PDCAサイクルの重要性とは?よくある失敗例と対策方法を解説



PDCAは、多くの企業やビジネスマンが使用する、業務効率化のためのフレームワークです。 しかし、PDCAが提唱されたのは第二次世界大戦後ということもあり、「もう古い」と考える人も多くいます。 しかし、VUCA時代という変化の激しい予測できない状況だからこそ、PDCAはとても有用なスキルです。PDCAを高速で回せるようになると、事業の成長にも個人の成長に寄与します。 本記事では、改めてPDCAがどのようなフレームワークなのか、OODAとの違い、PDCAのメリットやデメリット、PDCAが失敗する要因や効果的に実施するポイントなどについて説明します。

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PDCAとは?

PDCAとは、

・Plan(計画)
・Do(実行)
・Check(評価)
・Action(改善)

の頭文字を取ったものです。Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し回すことで、業務の改善を目指します。「PDCAサイクル」という言い方もありますが、同じ意味を表します。

PDCAは、第二次世界大戦後の1950年代、品質管理研究に取り組んでいたアメリカの統計学者ウィリアム・エドワーズ・デミング博士とウォルター・シューハート博士によって提唱され、一般的に製造工程の改善手法の一つとして使われていました。

現在では、ビジネスや個人の成長にも有用なスキルとして、チームやプロジェクトのマネジメントや、目標に向けて行動し前進するための手法として多くの人が使うフレームワークとなっています。

OODAとの違い

PDCAとよく一緒に紹介されるOODAは、どのような違いがあるのでしょうか。 まず、OODAとは

・Observe(観察)
・Orient(状況判断、方向づけ)
・Decide(意思決定)
・Act(行動)

の4つの行動の頭文字をとったもので、刻々と変化していく状況の中を、臨機応変な判断・行動で成果や結果を導き出すためのフレームワークです。

もともとはアメリカ空軍で生み出された手法で、変化の激しい航空戦において、パイロットが指示を待たずに現場の判断で動けるようにすることを目的にして誕生したと言われています。

PDCAが「計画を立て、行動する」というプロセスを踏むのに対し、OODAは「状況を見て臨機応変にまずはやってみる」ところから始まります。 商談数を上げたい、商品サービスの受注率をアップさせたいといった、既に前例があったり使えそうなデータがある目的の場合は、PDCAが有効です。前提やデータがあれば、比較すべき要素や次の計画もある程度見えるため、効率的に進められます。

一方で、新規事業など、新たな商品やサービスを開発する場面においては、手探り状態からのスタートになるため、OODAを活用しましょう。OODAは計画を立てる時間がない、必要性がない場面を想定して開発されているため、新規事業など新しい発想を必要とする場合や、前例主義を打破したい、イノベーションを起こしたいといった場合に効果を発揮します。

このように、両者はそもそも性質が異なっているため、優劣の比較をするべきものではありません。それぞれの特徴を理解して、「この場面にはどちらが適しているのか」を判断して使うことが大切です。

PDCAのプロセス

ここでは、それぞれのプロセスについて詳細を説明します。

■PDCAを回す際の前提

前提として、PDCAを効果的に回していくためには、

・管理指標
・管理帳票
・会議体

の3つを最終的に用意することが大切です。どのような管理指標を作成するとよいか、についてはPlan(計画)の項目でお伝えしますが、考える際は「SMARTの観点」を活用すると良いでしょう。

SMARTの観点とは、

・Specific(詳細化) 目標を適切にブレイクダウンする
・Measurable(ものさし設定) 行動有無を判断できるようにする
・Action Plan(アクション明確化) 達成に向けたアクションプランを明確にする
・Responsibility(責任者決定) アクションごとに責任者を設定する
・Time-bound(期限設定) アクションごとに期限を設ける

の頭文字をとった、目標を明確にするためのフレームワークです。Plan(計画)で目標を設定する際に大切な観点です。 目標が決まったら、管理帳票を作成する必要があります。管理帳票は目標によってどのような形式が良いかは異なりますが、「IDEAの観点」が役立ちます。

IDEAの観点とは、

・Immediately(即時性) タイムリーな更新ができる
・Display(周知性) 関係者全員が把握できる
・Entirely(一覧性) 関連情報が一元化されている
・Alarm(問題発見性) 問題発生時にアラートが立つ

の頭文字をとった、管理指標を可視化するためのフレームワークです。管理帳票はDo(実行)やCheck(評価)を行う際に必要となるので、Plan(計画)を立てた後はこの観点を使ってぜひ作成してください。

Plan(計画)

ここからはプロセスを具体的に説明します。まず、Plan(計画)はPDCAを回す際のスタート地点です。ここがうまくいくかどうかで、PDCAが成功するかが決まると言っても過言ではありません。

Planの段階では

・目標(KGI)の設定
・目標へ到達するために解決すべき課題の洗い出し
・KPIの設定
・KPIを達成するための解決案の洗い出し

を行い、自分が何を目指し、何を行うのか?を明確にしていきます。 目標の設定自体はなんでも良いですが、進捗を確認できるように必ず期日と定量目標を決めることが大切です。この2つは必ず目標とセットで設定しましょう。目標設定の際は前提の項目でお伝えした「SMARTの観点」も活用してみてください。

課題や解決案を洗い出す際は、プロセスに切ったり、ロジックツリー、5W3Hを使うなど、フレームワークを活用してみてください。漏れ/だぶりが発生しないように考えることが、PDCAを成功させるポイントです。

Do(実行)

Do(実行)は、Plan(計画)で設定した目標や課題、解決案をもとに実現するためのアクションを考え、実行します。

Do(実行)の段階では

・Plan(計画)で考えた解決案を元に、実際のアクションを設定
・アクションの実行度合いを測ることができるよう、定量目標を設定
・アクションをTo Doまで砕き、スケジュール化できるレベルまで細分化

を行い、確実にアクションを実行していきます。

Plan(計画)で設定したKGIやKPIは、結果が出るまでに時間がかかることが多く、簡単にコントロールできるものでもありません。しかし、「決めたアクションを実行するか」は自分自身でコントロールすることができます。アクションを実行した先にKPIやKGIの達成があるので、「何をいつまでにどのくらいやるか」という定量目標を設定し、常にチェックできるようにしましょう。

Check(評価)

Check(評価)では、Plan(計画)で設定した目標がどの程度達成できているのか評価します。

Check(評価) の段階では

・KGI、KPI、アクションの定量目標の達成率を確認
・できなかった要因の振り返り
・できた要因の振り返り

を行い、目標に対する課題や解決案、アクションが適切なのかを検証します。

Check(評価)では、達成率の確認やできなかった要因の振り返りまでは行う人が多いです。しかし、できた要因まで振り返ることで、課題解決の再現性が高くなったり、「できている部分をもっと伸ばそう」など新たな解決案が出てくる可能性もあります。

できなかった要因を振り返ることはもちろん大切ですが、一緒にできた要因も振り返ることで、「自分は達成に近づいている」という自信もつけましょう。達成に向けて前に進む力になります。

Action(改善)

Action(改善)では、Check(評価)で振り返ったできなかった要因やできた要因を踏まえ、目標達成に向けた改善案を考えます。

Action(改善)の段階では、

・できなかった要因やできた要因を踏まえた改善案の洗い出し
・改善案のKPIとアクションの定量目標を設定

を行い、次のPDCAに繋げます。ここからはまたDo(実行)へ戻り、同じ手順を繰り返します。

改善案を洗い出す際には、目標設定から変えるべきなのか、課題設定を変えるべきなのか、解決案やTo Doを変えるべきなのかで次のPDCAが変わります。目標設定から変えるべきなのであれば、新たな目標を設定してP(計画)からやり直す必要がありますが、課題設定や解決案を変えるべきなのであればD(実行)から調整して改めてPDCAを回していきましょう。

PDCAのメリットとデメリット

ここでは、PDCAのメリットとデメリットをご紹介します。

■メリット

PDCAのメリットは主に3つあります。

メリット①目標やアクションが明確になる

1つ目は、目標や取り組むべき課題、アクションが明確になることです。 Plan(計画)の段階で目標を設定するので、組織や個人の目標を明確にできますし、明確になった目標に対する課題設定や改善へのアクションまで具体化されます。

また、目標があることで、達成したい目標との現状のギャップを認識しようとするので、「ギャップを埋めるためにはどうしたらよいか?」と具体的な施策も考えやすくなるというメリットもあります。

事業成果もこのプロセスを重ねることで成長していくため、企業は営業目標等の数値的指標を設定するのです。

メリット②業務改善ができる

PDCAはもともと、製造工程の改善手法の一つなので、正しく使うことができれば着実に業務改善をしていくことができます。目標に対して、何故うまくいかないのか要素分解して仮説を立て、アクションを繰り返していくことで確実に改善へと繋がります。

そのためには論理的な仮説立てや課題の抽出が重要です。課題を洗い出す際は、MECE(漏れなく、ダブりなく)に分類しましょう。方法としては、業務プロセスを細分化してみる他、ロジックツリーで深堀りする、5W3Hを使うなど、ロジカルシンキングで使うようなフレームワークを活用してみてください。

メリット③課題や不足していることを見つけやすい

3つ目は、課題や不足していることを見つけやすい点です。

PDCAはP(計画)のタイミングで、定性的な目標でも定量化し、進捗を検証できるような状態にしています。目標と課題を元に決めたアクションについても、定量的な行動目標を設定しているのでモニタリングが容易です。

したがって、目標と現状のギャップも明確に見えてきます。ギャップが見えれば、

・今の行動が改善に繋がっているのか
・どこに原因があり、何を変えれば改善するのか

について考えやすくなります。

■デメリット

PDCAのデメリットは主に3つあります。

デメリット①PDCAを回すことが目的化する

PDCAを回す際によく陥ってしまうのが、PDCAを回すこと自体が目的になってしまという状態です。これが1番のPDCAを使う際のデメリットと言えるでしょう。

PDCAは、一定の時間をかけて繰り返し実行、評価、改善というプロセスを回すことで改善をしていくフレームワークです。

時間をかけているうちにPDCAを回すことを忘れ、消滅してしまう、Plan(計画)を立てるのみで満足してしまう、目標や課題を意識せずにPDCAを回そうとし、PDCAを回すことが仕事になっていってしまうといった可能性があります。PDCAはあくまで目標達成のための手段です。得たい成果に立ち戻れない人には向いていないと言えるでしょう。

デメリット②無駄な会議が増える可能性がある

PDCAを回すことが目的化してしまうと、目標達成や課題解決のための会議ではなく「PDCAを回すための会議」が増えていく可能性があります。

部下がどんなタスクを行ったかのか、どんなタスクを行う予定なのかを説明するだけの会議になり、よりよいPDCAを回す材料にはならない会議を行うチームはたくさんあります。

PDCAも会議も、あくまで「目標達成や課題解決」を行うためのものです。その前提を外した会議を行わないように気を付ける必要があります。

デメリット③イノベーションを生み出しにくい

イノベーションを生み出しにくいのもPDCAのデメリットだといえます。PDCAは前例があったり使えそうなデータを元に、実行→改善を繰り返して成果を出そうとするフレームワークのため、新規事業などのアイディアを生み出すフレームワークではありません。

従って、新規事業や新たな商品やサービスを開発したいなどイノベーションを生み出したい場面においては、OODAなどのフレームワークを使ったほうが効果的でしょう。

PDCAを回すうえでの注意点

PDCAを回す上で、多くの人が陥る注意点があります。ここでは、気を付けるべき注意点と、陥らないために意識したほうが良いことをお伝えします。

注意点①効果が出るまでに時間がかかる

PDCAは、計画、実行、評価、改善のサイクルを繰り返し回すことで、業務の改善や目標達成を目指していくものです。

PDCAはプロジェクトベースで1つだけ回っているように感じている人も多いですが、実際にはプロジェクトベースの大きなPDCAと、その下に小さなPDCAがいくつも回っている構造になっています。プロセスで説明したように、PDCAのPにおいては

・目標(KGI)の設定
・目標へ到達するために解決すべき課題の洗い出し
・KPIの設定
・KPIを達成するための解決案の洗い出し

を行いますが、KGIを達成するためのPDCAを回すために、課題を細分化して設定したKPIに対して日々PDCAを回している、という構造です。

そのため、PDCA自体は日々回していているので、確実に達成に近づいてはいるのですが、プロジェクト単位でみるとどうしても結果として反映されるまでに時間がかかってしまうのです。

したがって、PDCAは「すぐに成果が出るもの」と捉えず、長い目で「回し続けることで目標に近づくもの」と認識し、ある程度長い時間続けるようにしましょう。

注意点②前例主義に陥りがち

PDCAは計画し、実行した内容を評価することで次の改善案を考え、また実行に移していくという考え方です。

分析の対象はあくまでも「過去に行った内容」であり、「課題を解決するために次に何をするべきか」を明確にするものです。 従って、PDCAを回しているだけでは、新しいアイディアやイノベーションを起こすことは難しいという課題があります。

今までにないアイディアや事業の勝ち筋を考える際には、PDCAではなくOODAなど別の手法を使ったり、同業他社の事例や、全く別業界の事例を参考にしたり、外部の意見を取り入れる、といったPDCAとは違うアプローチを行うことが効果的です。

PDCAはあくまで「理想状態に向けて、前に進み続けるためのフレームワーク」であり、新しいアイディアを生み出すためのフレームワークではないということを認識し、使い分けするようにしましょう。

注意点③PDCA自体が目的化する

PDCAは、理想状態に向けて、前に進み続けるためのフレームワークとしては高い効果を発揮します。一方で、計画を策定・実行し、その結果を検証したうえで、新たな実行案を考える、といったように、慣れないうちはかなりの手間や時間、労力がかかります。

その結果、本来は何か「達成したい目標」という目的があり、それに近づくためにPDCAを回していたはずなのに、いつの間にか「PDCAを回すこと」が目的になってしまうことがあります。

あくまでPDCAは「理想状態に向けて、前に進み続ける」ためのフレームワークであり、目標達成に近づいていないと意味がありません。

PDCAを回すとき、特に計画や実行案を考える際は「この計画で目標達成できるのだろうか」「この実行案は目標達成を考えたときに本当に優先順位が一番高いのだろうか」と問いかけるくせや仕組を作りましょう。

PDCAの失敗原因と対策

広く知られているPDCAというフレームワークですが、「なんだかうまく回すことができない」と思っている人は多いです。ここではPDCAの失敗要因とその対策について解説します。

Plan(計画)のとき

PDCAがうまくいかない人の多くは、このPlan(計画)の時点で問題があることが多いです。 失敗する要因は、

・Plan(計画)を慎重に立てすぎて、実際にDo(実行)まで進めない
・Plan(計画)が不十分で、検証できる状態でない

の主に2つです。

計画が慎重な人は、計画を立てる際に「絶対に間違ってはいけない」と思ってしまい、いつまでも計画ばかりを考え実際に行動に移せない場合が多いです。行動に移すことができなければ、当たり前ですが目標に近づくことはありません。

逆に計画が不十分な人は、感覚で動き出してしまうので「何を行えばよいか」が明確ではありません。結果、課題解決に合っていない施策を実行してしまう、実行した内容を検証しようと思っても比較できる定量のものがなく、できなかった要因を分析できない、といった状況を引き起こします。

したがって、Plan(計画)の段階では「今の時点で1番精度の高い計画を立てて、まずは動いてみる」という意識が大切です。自分は今、慎重になっているのか不十分な状態なのか客観視し、慎重な人は定量目標、課題、解決案が明確になっていればまずは実行に移ってみる、計画が不十分な人は定量目標、課題、解決案が明確になるまでは動かない、というようにバランスをとってみましょう。

Do(実行)のとき

Do(実行)における失敗する要因は、

・計画自体が実行できるレベルで立てられていない
・To Doレベルまで落とし込まれていない
・失敗を恐れている

の主に3つです。

計画自体が実行できるレベルで立てられていない場合は、計画がそもそもない、計画はあっても粗くて実行する内容が不明瞭、実行することが物理的に不可能、などのパターンがあります。この場合はPlan(計画)の段階に戻って計画を立て直しましょう。

To Doレベルまで落とし込まれていない場合は、実行できるまであと少しの段階です。計画した解決案を、スケジュールに落とし込めるレベルまでプロセスを細分化し、やるべきことを行動レベルで明確にします。自分でうまく細分化できないときは、先輩や上司の力を借りながら取り組みましょう。

失敗を恐れている、というのは多くの人が陥りやすい状態です。計画を立てても、いろんな理由から仮説に自信が持てず、行動に移せないのです。この場合は考え方を変える必要があります。そもそも計画は仮説にすぎないので、実際に行動して検証してみなければ課題も見えてきませんし、目標にも近づきません。早めに実行して、失敗してもすぐに仮説を修正することで早く目標達成に近づきます。

Check(評価)のとき

Check(評価)における失敗する要因は、

・きちんと評価をせず、やりっぱなしになってしまう
・計画を立てず、形式的な評価しか行わない

の主に2つです。

きちんと計画を立てても、評価する時間をとらずに行動し続けてしまうことは意外と多くの人が陥りがちな状況です。しかし、せっかく計画を立てて実行していたとしても、その行動が目標達成に近づいていなければ時間を無駄にしてしまいます。評価をできていないと思う場合は、カレンダーやスケジュールであらかじめ評価の時間を押さえておくようにしましょう。

また、計画を立てず、形式的な評価しか行わないというパターンもチーム単位で動く場合は意外と陥る状態です。PDCAは振り返りが大事、と考え、定例で振り返りの会議を押さえるものの、KGIやKPI、アクションの定量目標が定まっていなければ、会議を行っても良い振り返りを行うことはできません。この場合は改めてPlan(計画)の段階へ戻り、評価できるような計画を作成するところから始めましょう。

Action(改善)のとき

Action(改善)における失敗する要因は、

・何を修正するべきなのかわからない
・改善案が適切でない

主に2つです。

何を修正するべきなのかわからないという状態になる理由は、検証対象であるKGI、KPI、アクションの定量目標それぞれの対象範囲がバラバラなため、修正する内容も大きく変わってしまうからです。

達成がそもそも難しそうなので目標設定から変えるべきなのか、優先すべき課題が違っていたようなので課題設定を変えるべきなのか、課題の方向性は合っているが成果が出なかったので解決案やTo Doを変えるべきなのかなど、どこにテコ入れして修正すべきなのかを見極めることが大切です。

修正すべきポイントが明確になったあとは、改善案を洗い出します。改善案はPlan(計画)の際と同じように、ロジカルに抜け漏れなく洗い出すことが大切です。この際に、最初のPDCAの時は優先順位を落として実行しなかったアクションなどにも目を向け、改善案を考えてみるのも良い方法です。 なるべく多くの案の中から実行する改善案を決められるよう、周囲の人の力も借りながら考えましょう。

PDCAを実施するポイント

ここでは、実際にPDCAを実施していくにあたって重要なポイントを解説します。

■計画は具体的に詳細に立てること

1つ目は、計画は具体的に詳細に立てることです。先述した通り、PDCAがうまくいかない一番の原因は、最初のPlan(計画)の時点で失敗しています。

したがって、PDCAを回す際は

・定量目標を設定し、測定可能な状態にすること
・目標と課題の全体像を明確にし、どこに取り組んでいて何にヒットするのか可視化する
・実際にどんな行動をするのか、To Doレベルまで細分化する

という3点を外さないように計画を立てましょう。

目標と行動を具体化することで、何のために何をするのかが明確になり、行動に迷うこともなくなります。そのため、目標達成に近づくのです。

■まずは計画した通りに実行してみる

2つ目は、まずは計画した通りに実行してみることです。どんなに素晴らしい計画を立てられたとしても、まずは実際に行動へ移してみなければ、そもそも実行可能なのか、その計画が良かったのか悪かったのかという検証を行うことができません。不安や心配があっても、まずは行動に移しましょう。

行動した結果分かったことは、どんな状況でどのようなことが分かったのか記録を残しておいたり、計画通りにいかなかった場合は、うまくいかなかった時の状況や、考えられる課題が分かるようにメモを残しておくことで、Check(評価)の段階で分析がしやすくなります。

実際に行動してみた結果を検証し、修正を加えてまた行動して検証するというサイクルを繰り返すことで、目標達成に近づきます。

■タイムマネジメントを怠らない

どんなに素晴らしい計画を立てて、To Doが整理されていたとしても、実際に実行するための時間がなければ意味がありません。

マルチタスクに苦手意識を持つ人は多いですが、例えばチームを率いて何か目標達成をしなければいけない場合は、自分のことだけでなくメンバーの状態にも気を配る必要がありますし、より全体を捉えてPDCAを回していかなければなりません。このような状況で時間がなくなった時に大事なことがタイムマネジメントです。

タイムマネジメントを行う際は、まずは自分が現状抱えているタスクを全て洗い出し、それぞれにどれくらい時間をかけているのか可視化します。タスクを眺めて、捨てられるタスクがあれば捨てて時間を捻出します。それでも足りない場合は、タスクに優先順位を付けて、優先順位の高いものから取り組むようにしましょう。優先順位を付ける際には「重要・緊急マトリクス」などを活用することがおすすめです。

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PDCAを導入した企業事例

実際にPDCAを使って業務改善を実現した会社の事例を3社ご紹介します。

■トヨタ

最も有名な事例の1つは、トヨタ自動車の事例でしょう。

トヨタ自動車では、トヨタ式5W1Hという手法を使ってPDCAを回します。この5W1Hはいわゆる「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」ではありません。Why(なぜ)を5回繰り返し、最後にHow(ではどうやって)を考えるのがトヨタ式5W1Hです。

5回「なぜ、~なのか」と問いかけることで、最初は抽象的だった課題やアクションが具体的になり、必然的に取り組むべきタスクも明確になります。重要度と緊急度を改めて考えながら、具体的なアクションを考えていくことができるので、Plan(計画)を立てる際に役立ちます。

トヨタ式5W1Hは計画を実行したあとのCheck(評価)の段階でも有効です。Check(評価)の段階では、できなかった/できた要因の振り返りを行い、目標に対する課題や解決案、アクションが適切なのかを検証します。その際に「なぜうまくいかなかったか?」「なぜうまくいったのか?」を5回繰り返すことは具体化に役立ち、最後に「次はどうすべきか?」という質問は次のAction(改善)の案を考える際に役立ちます。

また、トヨタのPDCAには「+F」もあります。「F」はFollow(フォロー)を表し、Feedback(フィードバック)と解釈されることもあります。「+F」は、成果やPDCAの精度が上がることを目的としています。

具体的には以下3つを行っています。

・それぞれがPDCAをする意味に関心を持ち続ける
・複数人でPDCAについて議論をする
・成果が出たときほど先を意識する

客観的なFollow(Feedback)があることで、本来の目的を見失わずにPDCAを回し続けるための工夫です。思いこみや視野の狭さによって仮説自体が間違っている、という事態を防ぐことができ、より精度の高いPDCAを回せます。

■ソフトバンク

ソフトバンクで行われているPDCAの事例も有名です。 ソフトバンクで行われているPDCAは、基本的には普通のPDCAの考え方やプロセスと同じです。ただ、ソフトバンクでのPDCAサイクルは「ソフトバンク3原則」に基づいているということが特徴です。

「ソフトバンク3原則」とは、以下の3つです。

①思いついた計画は、可能な限りすべて同時に実行する
②1日ごとの目標を決め、結果を毎日チェックして改善する
③目標も結果も、数字で管理する

一つずつ解説します。

①思いついた計画は、可能な限りすべて同時に実行する

PDCAを回す際の、Pの部分に当たる原則です。普通のPDCAでは、計画を立てる際にある程度優先順位を決め、手段を絞ってPDCAを回します。しかし、ソフトバンクでは最初に計画を絞らず、全ての計画を実行に移すのです。

全ての計画を実行してみることで、有効な方法を抽出してから、その方法に集中して実行していきます。計画の段階で過去のデータ分析に力を入れて、施策を絞って実行するのではなく、まずは実行してみることでPDCAサイクルを素早く回すことを重視しています。

ただ、漫然と実行するだけでは検証できるデータを手に入れることはできません。従って、かならず仮説を持って実行することが大切にされています。

②1日ごとの目標を決め、結果を毎日チェックして改善する

ソフトバンクでは、月単位の「大きな目標」と、ブレイクダウンした日単位の「小さな目標」を設定し、毎日目標は達成できたのか?と明確に勝敗をつけて振り返り、改善し続けます。

目標の立て方は年単位、月単位など逆算して立てていきますが、特に1日単位の目標を立てる際は、

①毎日できること
②具体的なアクションであること

が重要です。

毎日勝ち負けを検証し、是正案を考え続けることで、一番いい方法を探っていき、見つかったらさらに改善を繰り返して磨き上げていく。このような仕組み作りがされているのがソフトバンク流のPDCAの強みです。

③目標も結果も、数字で管理する

ソフトバンクでは数字によって説明することが徹底されています。このように数字をベースにして目標・結果・原因を説明することで、正確に物事を分析することができます。また、数字による管理は、検証スピードの向上にも繋がります。

ただ、1日単位の目標を検証する際は必ずしも数値化することが難しい場合もあります。数値化する目的は「明確に原因を突き止め、改善策を考えられる状態」にすることなので、数値化できなくても必ず◯✕をつけられる状態にすることが大切です。

毎日の検証を明確に行うことができると、毎日改善策を考えるようになるので、成長が加速度的に速くなるのです。このような文化がソフトバンクには浸透しています。

もっと詳しく知りたい方は、『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA―――終わらない仕事がすっきり片づく超スピード仕事術 』を是非読んでみてください。

■リクルート

リクルートではPDCAサイクル(リクルートではPDSサイクルと呼ばれています)をもとに、新規事業開発において「3つのステージと9つのメソッド」という仕組を大切にしています。新規事業開発のプロセスを3つのステージにわけ、それぞれのステージに3つずつのメソッドがあります。

ここでは「3つのステージと9つのメソッド」を簡単に説明し、リクルートがどのような仕組で新規事業開発に取り組み、PDCAを回しているのかを紹介します。

まず、ステージ1は「世の中の不をアイディアへ」という、「世の中にまだ存在していないモデルを生み出す」という段階です。

メソッド① 不の発見

まず最初に、理想の社会の実現につながる潜在的な「不」を探します。消費者や事業者など片方の不満や不便さではなく、両者の「不」を解決し、業界全体を変えるくらいのイノベーションのかけらを見つけます。

メソッド② テストマーケティング

メソッド①で見つけた「不」が、本当に人の心を動かす事業アイディアなのかを検証します。ここで社内外の有識者からアドバイスを受け、企画をブラッシュアップしていきます。

メソッド③ New Ring(インキュベーション)

New Ringという社内のコンテストで、アイディアを事業へとブラッシュアップし、軌道に乗せていきます。何度でも挑戦できるため、一度落選してもPDCAを回してブラッシュアップし、再度提出することも可能です。そうしてビジネス化したものの中には「ゼクシィ」や「スタディサプリ」などがあります。

ステージ2は、「勝ち筋を見つける」「1→10前半」というステップです。このステージで、単なるアイディアが「事業」へと成長していきます。

メソッド④ マネタイズ設計

誰が、なぜ、いくらで、どの予算で、買ってくれるかをデータや顧客の声から突きとめることで、事業の勝ち筋を見つけます。

メソッド⑤ 価値KPI

事業の価値を上げるカギとなる指標を、顧客の評価から探し出します。事業として本格展開するにはどんな条件が必要なのか、都度仮説を立てて検証していくプロセスを高速で回さなければなりません。従って、全員で高速PDCAサイクルを回すことが大変重要です。

メソッド⑥ ぐるぐる図

事業の本格展開に向けてPDCAサイクルを回すためには、現場からの市場変化の兆しが経営へつながるなど、縦の情報の行き来と、異なる役割の人材が並行して洞察を加え合うなど横の情報の行き来がスムーズに行われることが必要不可欠です。この情報の行き来を高速で行うことでPDCAサイクルを加速させ、新規事業の成功率をあげています。

ステージ3は、ステージ2で発見された勝ち筋やKPIを実行して、「爆発的な拡大再生産」につなげるのが、「1→10後半」というステップです。

メソッド⑦ 価値マネ

ステージ2で見つけたKPIによって目標の優先順位を絞り込み、日常的にPDCAを回すことで現場の「型化」と、サービスの「改善」に活かします。これによって事業の爆発的な拡大を狙います。

メソッド⑧ 型化とナレッジ共有

メソッド⑦を通じて生み出した成功事例を分析し、「型化」して組織へ横展開します。標準化された「型」を当たり前の基準として浸透させます。「型」という基礎体力をつけることで、より早く成長する土台を作ります。

メソッド⑨ 小さなS字を積み重ねる

新規事業は爆発的に伸びたのち、成長幅が減速し始めます。この状況を現場の情報からいち早く捉え、PDCAサイクルを高速で回し続けることで、「当たり」の施策を増やし続けます。このサイクルを繰り返すことで、市場でシュリンクせずビジネスサイクルを進化指し続けます。

より詳しく知りたい方は『リクルートの すごい構“創”力 アイデアを事業に仕上げる9メソッド』を是非読んでみてください。

PDCAを実践する上でおすすめの本

鬼速PDCA 冨田和成

「PDCAほどわかっているつもりでわかっていない、そして基本だと言われているのに実践している人が少ないフレームワークも珍しい。」と著者は言います。

著者が10年以上の実践を通して磨かれてきたPDCA術を、誰でも実践できるように、各フェーズごとにわかりやすく解説されている本です。 圧倒的な「量」と「質」でPDCAを解説しています。PDCAで決定版と言えるでしょう。すぐに成果を出したい、PDCAの考え方や使い方を基本から詳しく知りたい人におすすめです。 図解版もあるので、読書が苦手な人は図解版をお選びください。

自分を劇的に成長させる! PDCAノート 岡村拓朗

この本では、ノートを使ってPDCAを回す方法が紹介されています。

著者は、多くの人がPDCAを回せないのは、「PDCAを回す3つのルールが理解されていないから」と言います。ノートを使うことで、自然とPDCAが仕組み化・習慣されるようになり、あらゆることが改善され、成果を出せるようになります。

著者自らが開発した、PDCAノート術を余すところなく公開している本です。自分自身を変えたい、もっと成長したいと思っている人におすすめの本です。

記事まとめ

今回はPDCAについて解説しました。もともと製造工程の改善手法の一つとして使われていたPDCAですが、目標の達成に向けてあらゆる課題や問題に適応できる効果的な手法です。

特徴やポイントを理解して運用すれば、高い成果を出せるフレームワークなので、本記事を参考にしながら部署やチームの成果、自身の成長に繋げていただければ幸いです。

著者プロフィール

  
木藤 綾佳
【プロフィール】 リンクアンドモチベーション入社。以降、大手企業向けのコンサルティング部隊に所属。 営業企画として人材育成サービスに関するマーケティング施策に携わる。
  ▼【管理職育成のポイント】が分かる資料はこちら マネジメント育成の手引き

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