なぜ女性活躍推進は進まないのか?

生産労働人口の低減や市場の多様化するニーズへの対応といった背景から、企業における女性活躍推進はますます求められています。女性活躍推進においては、総論賛成各論反対の構図が生まれやすく、企業が掲げるだけでは、何も変わりません。
企業としては、具体的な施策や仕組みを講じるとともに、目的に対するコミットメントが不可欠になります。本記事では、女性活躍推進が進まない真の理由と、解決に向けた観点をご紹介します。


そもそもなぜ女性活躍が必要か

昨今、企業に必要な動きとして「女性活躍の推進」が叫ばれていますが、そもそも、なぜ女性活躍が求められているのでしょうか。「市場適応」「人材確保」「行政要請」3つの観点から、企業が女性活躍を推進する履修をお伝えします。

市場適応の観点~多様な市場に対して価値を発揮するためには、企業も多様でなければならない~

商品市場における変化

産業構造において、第二次産業(鉱工業・製造業・建設業など)の割合が半数以上を占めていた時代 から、 第三次産業(金融、保険、卸売り、小売、サービス業、情報通信業など)中心の時代へ変化している中で、「競合優位性」「商品のライフサイクル」が大きく変わってきています。

産業構造の変化

また、そもそも、多様性を認めない風土とは「異なる意見を許容しない風土」であり、イノベーションの芽を摘んでしまう傾向にあります。  そういった観点から、変化する商品市場でこれからも勝ち続けるためには企業は多様性を組織に取り組む必要があります。


人材獲得の観点~女性が活躍しづらい環境で働きたいと思う人材は存在しない~

生産労働人口の低減

日本の生産年齢人口(15~64歳)は今後減少の一途を辿っており、近い将来、企業は人材不足に直面し、人材 の奪い合いが起こることが予想できます。そのため日本の企業では、女性にいかに就業してもらい、活躍しても らえるか、が人材確保における1つのポイントになります。

我が国の人口推移

出展:総務省「我が国の人口推移」


実際に、2012年の男女共同参画会議での発表では、働く意欲を持ちながら就業していない約342万人の女性が働くことによって、雇用者報酬総額が約7兆円=GDPの約1.5%増える可能性を指摘しているなど、 これまで就業していなかった女性が新たに働くことによる経済への影響は非常に大きいと言えます。

女性が活躍しづらい環境

厚生労働省の調査によると、2018年時点、日本における女性管理職比率(課長以上)は12%に留まっています。この数値は先進7ヵ国(G7)で最下位。アメリカ合衆国の39.7%を筆頭に、日本を除く6ヵ国は20~30%台という結果になっています。また、大手企業の役員に占める割合を見ても、日本の女性比率は3.4%と、フランスの37%、アメリカ合衆国の16.4%と比べても非常に低い結果でした。
活躍しづらい社会や会社で、働きたいという意思を持つことは難しく、結果として、働くことを諦めてしまう女性が多くなってしまっているのが現状です。女性が活躍できる環境を創っていくことが、企業における今後の人材確保のために必要になります。


政治要請の観点~女性活躍推進法の成立~

女性活躍推進法とは

女性活躍推進法は、仕事における女性活躍の推進を、雇用主である企業に義務付けた法律で2016年4月に施行されました。対象企業(301人以上の労働者の雇用主)には、具体的に下記の3点が義務付けられています。

  • 自社の女性活躍に関する状況把握・課題分析
  • 課題解決にふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表
  • 自社の女性の活躍に関する情報の公表

また、上記の義務に加えて、女性活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができる制度も存在します。
義務を怠った際の罰則などは存在しませんが、行動企画を提出している企業の情報は「女性の活躍推進企業データベース」によって誰でも確認が可能であるため、義務を推進できていない企業は、「女性活躍推進に積極的でない企業」としてイメージを持たれてしまい、ブランドを毀損するリスクがあります。
この女性活躍推進法の施行によって、これまで以上に多くの企業で女性活躍推進が叫ばれるようになりました。


女性活躍推進への取り組み事例

大手企業を中心に、女性活躍推進への取り組みが積極的に行われています。


【事例】トヨタ自動車株式会社の女性活躍推進

トヨタ自動車株式会社は、女性活躍推進法に基づく行動計画をとして、下記の様な計画を推進しています。

女性活躍推進事例トヨタ自動車株式会社


【事例】株式会社日立製作所の女性活躍推進

株式会社日立製作所は、女性活躍推進法に基づく行動計画をとして、下記の様な計画を推進しています。

女性活躍推進事例株式会社日立製作所


【事例】積水ハウスグループの女性活躍推進

清水ハウスグループは、女性活躍推進法に基づく行動計画をとして、下記の様な計画を推進しています。

女性活躍推進事例清水ハウスグループ


女性活躍は進んでいるのか?

世界で見ると男女格差はあまり改善していない

国ごとの男女格差を測る指標であるジェンダーギャップ指数(※)の世界ランキング推移を見ると、女性活躍推進法が施行された2016年から、2018年に至るまで、2016年:111位、2017年:114位、2018年:110位と推移しています。2018年では、先進7ヵ国(G7)の内最下位で、日本は依然として、相対的に男女平等が進んでいない経済圏の1つという指摘をされています。

※ジェンダーギャップ指数
世界経済フォーラム(WEF)が毎年公表している、各国の社会進出における男女格差を示す指標。主に「経済分野」「教育分野」「健康分野」「政治分野」の4つ観点から算出される。

男女平等世界ランクの推移

出展:新日本夫人の会「男女平等世界ランクの推移」


また、先述した通り、企業における現状の管理職比率は他国に比べて非常に低く、相対的に的には日本の女性活躍推進における大きな改善は見られていません。

  • 経済分野 : 0.595(117位)
  • 教育分野 : 0.994(65位)
  • 健康分野 : 0.979(41位)
  • 政治分野 : 0.081(125位)


管理職比率は多少改善されているものの政府が掲げる目標はまだ遠い

内閣が掲げる「202030」とは

「202030」とは、女性の活躍推進を目的とした「2020年までに各分野の指導的地位に女性の占める割合を30%以上にする」という政策を指し、2003年に男女共同参画推進本部により制定されました。

階級別役職者に占める女性割合の推移

下記グラフから分かる通り、役職者に占める女性の割合は上昇傾向にはありますが、政府が掲げた「202030」という目標に対しては、進みが遅いといえます。

階級別役職者に占める女性の割合

出展:厚生労働省「階級別役職者に占める女性の割合」

労働政策研究・研修機構の調査によれば、事業所(職場)が認識する「メンタルヘルス不調者が現れる原因」の1位は本人の性格、2位は職場の人間関係となっています。
アサーティブ・コミュニケーションは心理学の認知行動療法として当初取り入れられたことからもわかるように、メンタルヘルス向上に有効です。特に「受け身的なノン・アサーティブ・コミュニケーション」をとりがちな人はいわゆる「生真面目」タイプで、メンタルヘルス不調に結びつきがちと言われます。 自らトレーニングに取り組むことはもちろん、会社としてもメンタルヘルス対策の1つに取り入れることは有効な手段でしょう。


女性活躍推進が進まない理由
~働きやすさの追求=女性活躍推進という誤り~

一般的に、女性活躍推進の方法として、「女性が働きやすい環境を追求する」という誤った認識が蔓延することにより、女性活躍推進が進まないといった状況が様々な企業で発生しています。
多くの企業における女性活躍を阻む真の要因は、女性社員にとって「働きやすい環境が無い」ことではなく、「ビジネスパーソンとして継続的に成長ができる環境が無い」ことです。日本において、女性社員が離職してしまう大きな理由としてキャリアイメージを持てないことがあります。
具体的に女性活躍推進においては下記の課題を解決することが必要になります。

課題①両立の不安により退職、またはキャリアアップを志さない

特に若手社員に多い傾向ですが、将来的な仕事と私生活の両立に不安が発生することがあります。社内に同じ境遇を乗り越えたロールモデルが多く存在していれば、大きな問題になはなりませんが、そうでない場合、不安により今の仕事に集中ができず、成長が鈍化する、といった負のサイクルが回り、結果的にキャリアアップを諦め、現状維持を志向、もしくは会社に見切りをつけて退社を決定するということが起こってしまいます。

課題②中堅女性社員が管理職になることを避ける

①と同じように管理職のロールモデルが少ない状況の中で、そもそも管理職に魅力を感じない、管理職を担うスキルや視界に不安を感じる、といった理由で、働きやすい環境での現状維持を志向してしまいます。また、結果としてロールモデルが育たないため、いつまでたっても女性管理職は増えない、といった構図ができあがってしまいます。

課題③女性社員活躍へのマネジメント方法が確立されていない

短期的に成果をだすための女性社員のマネジメント方法は確立されていても、長期的に女性社員の活躍推進を促すマネジメントが確立されていない場合が多く、企業が女性活躍推進を進めようとしていても、マネジメントの役割を担う社員がそのスキルを持っていないため、推進されないという状況が起こってしまいます。


女性活躍を推進するために企業が取るべき3つの方法

方法①未来の不安ではなく「今」に集中するキャリア観の醸成

女性社員が働き続けることに対して、不安や悩みを抱える理由の1つとして、「キャリアに対する認識」が大きく影響しています。具体的には、キャリアを築くために、遠い将来の理想的な自分の姿を掲げる傾向にある人は、将来に対して不安や悩みを抱えやすい傾向にあります。

そもそも、キャリアに対する考え方は2種類存在し、「山登り型」「川下り型」に分かれます。

山登り型キャリア

将来のやりたいことや目標を定め、それの実現に向けて、ルートを決めて突き進むキャリアの積み方。一度決めた道に対して、悩みを持ちにくい反面、目標に到達できなかった場合や、何らかの理由で道が閉ざされた時に、挫折しやすい傾向にあります。

川下り型キャリア

どんな仕事や環境に対しても、変化を大切にしながら、機会を最大限に活用するキャリアの積み方。これまでの全てに意味があり、だからこそ現在があって、未来に繋がるという考え方なので、目の前のどんな仕事に対しても意義を感じられ、道が閉ざされた時にも柔軟に対応ができる。

特にライフイベントなどの影響を受けやすい女性の場合において、キャリアとは、変化を前提としながら、目の前のチャレンジを積み重ねることで築いていくもの(川下り)として捉えることが有効であるため、若手女性社員に起こりがちな将来の不安や悩みに対しては「川下り型」のキャリア観を醸成することが重要になります。

方法②女性管理職の魅力と実現可能性の醸成

中堅女性社員が管理職になることを避ける主な理由は、「管理職に魅力を感じない」「管理職という職務を全うできる自信がない」ことが挙げられます。管理職への魅力については、上司である女性管理職が示していくことと同時に、企業側から、管理職の役割と女性管理職として実現できることを丁寧に伝えることで、現場で第一線で働くことよりも、管理職として働くことの方が魅力的であるという認識を醸成する必要があります。重要なのは、管理職になることも、自身のキャリア選択の1つとして考えられることです。

また、管理職として役割を全うするための実現可能性を醸成するためには、管理職になるにあたって、前提として求められるスキルと視界を身に着けさせることが重要です。そうすることによって、女性社員が自分でも管理職になれそう、と感じるための土壌を整えることができます。企業によって異なりますが、管理職に求められるのは、一般的に一定の論理思考スキルと、組織視点の視界です。

方法③女性活躍を促すマネジメント方法の確立

企業として女性活躍を推進するためのマネジメントが機能していない理由として、これまで積極的に実施してこなかったためやり方が分からないという背景があります。
また、スキル以外にも、マネジメント層がそもそも、「女性活躍推進の重要性を認識していない」「自分とは関係ないと思っている」といったマインドが醸成されていないパターンも意外と多いのが現状です。
そのような状況に対して、ステップとしては、まず初めにマネジメント層に対して多様性推進、女性活躍推進の重要性、会社へのメリットの理解促進から始めことが重要です。
その上で、適切に女性社員を理解し、女性と信頼関係を築き、女性を活かす配慮のあるマネジメントのスタンスとスキルを習得することが必要なります。

下記に女性活躍推進を促すマネジメントのポイントをご紹介します

「フェア」の観点 ~「ジェンダー」ではなく「個別性」で捉える~

「女性の部下は」であったり、「男性マネジメントとして」など、過度に性別に捉われすぎると、逆にバイアスがかかってしまい、個性豊かで多様なあり様を規定してしまう可能性があります。
それを防ぐために、自分や女性メンバーを「性別」ではなく「個別性」で理解する尺度を持つことが重要です。これは、メンバーの「個別性」を見える化し、実体のない総称で議論が行われることを避けるためにも有効です。

「ケア」の観点 ~起こりうる「葛藤」を知る~

過度に意識し過ぎる必要はないものの、一方で女性にはライフイベントに伴う葛藤が生じやすいのも事実です。その葛藤を理解しているか、してないかで女性の部下との関係構築に大きな差が出てきます。
いくつかの葛藤をイメージし、それに対するアドバイスができる状態を作ることが重要です。また、葛藤の内容は人によって異なりますので、実際に相手と認識をすり合わせ、相手を理解しようとする姿勢が求められます。


女性活躍推進まとめ

本ページで述べたように、生産労働人口の低減や市場の多様化するニーズへの対応といった背景から、各企業における女性活躍推進はますます求められています。女性活躍推進においては、総論賛成各論反対の構図が生まれやすく、企業が掲げるだけでは、何も変わりません。企業としては、具体的な施策や仕組みを講じるとともに、目的に対するコミットメントが不可欠になります。

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