エフィカシーの意味は?組織に与える影響や高めるための方法について
エフィカシーとは、平たく表現すれば「根拠のない自分自身に対する自信」です。
世の中の不確実性が高まり、明確な正解が見えない現代においては、自らの決断を信じ、正解にしていくことが求められます。
その際に、エフィカシーは大切な働きをします。
本記事では、エフィカシーの説明から、エフィカシーを高めるためのポイント、エフィカシーが組織に与える影響などを紹介します。
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目次[非表示]
エフィカシーとは
■エフィカシーの意味
エフィカシーとは、カナダ人心理学者アルバート・バンデューラが提唱した社会的認知理論の中核となる概念の1つです。
セルフ・エフィカシーと呼ばれることもあり、日本語では「自己効力感」と訳されることが多く、「自分がある状況において、必要な行動を上手く遂行できるか」に対する認知を指します。
バンデューラは、行動遂行の先行要因として結果予期と効力予期の2つで整理しています。
結果予期:ある行動がある結果を生み出すという推測のこと
効力予期:ある結果を生み出すために必要な行動をうまく行うことが出来るという確信のこと
エフィカシーとは、ある結果を生み出すために適切な行動を遂行できるという確信の程度、つまり自分が効力予期をどの程度持っているかを認知することを指します。
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■エフィカシーと自己肯定感との違い
エフィカシーと混同されやすいものとして、自己肯定感が挙げられます。
この2つの概念に関しては、どちらか一方のみが高いといった場合、思った結果をなかなか出せない、努力しても自身を持てないといったことが起こります。
結果、直面した課題に対して「自分が克服できそうだ」と思うことが難しくなります。
エフィカシーと自己肯定感は下記のように整理することができます。
エフィカシー:できると自分を信じられる力
自己肯定感:できても、できなくても、ありのままの自分を受け入れられる力
要は、エフィカシーは「自分自身の能力に対する評価」であり、自己肯定感は「自分自身の存在そのものに対する評価」ということができます。
成長のためには、エフィカシーと自己肯定感の双方を高めることが求められますが、本記事ではエフィカシーに焦点を当てて解説したいと思います。
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エフィカシーの3つのタイプ
■自己統制的自己効力感
簡単に言うと「自分ならできるはず」という気持ちであり、自己効力感の中でも最もスタンダードなタイプです。
一般的にエフィカシー、自己効力感という場合には、この自己統率的自己効力感を指すケースが多いです。
特に、高い壁に対してチャレンジするときに、自分自身で自分を制御するときに重要になります。 自分自身ができると信じられることで、たとえ挑戦の結果上手くいかないことがあっても、また出直そうと考えられるという特徴があります。
仕事においてステップアップしていく上では、時には自分の行動を制御して成長を続けなければいけないシーンも出てくるかと思います。 このようなシーンにおいて、この自己統制的自己効力感が役立つと言われています。
■社会的自己効力感
対人関係において役立つのが「社会的自己効力感」と呼ばれるものです。
簡単に言うと「自分なら仲良くなれるはず」とポジティブに考えられる気持ちを指します。
社会的自己効力感は、乳児期から児童期といった社会性がもっとも発達する時期に育まれると言われており、大人になってからも持続すると言われています。
両親や祖父母、兄弟姉妹や友人、近所づきあいなどといった人との関係性によって社会的自己効力感が育まれ、社会的自己効力感が高まると、他者に共感して寄り添うことができるようになります。
結果的に、社会的自己効力感が高い方は、人間関係に恵まれて周囲とトラブルを起こすことなく社会の中で立ちまわることができます。
■学業的自己効力感
学業に関する自己効力感に限定したものを「学業的自己効力感」と呼びます。 簡単に言うと「学べば理解できるはず」といった気持ちを指します。
学業的自己効力感は、勉強の成果によって育まれると言われており、学習や学業で目立った成果を残した人ほど、この感覚は強まる傾向があります。
また、高い学力を保持している人物は、自己効力感が高い傾向があり、学力に対して高い自己効力感があると、学習に対する満足度が高いということが分かっており、学習や学業と自己効力感には相関関係があると言われています。
学業的自己効力感が高いと、社会に出てからも常に新しいことを学んだり、身の回りのスケジュールやタスクを管理したりするときに役立つと言われています。
そのため、自らインプットを求められるシーンで役立つということができます。
エフィカシーが高い人の特徴とは
■高い目標を掲げることができる
エフィカシーは社会認知理論において、目標の高さに影響を与えるものとされています。エフィカシーが高い人ほど、「自分はもっとできる」と考えることができ、より高い目標を設定します。
更に、エフィカシーが高い人は、実際の行動・努力の自己管理も徹底して行うことができるため、逆境であっても努力を持続することができます。
高い壁があったとしても行動・努力を持続することで、自身のスキルも高まっていきます。
結果として、エフィカシーの高い人は優れた成果を上げやすく、そのフィードバック効果でさらに自己効力感が増していくという、ポジティブなサイクルを回すことができる特徴があります。
■当事者意識が強い
エフィカシーが高い人は目標を達成して結果を出すための自信があります。そのため、強い責任感や危機感を持って意欲的に行動することができると言われています。言い換えると、上手くいかなかったときに他責にしないという特徴があります。
失敗した時や壁にぶつかったときに、自分だったらできるはず、今の自分ができないのは、自分自身の現在の力量が足りていないからだという自責に立つことができるため、壁を乗り越えるために、進んで自らのスキルを高めようとします。
人は自らの力量よりも少し高い壁に対して挑戦し、乗り越える中で成長していくと言われています。 当事者意識が高いと、そもそも壁に挑戦するマインドや、壁を乗り越えるために自責で捉えることができるため、成長の角度を高めることができます。
■困難に立ち向かうことができる
エフィカシーが高い人は困難な状況に対しても、自分ならできるはずと、ひるまずに挑戦することができます。
近年は社会の不確実性も高まってきており、正解が見えにくい状況になっています。特に、新型コロナウイルスなどの影響により、今まで当たり前とされてきたこと、今までの成功パターンが通用しなくなってきているケースも散見されます。
このような、正解の見えにくい時代においては、自ら困難に立ち向かい、道を切り拓いていくことが求められます。今までの当たり前に縛られず、自分の能力を信じてやりきるその時に、高いエフィカシーが求められると言えるでしょう。
エフィカシーが高い人が企業に与えるメリット・デメリット
■エフィカシーが高い人が企業に与えるメリット
エフィカシーが高い人が企業に与えるメリットとしては、大きく3つ挙げられます。
1つ目は、高い業績をあげることができることです。
エフィカシーの高い人は、進んで困難な課題や、自分の力量を少し超えるような内容に対して挑戦することができます。
また、挑戦の過程で壁にぶつかったとしても、自ら乗り越えようと努力することができます。 結果として、エフィカシーが高い人は仕事でも高い業績を上げることができます。
2つ目は周りにいる人のモチベーションを上げられることです。
困難に立ち向かい、諦めずに努力する姿は、本人以外にとっても勇気となります。エフィカシーの高い人の頑張りが、周囲のモチベーション向上に繋がります。
3つ目は生産性を高めることができる点です。
エフィカシーが高い人は当事者意識を持ち、主体的に仕事に対して取り組むことができます。 他人任せではなく、自分でまずはやってみようとするため、周囲に不要な手間を掛けさせることが無くなります。
結果的に企業における生産性を高めることに繋がります。
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■エフィカシーが高い人が企業に与えるデメリット
上記のように、エフィカシーが高い人当人は高いパフォーマンスを発揮することができ、企業に対しても好影響を与えることができますが、周囲との関係性においては、逆にエフィカシーの高さが企業に対してデメリットを与えてしまうケースも存在します。
エフィカシーの高い人が企業にとってメリットとなるか、デメリットとなるかは、企業内の人間関係の良さが分岐点になるケースが多いです。
例えば、企業内における人間関係が良くない場合、エフィカシーの高い人が浮いてしまうということが起こりえます。
「何であんなに頑張っているのだろう」
「頑張ってもどうせ変わらないのにな」
「自分はあんな風に頑張れないや」
という周りの空気感ができてしまうと、エフィカシーの高い人と、そうでない人との間に温度差が生じます。
結果的に、エフィカシーの高かった人が、エフィカシーが低下するといったことや、エフィカシーが高い人が職場を去るといったことも起こりえます。
エフィカシーが高い人は、職場にとってポジティブな影響を及ぼすこともあれば、ネガティブな影響を及ぼすこともあることを意識する必要があるでしょう。
エフィカシーを高める方法
■成功体験を積む
エフィカシーを高めるためのポイントとしては、成功体験を積むことが挙げられます。
特に、苦手な作業を乗り越えたり、努力が報われたりした時に、印象深い成功体験としてエフィカシーの向上に役立つと言われています。
職場においては、部下のエフィカシーを高めるには、人材育成をする上司等が成功体験を積み重ねられる環境を用意することが効果的です。
成功体験を積ませる上では、部下の力量を踏まえた上で、力量よりも少し高い目標や課題を与えると良いでしょう。
その際に意識すべきポイントは、マイルストーンを引き、小さな成功体験を通じたスモールステップを感じさせることです。
■知識や情報を常に取り入れる
知識や情報を常に取り入れることもエフィカシーを高めるポイントとして挙げられます。新しい何かをインプットすることで、簡単に「知らなかった自分」から「知っている自分」という成長感を感じられる状況を作り出すことができます。
また、最新の知識や情報を入手した際には、自身のインプットのみならず、アウトプットさせてみることもエフィカシーを高めるポイントとして挙げられます。
実際に知ったことを相手に伝えてみることで、相手から評価してもらえることも多いと思います。 こうした、インプットとアウトプットを繰り返すことで、エフィカシーを高めることができます。
■エフィカシーが高い人と積極的に関わる
エフィカシーを高めるもう一つのポイントとしては、エフィカシーの高い人と関わることが挙げられます。 エフィカシーがなかなか高まらない人のポイントとして、エフィカシーが高い人の気持ちや考え方をイメージしにくいことが挙げられます。
エフィカシーが高い状態を知るには、エフィカシーが高い人との関りを増やし、エフィカシーが高い状態を知ることから始めてみると良いでしょう。
また、1on1や定期面談を通して、エフィカシーが高まるようにあと押しすることもポイントとして挙げられます。
ポジティブな人からの声掛けは、何らかの目標に挑戦する人材に失敗を恐れず頑張っていいという安心感を与えます。
まず、人間関係における安心感を醸成することが、エフィカシーを高めるきっかけになる場合も存在します。
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社員のエフィカシーを下げるNG行動
■大勢の前でのネガティブなフィードバック
意図せず、社員のエフィカシーを下げてしまうこともあるので、注意が必要です。エフィカシーを下げてしまうNG行動の1つに、大勢の前でのネガティブなフィードバックが挙げられます。
ネガティブな指摘や評価を大勢の前で伝えた場合、部下は“恥をかく”ことになります。結果的に、部下は自尊心が傷つき、エフィカシーが下がってしまうことがあります。
フィードバック自体はもちろん行ったほうが良いことではありますが、1on1で行うなど、その形式に注意を払うことがポイントです。
また、ポジティブなフィードバックが少ないこともエフィカシーを下げる原因になります。目標達成に真剣に取り組んでいる人ほど、自分の頑張りは認められないのではないかと感じ、エフィカシーにつながる要素を見失うことがあります。フィードバックの内容に応じて、シーンをうまく使い分けられると良いでしょう。
■達成不可能な目標設定
エフィカシーを下げるNG行動として、達成不可能な目標設定も挙げられます。エフィカシーが高い人ならば、無理な目標を設定しても頑張ってくれるだろうと考え、目標設定をしてしまうと、部下は達成可能性を見失い、エフィカシーが下がってしまうということもあり得ます。
目標設定においては、上司と部下の双方が納得した挑戦的かつ達成可能な目標を置くことがポイントです。
チャレンジばかりを重視して達成不可能な目標を押し付けても部下のモチベーションは上がらず、その状況が繰り返されれば、エフィカシーが低下します。
この点に関しては、上司による目標のコントロールが非常に大切だと言えるでしょう。
記事まとめ
今回紹介したエフィカシーは、変化の激しい今後の社会においてもより一層求められる要素だと思います。
一方で、エフィカシーは自分一人で高めていくものではなく、周囲との関係性によっても高めることができるものです。 エフィカシーの高い人が組織にポジティブな影響も、ネガティブな影響も及ぼしうることを踏まえつつ、より良い職場づくりが今後求められてくると言えるでしょう。
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