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労働基準法で定められた休憩時間とは?規則とトラブル例を紹介

 従業員の休憩時間は労働基準法によって規定されています。正しい時間や方法で休憩が与えられていない場合、違法になるのはもちろん、従業員のモチベーション低下や生産性低下、労災事故につながるおそれもあります。今回は、従業員の休憩時間に関するルールについて解説していきます。意図せず法令に違反しているケースも見受けられるため、あらためて原則と例外を押さえておきましょう。

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目次[非表示]

  1. 1.従業員エンゲージメントと「休憩時間」の関係性
  2. 2.労働基準法で定められた休憩時間とは?
  3. 3.労働基準法で定められた「休憩の3原則」
  4. 4.労働基準法で定められた休憩時間に違反すると罰則がある
  5. 5.休憩時間に関して注意したいトラブル事例
  6. 6.まとめ
  7. 7.労働基準法の休憩時間に関するよくある質問


従業員エンゲージメントと「休憩時間」の関係性


 従業員にとっての「休憩時間」は、アメリカの臨床心理学者「フレデリック・ハーズバーグ」が提唱した「二要因理論」という概念で整理することが可能です。


 この理論は、従業員の仕事における満足度には「満足」に関わる要因(動機付け要因)と「不満足」に関わる要因(衛生要因)の2つがあり、両方が満たされることで高いモチベーションが保たれるというものです。


 「動機付け要因」は「承認」「昇進」「成長」など職務満足を引き起こす要因を指します。精神的に成長したい、外部から認められたいという欲求に基づくものとされています。「やりがい」と言い換えても良いでしょう。

 「衛生要因」は「心身の健康状態」「会社での人間関係」「職場環境」などの仕事における不満足に関わる要素を指します。苦痛や欠乏を避けたいという欲求に基づくものとされています。不満足要因とも呼ばれており、満足度が低い状態であれば、社員が離職するという悪影響を及ぼします。


 これらの二方向からマネジメントをすることで従業員のモチベーションを網羅的に捉えることが出来るため、「やりがいを感じてもらうには?」「待遇や環境に満足してもらうには?」の問いかけを持っておけると成果に繋げることが出来ます。


 当然ながら「労働基準法」という法令を遵守をするのは大前提ではあるのですが、「衛星要因」に該当する「休憩時間」を企業が提供することは、従業員エンゲージメントを大きく左右する内容であることは理解しておけると良いでしょう。

労働基準法で定められた休憩時間とは?


 そもそも、休憩時間とは「従業員が労働から完全に離れることを保障される時間」と定義されています。労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと規定されています。


労働時間
休憩時間
6時間以内
不要
6時間超~8時間まで
45分
8時間超
1時間



 上述のとおり、労働基準法では労働時間が6時間を超える場合、休憩を与える必要があると規定しています。逆に言えば、休憩を与えない連続した労働時間は6時間が限度だということです。条文では、6時間を「超える」場合と規定されているため、6時間に満たない場合や、6時間ちょうどの場合は休憩を与えなくても問題はありません。

労働時間が6時間を超える場合と8時間を超える場合


 労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は最低45分の休憩を与える必要があり、労働時間が8時間を超える場合は最低1時間の休憩を与える必要があると規定しています。これらはいずれも最低基準であるため、会社の裁量でこれよりも長い休憩時間を与えても問題はありません。たとえば、労働時間が7時間の場合、休憩時間は本来45分で足りますが、1時間の休憩を与えても構いません。


労働基準法で定められた「休憩の3原則」

 労働基準法第34条では「休憩の3原則」が定められています。それぞれ解説していきましょう。

①休憩は労働時間の途中に与える

(労働基準法第34条第1項)

使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。


 労働基準法第34条第1項では、「休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています。つまり、休憩時間を与えるタイミングは、労働時間の間(労働と労働の合間)ということになります。たとえば、業務開始前や業務終了後に休憩を与えても、休憩を与えたことにはなりません。

②休憩は一斉に与える

(労働基準法第34条第2項)

前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。


 労働基準法第34条第2項では、「休憩時間は、一斉に与えなければならない」と規定しています。基本的に休憩の個別付与は禁止されており、事業所ごとに一斉に与えなければいけません。ただし、窓口対応などを要する職場においては交替して対応せざるを得ないケースもあります。このような場合は、労使協定に定めることで、休憩を交代制として個別に休憩を与えることが認められています。


③休憩時間は労働から解放される

(労働基準法第34条第3項)

使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。


 労働基準法第34条第1項では、「休憩時間を自由に利用させなければならない」と規定しています。休憩時間は従業員を完全に業務から解放し、その時間を自由に利用させなければいけません。たとえば、休憩時間中に来客対応や電話対応をさせたり、休憩時間終了の5分前に着席することを求めたりすると、違法とみなされる場合があります。

会社は従業員の休憩時間の使い方に干渉することはできず、従業員は食事をしたり、スマホを使ったり、外出したり、昼寝をしたりすることができます。ただし、会社の規律保持や施設管理上の制約には従わなければいけません。

休憩の3原則を守っていれば、休憩時間を分割して与えてもOK

 休憩の3原則を守っていれば、休憩時間を一度にまとめて与える必要はなく、分割して与えることも認められています。たとえば、1時間の休憩時間を「30分 + 20分 + 10分」の3回に分割して与えることも可能です。


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労働基準法で定められた休憩時間に違反すると罰則がある

 上述のとおり、従業員に与えるべき休憩時間は労働基準法第34条で規定されています。労働基準法第34条に違反した場合、雇用主に対して6ヶ月以下の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科せられることがあります。

 労働基準法第34条違反で罰則を受けると、「従業員に休憩を与えないブラック企業」というレッテルを張られ、社会的信用を失うことになりかねません。また、適切な休憩を与えずに働かせていると従業員のモチベーションや生産性が低下したり、離職率が高まったりする可能性があります。


休憩時間に関して注意したいトラブル事例

 休憩時間に関して注意すべきトラブル事例についてご説明します。

雇用形態によって休憩時間の違いを設けてはいけない

 いかなる雇用形態の従業員にも、労働基準法の休憩時間の規定は適用されます。そのため、正社員には休憩を与え、契約社員やアルバイトには休憩を与えないといった異なる取り扱いをしてはいけません。

休憩時間に労働が発生したら、その時間は休憩時間としてカウントしない

 休憩時間中、従業員は労働から完全に解放されていなければいけません。現実に作業に従事していないものの、使用者の指示等で即座に就労しなければならない待機時間のことを「手待時間」と言います。たとえば、電話がかかってきたら対応しなければならない時間や、来客があったら対応しなければならない時間などは手待時間に該当します。原則として手待時間は休憩時間に当たらず、労働時間としてカウントされるため、会社は別途、休憩時間を与えなければいけません。

休憩を返上して早く帰りたいと言う従業員にも休憩を与えなければいけない

 なかには、「休憩時間は要らないから、そのぶん早く帰りたい」という従業員もいるでしょう。たとえば、ある従業員にすでに45分の休憩を与えている状況で、残業によって労働時間が8時間を超えた場合、追加で15分の休憩時間が必要になります。この場合、その従業員が「早く帰りたいから休憩は要らない」と言っても、別途15分以上の休憩を与えなければ違法となってしまいます。


まとめ

 適切な休憩を与えずに働かせることは、罰則のリスクがあるだけでなく、従業員のモチベーション低下や生産性低下、離職率向上の原因になります。さらに、過度な労働によって従業員が心身の健康を損なうなど、労災事故に発展するおそれもあります。従業員の健康を守り、高いパフォーマンスを発揮してもらうためにも、労働基準法を遵守して休憩を与えるようにしましょう。


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労働基準法の休憩時間に関するよくある質問

Q:残業時間中に休憩を与える必要はある?

 労働時間が8時間超で、すでに1時間の休憩を与えていた場合、その後、残業時間が長くなっても別途休憩を与える必要はありません。残業時間が2時間になっても3時間になっても、1時間の休憩を与えていれば適法です。

 一方で、法的な義務はないものの、従業員の健康維持や業務効率の観点から「残業時間中にも休憩を与えるべきだ」という考え方もあります。これは会社が任意で決めることができるため、たとえば「残業時間が3時間を超えたときは15分の休憩を与える」といったルールを設けるのも良いでしょう。

Q:休憩時間分の賃金支払い義務はある?

 休憩時間は労働時間に含まれないため、休憩時間分の賃金支払い義務はありません。労働時間は、就労時間から休憩時間を差し引いて計算します。就労時間が6時間30分の場合は45分の休憩が必要なので、実質的な労働時間は5時間45分になります。この場合、5時間45分に対して賃金の支払い義務が発生することになります。

LM編集部
LM編集部
理念・採用・風土・制度など組織人事のトレンドを発信しています。 基本的な用語解説から、多くの企業で陥っている実態、 弊社が培ってきた組織変革技術の知見を踏まえたポイント解説まで 皆様のお役に立ち情報をお届けします。

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