ノマドワーカーとは?企業がノマドを導入するメリット・デメリットは?
未曽有のCOVID-19の影響により、国内で加速度的に広まったテレワーク。それに伴い、ノマドワーカーの人口も加速度的に増え、ノマドワーカーに関するニュースも増えました。
今回は、企業内でもノマドワーカーを取り入れるポイントを紹介していきたいと思います。
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ノマドワーカーとは?
タイトルにもあるノマドワーカーとは一体何なのでしょうか。そもそもノマド(nomad)というワードは、遊牧民や放浪者を意味する英単語が元になっています。
遊牧民のように、決まった場所で働くといった働き方をせず、仕事場を転々とする働き方を指します。今でこそ徐々に当たり前になってきていますが、決まったオフィスに出社するような働き方とは対照的ですね。
ノマドワーカー人口の増加に伴い、ノマドワーカーの働きやすい環境も増えてきました。例えば、コワーキングスペース施設数に関しても、下図のように、年々増加している傾向がみられます。
出展:一般社団法人 大都市政策研究機構 調査・研究レポートより
このように働き方が多様化する中で、一部ノマドワーカーのような働き方を取り入れる企業も出てきています。詳しくは後段部分でも紹介しますが、企業がこのような働き方を取り入れる中で、ノマド的な働き方のメリットとデメリットを理解した上で制度を取り入れることがポイントです。
リンクアンドモチベーショングループでは、オフィスワークとテレワークを使い分け、それぞれの特性を活かした働き方「Compatible Work(コンパティブルワーク)」を取り入れています。
図で記載しているように、オフィスで顔を合わせて仕事をすることで、「一体感の醸成」や「偶発的な他者からの学び」「他者理解の促進」「同一感覚の共有」などのメリットがあります。
一方で、テレワークに関しては、「業務効率の向上」や「計画的なタスク進行」「型化業務の遂行」「事実の一斉伝達」のようなメリットがあります。それぞれの特性を活かして、オフィスワークとテレワークを使い分け、業務効率の向上と社員のモチベーション向上を同時実現させることがポイントとなります。
このような新たな働き方の導入を検討されている皆様に、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
■フリーランスとの違い
ノマドワーカーに関してのポイントをお伝えする前に、ノマドワーカーと良く混同されがちな概念であるフリーランスに関しても紹介したいと思います。
フリーランスとノマドワーカーは働き方の定義が異なります。フリーランスは個人事業主であり、企業に雇用されないという契約形態をとります。WebエンジニアやWebデザイナーなどが、フリーランスのイメージとしてつきやすいのではないでしょうか。
一方で、ノマドワーカーは「ワークスタイル」のことを表します。働く場所を制限されない働き方のため、昨今加速度的に増えているテレワークもノマドワークの1つとして捉えられることもあります。
働き場所を制限されず、コワーキングスペースなどで、対面で仕事などをするケースもあるでしょうし、インターネット環境が整った施設や自宅などを利用して、テレワークで仕事をするケースもあるでしょう。
これは、どちらもノマドワーカーと言えます。ワーケーションなどという言葉も流行りましたが、これもノマドワークの1つの形態と呼べるでしょう。
ノマドワークを取り入れるメリット
ノマドワークの定義や特徴を簡単に紹介しましたが、ここからはノマドワークのメリット、デメリットに関して紹介していきたいと思います。
■メリット①:場所や服装・時間などを自由に選択できる
ノマドワーカーのメリットの1つとしては、場所や服装・時間などを自由に選択できる点にあります。働く場所に縛られないため、自分が集中しやすい環境で仕事をすることが可能ですし、気分転換もしやすくなります。
好きな働き場所を選択できるという点においては、仕事外での様々な事情に対しても柔軟に対応できるメリットもあります。一時期介護離職という言葉が社会問題として取り上げられたこともありました。
働き場所が固定化されていた時代においては、勤務地に居を構えて仕事をしなければなりませんでしたが、ノマドワーカーであれば、勤務地に縛られず、家族の介護や育児などと両立しながら働きやすい環境を整えることができます。
また、服装に関してもある程度自由が利くようになったこともノマドワーカーのメリットとしてあるかと思います。もちろん、テレワークなどにおいて顧客との打ち合わせ時には、相手に失礼にならない服装を心掛ける必要があります。
一方で、打ち合わせの無い普段の仕事時間は、自由に服装を選ぶこともできます。自分の集中しやすい服装を整え、生産性を高めることができるというのもメリットとして挙げられるでしょう。
また、働き場所を自由にアレンジできることもメリットとして挙げられます。ディスプレイを追加で購入し、生産性を上げたり、座り心地の良い、自分に合った椅子を選ぶことで、集中力を高めることができるかもしれません。
特に、テレワークなどを取り入れている企業によっては、テレワーク環境を整えるための手当を追加支給しているケースもあります。
■メリット②:通勤時間から解放される
もう一つのメリットとしては通勤の必要が無いことです。通勤時間が無くなるため、効率的な時間の使い方ができるようになるほか、例えば在宅でのテレワークなどは密を避けることもできるので、COVID-19の感染から身を守ることもできます。
総務省統計局の社会生活基本調査によると、日本における平均通勤時間は「片道39分」と言われています。これは、往復で約1時間20分を費やしていることになり、月20日の勤務で換算すると、月に26時間、年間312時間費やしていることになります。
この通勤時間が、例えば在宅ワークなどを取り入れることでほぼゼロにできると、毎日約1時間20分の時間を生み出すことができます。もちろん、通勤時間に新聞を読んだり、読書や音楽などの趣味に使っている方もいらっしゃると思います。
通勤時間を貴重なインプットの時間として、自身のルーティンに取り入れている方もいらっしゃるかと思います。中には、通勤時間が日々の軽い運動になっている方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合には、中々ノマドワークに適応するまでに時間がかかるかもしれませんが、適応できると、浮いた時間を別のことに有効活用できるようになると思います。
通勤に費やしていた時間を活用して、日々の暮らしに彩を与えるよう有効活用することが、ノマドワークのメリットを最大限に活用するポイントだと言えます。
ノマドワークを取り入れるデメリット
前章でノマドワークのメリットを紹介しましたが、ノマドワークは必ずしもメリットだけが存在するわけではありません。この章では、ノマドワークのデメリットを紹介します。
■デメリット①:コミュニケーション不足になりやすい
企業がノマドワークを取り入れる上でのデメリットとして大きなものが、このコミュニケーション不足の問題だと思います。フリーランスと異なり、企業に所属して仕事をするうえでは、職場内でのコミュニケーションは無くてはならないものです。
ビジネスシーンにおいて、1人で仕事をするということはほぼないかと思います。チームで仕事をするうえでは、チェスターバーナードが提唱する「共通目的」「貢献意欲」「意思疎通」の3つの要素が必要になるかと思います。
この中で、特にノマドワークを取り入れた企業で問題となってくるのが「意思疎通」、すなわちコミュニケーションです。
オフィスワークにおいては、全員が同じ空間にいるためコミュニケーションが取りやすかったものの、ノマドワーク、特にテレワークになると、コミュニケーションを取るにはWeb会議に繋いだり、電話をしたりと、リアルな場におけるコミュニケーションよりも少し手間がかかってしまします。
そのため、オフィスワーク時よりもコミュニケーション量が減り、他メンバーの状態の把握がしにくくなったり、何気ない会話から新たなアイディアの着想を得ることが難しくなったりしています。チームとしての成果を最大化するためのコミュニケーション量の担保のためには、様々な工夫が求められると言えるでしょう。
また、コミュニケーションに焦点を当てて紹介しましたが、同様に共通目的や貢献意欲の醸成もポイントです。テレワークで相手の状況が分からないことを理由に依頼をためらったり、チームビルディングで共通目的の温度感がすり合わず、上手くチームが機能しないといったこともあります。
テレワーク特有の落とし穴に気を付けて、より良いチームを作っていくことがポイントです。
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チームビルディングのメリットとは? 方法やポイントを解説
■デメリット②:環境を整えるコストが掛かる
もう一つのデメリットとしてはノマドワークのための環境を整えるコストがかかることです。これは、企業側と従業員側のどちらに対しても当てはまることです。
企業側からすると大きく問題となる点はセキュリティの観点だと思います。専用のセキュリティの高い回線を引いたり、社内の機密情報の扱いを改めて従業員にレクチャーしたりと、様々な要素が求められます。
特にシステム面に関しては導入までに時間がかかるという側面もあり、中々思うように導入を進めきれなかった企業もあったのではないでしょうか。あわせて、人事制度も変えなければならないという企業、勤怠管理の仕組みを変えなければならないといった企業もあったと思います。
企業側としての環境を整えるコストが決して軽くないという点は、このノマドワークの特徴の一つだと言えます。
また、従業員側としても、出社制限などを理由に、テレワークを余儀なくされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。テレワークをするにも家のネット環境を整えたり、業務スペースを確保したりと、従業員側にも様々な準備が必要だったと思います。中には、急なテレワークの対応のために、様々な出費がかさんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一度環境を整えてしまえば、後は仕事がしやすくなるというメリットはある一方で、初期投資に時間とコストがかかってしまうことが、従業員側のデメリットとして存在します。
ノマドワークを導入している企業事例
■例①:NTT
ノマドワークを導入している企業事例の1つとしてNTTがあります。COVID-19が蔓延した際に、早いタイミングで出社制限を行ったほか、2021年7月時点で出社率を2割以下に引き下げるような取り組みを行っています。
また、同年9月には招待は全社員の働き方はリモートワークを原則にすると述べ、転勤・単身赴任を廃止にする方針を打ち出しました。
この取り組みにあわせて、2022年度に現在の4倍にあたる260拠点以上のサテライトオフィスを設ける計画をしているほか、人事制度改革や業務改革も同時並行で進めています。このように、テレワークの導入だけではなく、テレワークを運用に乗せる仕組みにまでメスを入れている点が特徴的であると言えるでしょう。
■例②:メルカリ
メルカリも2021年9月より、多様な働き方を尊重した新しいワークスタイル「メルカリ・ニューノーマル・ワークスタイル”YOUR CHOICE”」へ移行しました。これにより、社員はリモート/出社の有無や働く場所など、個人と組織のパフォーマンス、およびバリュー発揮が最も高まるワークスタイルをそれぞれ選択できるようになりました。
本事例の特徴としては、オフィスワークとリモートワークのそれぞれの利点を活かす仕組みである点が挙げられます。
冒頭Compatible Workの例でもお伝えしましたが、社員はオンボーディングなどオフィスのほうが有効な点、通勤時間の短縮や業務効率の向上など、リモートワークの方が有効な点と、それぞれの働き方の良い点を踏まえて、ワークスタイルを選定することができます。
画一的なリモートワークを辞め、多様な人材が活躍できる環境を作り出すことに成功していると言えるでしょう。
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企業がノマドワークを導入する際の注意点
■注意点①:オンとオフの差が曖昧になる
企業がノマドワークを導入する際の注意点の1つとして、オンオフの切り替えがしにくくなるという点があります。特に在宅ワークにおいては、生活空間と仕事空間が同じになるために、仕事のオンと、プライベートのオフの切り替えがしにくくなります。
オンとオフの切り替えを明確にするためには、朝日光を浴びるといった習慣を取り入れたり、仕事スペースと生活スペースを分けるといったことを取り入れたり、服装で仕事着と部屋着を分けたりと、様々な工夫が考えられます。
逆にこういった切り替えの工夫をしていないと、日常生活が仕事の延長線上にある気分から抜け出すことができない、就業時間を終えても仕事をしている気分から抜け出せないなどといった状態が起こりえます。
就業時間もプライベート時間も濃く過ごしていくためには、自ら時間に区切りを入れ、メリハリを付けた生活をすることが重要です。毎日の生活の中に、仕事とプライベートを切り替えるルーティンを入れ込むなどして、どちらの時間も大切に過ごせるようにしていくことが、ノマドワークを取り入れる上での注意点の1つと言えます。
■注意点②:勤怠管理をしっかり行う
もう一つの注意点としては、勤怠管理に関してです。オフィスワークであれば、残業をしている人を視認できます。一方、ノマドワークの場合には、視認で勤怠状況を把握することが難しくなります。
一部企業では勤怠管理をするために、Web会議が常に接続された状態を保っていたという事例も聞きます。このように、同じ空間で仕事をしていないと、勤怠の管理がしにくいという注意点があります。
特に、1つ目の注意点と被りますが、在宅でいつでも仕事上のメールなどを確認できる状況が生まれたため、オフのタイミングでもメールなどの通知を受け取り、確認することができるようになります。
このような状況が問題視され、2021年11月にポルトガルでは雇用者に対して勤務時間外に電話やメッセージ、電子メールで従業員に連絡することを禁じる法律が可決されました。ノマドワークにおける勤怠管理の難しさが表面化した1つの事例だと思います。
同じ空間にいないことで、知らず知らずのうちに部下が残業をしてしまっている、ある一定の人に負担が偏ってしまい、体調を崩す直前の状況になってしまっているということも、ノマドワークにおいては起こりえます。
データを持ち出せないようにすることや、パソコンのログイン情報を記録するなど、様々な手法で勤怠管理を強化する必要があると言えます。
記事まとめ
本記事ではメリットやデメリット、導入事例などを元に、ノマドワークを様々な角度から紹介してきました。COVID-19の影響もあり、テレワークの加速度的な普及からノマドワークが広まったものの、新しい働き方に個人としても、企業としても中々適応しきれていないケースもあるかと思います。
本記事が、このようなノマドワークで悩む方に少しでも参考になれば幸いです。
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