクなコミュニケーションを促したり、Web会議システムでのミーティングの前に雑談の時間を設けたり、小さなことから工夫をしてみることが大切です。
その他、テレワークで生じがちな課題については、以下の記事でも詳しく解説しています。
※参考: テレワーク(リモートワーク)下のマネジメントの課題とは?
※参考: 在宅勤務(テレワーク)で増加した人事課題の解決策とは?
→階層間の意思疎通のギャップ解消例
テレワークの導入による成功事例
最後にテレワークの導入に成功している企業の事例をご紹介します。
事例①株式会社イトーキ
株式会社イトーキでは、勤続6ヶ月以上で本人が希望し、上長が認めた従業員にテレワークを適用しています。実施者数は1,580名で、実施日数の平均は月4~8回(週1~2回)程度です。
同社のテレワークの特徴の一つが、テレワーク勤務時もPCと連携した勤怠管理システムにより、サービス残業や長時間労働が発生しないように勤怠管理を実施していることです。また、集合型研修や各種説明会を、場所や時間にとらわれずに受講できるリモート開催へ切り替えています。
テレワークの導入によって、以下のような効果が生まれています。
- 研修受講者の顔が見える形での講義や、グループワークの効果的活用、意思疎通を図りながら議論を深められるプログラムの導入により、研修への意欲を落とさず、参加しやすく、また集中できる環境が整備された。
- 場所や時間にとらわれず、自身のワークスタイルに合わせて研修や説明会に参加できるようになった。
- 毎日出社せずとも仕事のできる業務が増えたことで、転居を伴わない異動の実現(単身赴任の削減)に寄与している。
事例②株式会社ダッドウェイ
株式会社ダッドウェイでは、直営店舗/アフタースクールスタッフ以外の全社員を対象にテレワークを導入しています。実施者数は160名で、実施日数の平均は月8~12回(週2~3回)程度です。
同社は、「出社時以上のコミュニケーションと効果を出そう」「私生活を充実させていこう」「ウイルス予防・災害対策を徹底しよう」という3つの指針を掲げ、在宅勤務と時差出勤制度をベースとしたテレワークを導入しました。
テレワークの導入によって、以下のような効果が生まれています。
- 癌などの病気治療や介護、育児と仕事の両立がしやすくなった。
- 通勤時間が1時間以上ある社員のワークライフバランスが向上し、仕事に対する意欲が高まった。
- 家庭都合で遠方へ引っ越さなくてはならなくなった優秀な従業員の雇用を継続することができた。
- 1日の平均出社人数を40%削減できたことで、オフィスをワンフロア解約し、固定費の削減につながった。
※参考:令和3年度テレワーク先駆者百選 取り組み事例|総務省
▼【人事制度設計・運用のポイント】が分かる資料はこちら