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アサーションとは?トレーニング方法や効果・メリットを解説

ビジネスをしていくうえで、自分の主張をすべき場面は沢山あります。自分の意見をはっきりと述べられる人はいても、相手の意見も聞きながらうまく主張することができる人は意外と少ないのではないでしょうか?

伝える力にこだわれば、主張が強すぎる人間に映るでしょう。かといって、聞き手に回ってばかりでは意思が無い人だと見なされてしまい、チャンスを逃しやすいです。

アサーションは、自分も相手も大事にして、自分の主張はしっかり行うものの、相手は傷つけない、絶妙なコミュニケーション方法です。

特に判断や指示を頻繁に行う管理職が適切なチームマネジメントを行うためには必要不可欠です。 本記事では、アサーションの意味や、その効果、ビジネスの場における取り入れ方や具体的なトレーニング方法をご紹介します。

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目次[非表示]

  1. 1.アサーションとは?
  2. 2.ビジネスでアサーションが注目される背景
  3. 3.「アサーション」はどんな仕事でも必要
  4. 4.アサーションを身につけるメリット
  5. 5.アサーションからみたコミュニケーションのタイプ
  6. 6.アサーションレベルチェックテスト
  7. 7.アサーションのトレーニング方法
  8. 8.記事まとめ

アサーションとは?

アサーションとは、「自分も相手も大切にしようとする自己表現で、自分の意見や気持ちを率直に、その場にふさわしい方法で述べること」です。つまりアサーションとは、相互の関係性を大切にした自他尊重のコミュニケーションである、と言うことができます。

アサーション(assertion)は、主張・断言などと和訳されますが、日本語に訳すと少し強い表現という印象があるためアサーションの本来の意味にそぐわず、「アサーション」と和訳せずに言ったり、「(さわやかな)自己表現」と言ったりします。

また、「自己主張」の意味を持つアサーションですが、単に自分の意見を発信することだけを目的としたものではありません。

「人には平等に自分の意見や要望を意志表示する権利がある」という考えのもとに、適切な自己主張をするというのがアサーションの考え方です。

昨今では、企業における人材育成だけでなく、学校や医療の場でもアサーションを用いた自己表現のトレーニングが行われるようになりましたが、トレーニングにおいても、率直な自己主張を行いながらも、お互いを尊重することに注意を払います。

あくまで対等で相互的な関係を築くことに焦点をおいてコミュニケーションを取ることが、アサーションにおける望ましい対人関係です。

■アサーションの歴史

アサーションの発祥はアメリカで、1950年代に行動療法と呼ばれる心理療法の中から生まれました。1949年に出版された、精神医学、行動医学の書籍において医療用語として記述されたのが始まりだそうです。

当初は「アサーション=自己主張」として定義されており、自己主張が苦手な人を対象としたカウンセリング技法として実施されていました。人間的な尊厳を取り戻し、回復を図る上で有効といった書き方になっていたのです。

そしてその理論は、1960~70年代に起こったアメリカにおける黒人差別に対する「人権拡張」「差別撤廃」といった公民権運動と密接に関わり合っていました。

「誰かを傷つけずに自己主張をする」というアサーションと行動は、それまで権利や言動を圧迫され続けていた人達に大きな勇気を与えたのです。

人は誰でも自分らしく生きる権利があるとするアサーティブの考えと行動は、黒人差別に対抗したこの公民権運動にはじまり、やがて女性差別に対抗した1970年代の女性解放運動に引き継がれていきました。

日本へアサーションという概念が持ち込まれたのは1980年以降です。当時アメリカでその理論を学んだ平木典子氏が日本へ紹介し、以後、家族療法とアサーショントレーニングを中心とした臨床と人間関係促進のトレーニングを実践し始めたのです。

このようにアサーションは、アメリカの心理療法から発祥し、当時の時代背景もあり民間に広がった後、日本に持ち込まれたのです。

ビジネスでアサーションが注目される背景

理由①退職防止に有効な人間関係向上施策

退職理由の上位に「人間関係の良さ(悪さ)」が上がっているのは昨今よく取り沙汰されているところです。

職場の人間関係を改善すると言っても根本的解決策はなかなか見当たらず、「ランチ会や飲み会を経費で実施する」「社内チャットルームを導入する」「上司と部下の1対1の面談の場を持つ」など一時的なイベント導入に留まっていることも多いです。

それに対して、コミュニケーションは職場においては日常的に頻度高く行われますので、改善すれば大きな効果が得られます。

なかでも「自己主張」という互いに緊張感の高い場面で用いるのに有効なアサーティブ・コミュニケーションの習得は、人間関係改善に大きな効果が期待できます。

出典:Webモニターアンケート調査「若年者の能力開発と職場への定着に関する調査」

理由②メンタルヘルス対策

労働政策研究・研修機構の調査によれば、事業所(職場)が認識する「メンタルヘルス不調者が現れる原因」の1位は本人の性格、2位は職場の人間関係となっています。

アサーティブ・コミュニケーションは心理学の認知行動療法として当初取り入れられたことからもわかるように、メンタルヘルス向上に有効です。

特に「受け身的なノン・アサーティブ・コミュニケーション」をとりがちな人はいわゆる「生真面目」タイプで、メンタルヘルス不調に結びつきがちと言われます。

自らトレーニングに取り組むことはもちろん、会社としてもメンタルヘルス対策の1つに取り入れることは有効な手段でしょう。 


出展:「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する」調査結果

理由③ハラスメント対策として

メンタルヘルス対策とともに、企業として悩ましい問題の1つが「ハラスメント」です。 職場の雰囲気とストレスの相関関係を調べるある調査においても、下記のように「温かみや信頼関係」がストレス低下につながるという調査結果がでていますが、「温かみ」を強化するのはむずかしいものです。

出展:『職場のコミュニケーションに関するアンケート調査』

よって企業においてはハラスメント対策としては企業のリスク管理が重視され、ケースワークなどを用いた研修が積極的に行われていますが、超えてはならないOBゾーンを伝えることに留まっているのではないでしょうか。

アサーティブ・コミュニケーションでは具体的にどのようなコミュニケーションが攻撃的であるかを認知させ、どのように変えればよいかを理解させることができますので、職場におけるハラスメント対策の1つとして有効です。

さまざまな目的で活用できる可能性を秘めたアサーティブ・コミュニケーションですが、ではその実践方法を具体例とともに見ていきましょう。

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「アサーション」はどんな仕事でも必要

ビジネススキルの重要性を語るうえでは「問題解決」「ロジカル・シンキング」などに並んでアサーションを含む「コミュニケーション」が非常に重視されてきています。

ロジカル・シンキングはどの仕事においても重要だといわれますが、1人で進める仕事はほとんど無いことから、コミュニケーションも同様に重視されているのです。

実際に、人とコミュニケーションを取ることが比較的必要でないと思われていたエンジニアなどの職業においても近年では重要性を指摘されていますし、技術に加えてアサーションなどのコミュニケーションスキルがあることで、強固な自己ブランディングができあがり、個としての市場価値も上がるでしょう。

つまり、アサーションなどのコミュニケーションスキルは、職業に関係無く必要とされるものなのです。

アサーションを身につけるメリット

アサーションを身につけることで、コミュニケーションにおける負を解消するだけでなく、自分の意見を伝えてよりパフォーマンスを出せるようになることもあります。

ここではそれぞれのメリットを具体的にお伝えします。

■コミュニケーションによるストレス軽減

コミュニケーションをとる際に、ストレスを感じてしまう人も少なくありません。このストレスは、言いたいことを我慢し続ける、自分のアイデアがなかなか伝わらない、自分の意見を聞いてもらえないといったことから生まれるといわれています。

これらは全て1人で生活や仕事をしていれば発生しないストレスですが、複数名で関係性を構築していると、どうしても自分の意思だけではうまく場をコントロールできないものです。

そこで必要とされるのが、アサーションです。アサーションは、相手を思いやりながら自分の意見をしっかり伝えるコミュニケーションです。

言いたいことが伝わらない、相手に遠慮してしまうといったコミュニケーションのストレスが軽減できるので、人間関係のストレスも相対的に軽くなるでしょう。

■自分の意見を伝えることによるパフォーマンス向上

アサーションは、相手を傷つけずに自分の要求を伝える手法です。そのため、アサーションを身につけることで自分の意見や要求を円滑に伝えられますし、そうすることで相手も応えてくれるようになります。

意見をなかなか伝えられない、または自分の要求を伝える際、ついつい攻撃的な言葉を選んでしまう場合もあるでしょう。しかしこれだと、相手が防衛状態に入ってしまい、言いたいことが伝わらない可能性もあります。

相手を尊重する言葉を選んで主張することで相手も受け入れやすくなり、結果的にスムーズに仕事が進むのです。

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アサーションからみたコミュニケーションのタイプ

アサーティブ・コミュニケーションに関する過去の主な研究を見ると、コミュニケーションスタイルを3つに分類しています。

アサーティブ・コミュニケーションと2種類のノン・アサーティブ・コミュニケーション(受身的ノン・アサーティブ・コミュニケーション/攻撃的ノン・アサーティブ・コミュニケーション)です。



出展:Gerraard B,Boniface W,Love B:Interpersonal Skills for Health Professionals,Reston Publishing Co,1980

アサ―ティブ・コミュニケーションの詳細をご説明する前に、「アサーティブではない」コミュニケーション=“ノン・アサーティブ・コミュニケーション”がどのようなものなのかをみていきます。

■受身的なノン・アサーティブ・コミュニケーション

受身的なノン・アサーティブ・コミュニケーションとは、自分の意見を伝える場面でも自己主張せず、相手側に不備があったり、相手からの情けがあったときだけうまく自分の主張が通るようなスタイルです。

一見相手を思いやっているように見えますが、後になって不満を言っていたり、そもそも意図が伝わっていないなど、結果的に自分にも相手にも不利益をもたらすことになることが多々あります。

そしてこのスタイルの人の多くが「自分がしている気遣いは相手も返してくれて当たり前」と思い込んでいて、相手が自分と同等の気遣いを返してくれないと不満に思います。

当然その相手方にはなぜその人が不機嫌になっているのかが伝わらないため、お互いに大きなストレスを生む関係になりがちです。

■攻撃的なノン・アサーティブ・コミュニケーション

「攻撃的なノン・アサーティブ・コミュニケーション」は、自分の意見は主張するものの、相手の気持ちや意見を尊重しないために自己中心的に見え、結果的に自分の主張も受け取ってもらえないようなコミュニケーションです。

単に「アグレッシブ=攻撃的」と表現されることもあります。相手はその場で黙り込むことが多いため、本人は自分の意見が通って勝利したように思うかもしれませんが、「今後関わりたくない人」と思われて避けられるようになります。

このようなコミュニケーションスタイルが多い人の根底には「自己否定的な感情」があるとも言われます。いわゆる「手負いのケモノ」状態で、自分の弱点を隠そうとして攻撃的な反応をしていると考えられています。

アサーションレベルチェックテスト

自身やチームのコミュニケーションを改善していくうえでまず必要となるのは現在地の把握です。まずは、自分のコミュニケーションタイプを知るために、普段の何気ない行動を振り返ってみましょう。

出典:平木典子『改訂版 アサーション・トレーニング さわやかな<自己表現>のために』|金子書房(2009)

NOの数が5個以上だと自己主張が苦手(ノン・アサーティブ)、YESの数が5個以上だと適切に自己主張ができる(アサーティブ)、攻撃的・否定的感情を持ってYESを選んでいる場合はアグレッシブの可能性があります。

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アサーションのトレーニング方法

アサーションを身に付けるための具体的なトレーニング方法として、「DESC法」が挙げられます。DESC法は、アサーションスキルを体系的にまとめた方法で、アサーションを以下の4つに分類しています。

例えば、クライアントから無理なスケジュールの案件を頼まれたときは、以下のようにコミュニケーションを取ることが可能です。

このように、自分の主張を4段階で分析して具体的に伝えることで、衝突の回避や折衷案を探ってより良い方向に向かうことができる方法です。

記事まとめ

自分の意見を主張する方法として昔から数々のスキルが形にされてきましたが、 なかでもこのアサーティブ・コミュニケーションの特徴は 「自分の意見を主張するために、自分と相手を大切すること」を伝えている点です。

「自分の意見を主張するために相手の意見を大切にすること」を大事だと伝えていますが、自分の意見を主張するという目的で、相手の意見を大切にすることはできるのでしょうか。

アサーティブ・コミュニケーションのトレーニングにおいてはこの逆説に対して、自分自身を大切にすることの大切さを説いています。

「相手を大切にしようと思ったら、自分をまず大切にしなければならない」 これの逆説もまた同じです。

真のアサーティブスキル獲得に向けて、一人ひとりが、そして一つひとつの職場が、組織が取り組んでいくことによって、職場の活性化に繋げていきましょう。

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湯浅 朱菜
湯浅 朱菜
【プロフィール】 採用を主な専門領域とし、 リンクアンドモチベーション入社後、ベンチャー企業向けのコンサルティングに従事。 現在は採用の専門性を活かし、大手企業の採用コンサルティング支援を行う。 IT系業界、小売業界など幅広い業界の企業様にコンサルティング経験を持つ。

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