ストレス耐性のチェック方法とは?高い・低い人の特徴や鍛える方法を解説
ストレス社会ともいわれる現代、ストレスを一切受けずに働いたり、生きていくことは困難です。「適度なストレスはパフォーマンスを高める」とも言いますが、過度なストレスによってパフォーマンスの低下や仕事や人間関係の悪化、精神状態への問題が起きることもあります。
つまり、ビジネスパーソンにとってパフォーマンスを発揮するためにストレスとうまく付き合うスキルを身に付けることは不可欠です。本記事では、「ストレス耐性」の見極め方や鍛え方を解説していきます。
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目次[非表示]
- 1.ストレス耐性を決める要素とは
- 2.ストレスの原因とは
- 3.ストレス耐性が高い人の特徴
- 4.ストレス耐性が低い人の特徴
- 5.ストレス耐性を鍛えるには?
- 6.ストレス耐性のチェック方法
- 7.記事まとめ
ストレス耐性を決める要素とは
■ストレス耐性とは
ストレス耐性とは、ストレスに耐える強さを意味します。ストレスの要因となりうることがあり、それに対してどう感じ、対処する力を持っているかの目安となります。安全衛生法により、一定規模以上の企業でストレスチェックが義務化されるなど、近年ストレス耐性は重要視されています。
ストレス耐性が重視されている背景には、仕事において業務や人間関係などのストレスが原因でメンタルヘルスの不調を訴える人が年々増加しているという現状があります。
また少子高齢化により労働力人口が減少している中で、人材不足の状況に伴い過労などのストレスが増えていると考えられ、一定規模の企業ではこの問題に対し手を打つことが要望されています。
※参考:独立行政法人 労働政策研究・研修機構 「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」結果
調査によると、6割弱の事業所で、メンタルヘルスに問題を抱えている正社員がいるとしており、そのうちの3割強(31.7%)の事業所は、3年前に比べてその人数が増えたとしています。増減の割合を比べると、減ったとするのは約 2 割(18.4%)で、増加傾向が見て取れます。
※補足:ストレスチェックの義務化について
精神障害を原因とする労災認定件数の増加を受け、労働安全衛生法の一部が改正となり、2015年12月以降ストレスチェック制度が義務化されています。これにより、常時50名以上の労働者が勤務する事業所では、毎年1回労働者に対し、ストレスチェック検査を実施することが義務付けられました。
ストレスチェックを実施した場合、事業者は検査結果を通知された労働者の希望に応じ、医師による面接を受けて助言をもらう必要があり、その上で必要に応じて作業の転換、労働時間の短縮、その他適切な就業上の措置を講じなければいけません。
■ストレス耐性を決める要素
ストレス耐性は、6つの大きな要素によって決められると言われています。ストレスの原因になる事柄をストレッサーと呼びますが、6つの要素はストレッサーに対してどのようにとらえ・対処するかに関わっています。
①感知能力
ストレスの原因となりうるストレッサーがある時に、そもそも気づく(感知する)かどうかの能力のことです。例えば誰かに嫌なことを言われたとしても、本人がそもそも気づかなければストレスにはつながりません。感知能力が低い人は、ストレス耐性が高いと言うこともでき、言い換えると「鈍感であればストレス耐性が高い」とも言えます。
②回避能力
ストレッサーがあったとしても、ストレス化しない(受け止めず回避する)能力です。回避能力は、自律神経系や内分泌系、免疫系と関連性があるとも言われています。つまり、心身が健康であるほど回避能力は高まり、ストレスを感じにくくなるとされています。
③処理能力
ストレッサーに対処する能力です。ストレッサーを弱める、なくすことができる能力を指します。ストレッサーに対処する力がある人は、そもそものストレスの原因を無くしたり軽減するよう働きかけることができるため、ストレス耐性が高いと言えます。
④転換能力
転換能力とは、ストレッサーに直面した時に捉え方を変え、ポジティブに転換できる能力です。ストレスを受けたとしても転換能力があり良い方向性に考え直すことができればストレス耐性があると言えます。
⑤経験
ストレスに対応した経験値のことを言います。そもそもストレッサーに複数回・頻度高く触れていることで慣れ・耐性がつき、ストレスを感じにくくなると言えます。
⑥容量
ストレスをどの程度溜めることができるかというキャパシティのことを言います。例えストレスを感じていても、容量が大きい人はストレスを多く感じていても耐えることができますが、小さい人は鬱などに陥ってしまいます。容量は心身の健康状態などによって、同じ人でも変動することがありえます。
ストレス耐性の6要素を見てきましたが、人によって特性がありますし同じ人でも環境や健康状態などによって変動することがあります。一方で、鍛えることによってストレス耐性を高めていくことは可能でもあります。
ストレスの原因とは
■そもそもストレスとは
ストレスという言葉は、もともと物体に外力が作用したときに生じるその物体の歪みを指す工学の用語でした。この言葉を借りて、「外からの刺激による生体側の歪みと、その刺激に対抗して歪みをもとに戻そうとする生体側の反応」をストレスと呼ぶようになりました。
たとえば、下記の図のようにゴムボールを指で軽く押さえた場合は、弾力性によってすぐに元に戻ります。しかし、強い力で押し続けるとボールは大きくへこみ、歪んでしまいます。
※参考:安全衛生情報センター ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
この歪みを生じさせる指の力を「ストレス要因」(ストレッサー)と言い、歪んだ状態を「ストレス反応」と呼びます。そして元に形に戻ることができる状態、弾力性のことを「ストレス耐性」があるとも表現します。
■ストレスの原因
上記の図において、ゴムボールの場合は上から押さえつける指の力が「ストレス要因」でしたが、現実のストレス要因には様々なものがあります。大きく分けると、物理・ 化学・生物学的要因と社会的要因に分けられます。
これまで後者の要因はあまり考慮されにくかった面がありますが、現代のメンタルヘルス対策においては、後者についても取り上げなければなりません(社会的要因は不安、焦燥、怒り、抑うつといった心の変化を起こす心理的ストレス要因になりやすいため)。
物理・ 化学・生物学的要因の代表的なものを挙げると、「温度や光、音など物理的な環境刺激」「化学物質や有機溶剤、金属、アルコール、タバコ、薬物、食品添加物」などが挙げられます。
また社会的要因の代表例としては、職場での出来事としては「仕事上の失敗や過重な責任の発生」「事故や災害の体験」「仕事の質・量や役割の変化」「上司や部下との対立やハラスメントなどの対人関係の問題」などがあります。
職場以外の出来事としては、「夫婦の不和や離」「恋愛問題、病気などの自分の出来事」「家族や親族の出来事」「金銭問題」「事件・事故・災害の体験」などが挙げられます。これらは人によって重さ・強さを一律に捉えることが難しく、個人差がある要因と言われています。
ストレス耐性が高い人の特徴
では、ストレス耐性が高い方の特徴を見てみましょう。
①物事に前向きに取組むことができる
出来事を肯定的に捉えることができ、ストレッサーに対しても動じず物事に前向きに取り組むことができます。仮に失敗したとしても、「まぁ、いいか」「次に同じ間違いをしなければ大丈夫」だと考え、長く引きずったり次の失敗につながることがありません。楽観的でくよくよしないため、ストレスを抱え込むことが少ないでしょう。
②物事を客観的に捉えることができる
ストレス耐性が高い方は自分の周囲の環境や起きた物事などに対して客観的に捉えることができ、適切に判断することができます。変に自分のせいだと思い込んだり、どうしようもないことで悩んだりすることがないため次の行動にも移りやすく、結果として状況を打開しやすかったりという傾向があります。
③マイペース・集中力が高い
マイペースで、集中力が高い人は、不測の事態が生じても周囲に惑わされず、自分のペースで適切な対応ができるため、ストレスを上手に避けることができます。自分の心の声にしっかり耳を傾け、感情に左右されず常に冷静に対処できるでしょう。
ストレス耐性が低い人の特徴
一方で、ストレス耐性が低い方にはどのような特徴があるのでしょうか。
①几帳面で責任感が強い
真面目で一生懸命であることは素晴らしい美点ですが、環境との相性などの状況によってはえてしてストレス耐性に影響してしまう可能性があります。
やるべきことに対しての責任感や完璧主義が強いあまり、うまくいかない状況や期待に応えられないときに強いストレスを感じてしまったり、自分を責めてしまう傾向があるため、ある程度自分を受け入れ認めてあげたり、80点主義で行動するといったことも必要になってくるでしょう。
②悩みを引きずりやすい
ストレス耐性が低い人の特徴の一つに、気持ちの切り替えの遅さが挙げられます。仕事上であった小さいトラブルなどをいつまでも悩み続け、他の仕事が手につかなかったり、一日そのことで悩み続けます。
また仕事とプライベートのスイッチが切り替わらないので、いつまでも嫌な気持ちを引きずりがちです。変えられないものに目が向いてなかなか次の行動に移ることができなかったり、必要以上に自責に捉える傾向があることが多いため、次の一歩を踏み出すための「思考を切り替える力」を高めることが必要です。
③怒られるのを避けたり、逃げ癖がある
特徴①では真面目さを挙げましたが、一方で物事を中途半場な状態でやめる、仕事が続かないなどの傾向がある人も要注意です。
たとえば、仕事上で苦手な同僚や上司との間に、何らかのトラブルがありストレスを抱えてしまった場合、仕事を円滑に進めるために問題となっている相手とも向かい合うべきですが、ストレス耐性の低い人は、自分が苦手な人物や状況から逃げる傾向にあります。
そうすると物事を打開したり困難な状況に向き合う経験・力が蓄積されず、ますますストレス耐性が落ちてしまうという悪循環に陥りがちです。
ストレス耐性を鍛えるには?
ストレスに対処するためには、ストレス反応の発生メカニズムの各要因である「ストレッサー」「認知的評価・対処能力」「ストレス反応」に、それぞれ働きかけることが必要です。
※参考:安全衛生情報センター ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
この中でも特に、ストレッサーに対する捉え方(認知的評価・対処能力)の強化について今回は取り上げていきます。認知的評価とは、ストレッサーがどの程度の脅威であるのか判断することですが、その判断は人によって異なります。
なぜなら、その判断には個人の性格や自己能力の評価、自信、信念などが関わっているからです。このような認知的評価を修正することが、ストレス状態を克服する有効な方法になります。
具体的な一つの方法として、「選択理論心理学」という考え方があります。環境や周囲に左右されて一喜一憂してしまったり、物事を過度にネガティブに捉えてしまう人は、「変えられないもの」に集中してしまい視野が狭くなってしまっていることがあります。
視野狭窄から脱却し次の一歩を踏み出すためには、「変えられるもの」に目を向ける(=選択理論心理学)ことが非常に重要です。
※変えられるものと変えられないもの(選択理論心理学:ウィリアム・グラッサー)
ただ変えられるものに注力するといっても、まさにその瞬間ストレスにさらされている中で「物事を多角的に見て柔軟に考える」「ポジティブなことに気付いて自力でコントロールできるものに集中する」ことは難しいものです。だからこそ、再現性高くその視界を切り替えることができる「思考技術」を身に着けることが有効です。
※思考切り替えの観点の理解:「スイッチ&フォーカス」
※参考:レジリエンスとは?向上のメリットと鍛える方法を解説
ストレス耐性のチェック方法
ストレス耐性をチェックする方法やテストなどはいくつかありますが、今回は参考としてリンクアンドモチベーションで提供している個別特性診断「BRIDGE」を活用したストレス耐性のチェック方法についてご紹介します。
(※BRIDGEサーベイはストレス診断ではありません)
※参考:BRIDGEサーベイの「対自分力」の項目
BRIDGEではストレス耐性が低い可能性がある方の特徴としては、
- 強みである項目と対角線上にある項目を発揮しようとするとストレスがかかりやすい
- 「対自分力」が全体的に低いと自己肯定感の低さなどにつながり、ストレスがかかりやすい
ということが言えます。
記事まとめ
いかがでしたでしょうか?現代社会では、グローバル化やIT化により、ビジネスパーソンには感情労働や創造的な仕事が求められ、求められる対応スピードも上がっています。
その中で働く人々は日々ストレスにさらされており、安定的にかつ健康的にパフォーマンスを発揮し続けるためには、ストレスに対応するスキルが必須能力となってきています。
広い意味での「ストレス耐性」は、性格特性から来る変えにくい部分(狭義のストレス耐性)と、後天的に鍛えることができるストレス対応スキル(レジリエンス)から成ります。後者のストレス対応スキルを高めることで、ストレス耐性を高めていきましょう。
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