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アサーティブ・コミュニケーションを用いた職場づくりとは?

アサーティブネス(Assertiveness)とは、自分も相手も大切にする自己表現という意味です。そこから派生して、自分の言いたいことを大切にして表現すると同時に、相手が伝えたいことも大切にして理解しようとするコミュニケーション手法を「アサーティブ・コミュニケーション」と呼ぶようになりました。
本ページでは、職場におけるコミュニケーションに特化し、アサーティブ・コミュニケーションが今のビジネスシーンで必要とされる理由と職場における浸透施策を検討していきます。


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アサーティブ・コミュニケーションとは?

アサーティブ・コミュニケーションが表すもの

多くの社会学領域の言葉と同様に、アサーティブ・コミュニケーションという言葉も心理学における認知行動療法からきています。「経営者」対「監査人」となる監査シーンにおいて使われる「アサーション(assertion)=主張」等とは意味が異なり、「自他を尊重した自己主張手法」と言われ、コミュニケーションをより円滑にするスキルの1つと考えられています。

アサーティブ・コミュニケーションの成り立ち

「アサーティブネス」という考えは70年ほど前のアメリカで生みだされ、人種やジェンダーの差別是正を求める活動等において「いかに自己主張をするか」を探る中で発達してきたと言われています。
日本においては認知行動療法のトレーニングの1つとして紹介されました。「アサーション」という言葉の日本語の直訳は「主張」や「断言」ですが、「アサーティブネス」や「アサーティブ・コミュニケーション」を意味に該当する日本語がなく、多くの場合そのままカタカナで用いられています。
では、「アサーティブ・コミュニケーション」とはどのようなものなのかをご説明していきます。


2つの“ノン・アサーティブ・コミュニケーション”

アサーティブ・コミュニケーションに関する過去の主な研究を見ると、コミュニケーションスタイルを3つに分類しています。 アサーティブ・コミュニケーションと2種類のノン・アサーティブ・コミュニケーション(受身的ノン・アサーティブ・コミュニケーション/攻撃的ノン・アサーティブ・コミュニケーション)です。

■アサーティブ・コミュニケーションの3つの分類

出展:Gerraard B,Boniface W,Love B:Interpersonal Skills for Health Professionals,Reston Publishing Co,1980


アサ―ティブ・コミュニケーションの詳細をご説明する前に、「アサーティブではない」コミュニケーション=“ノン・アサーティブ・コミュニケーション”がどのようなものなのかをみていきます。


受身的なノン・アサーティブ・コミュニケーション

受身的なノン・アサーティブ・コミュニケーションとは、自分の意見を伝える場面でも自己主張せず、相手側に不備があったり、相手からの情けがあったときだけうまく自分の主張が通るようなスタイルです。
一見相手を思いやっているように見えますが、後になって不満を言っていたり、そもそも意図が伝わっていないなど、結果的に自分にも相手にも不利益をもたらすことになることが多々あります。そしてこのスタイルの人の多くが「自分がしている気遣いは相手も返してくれて当たり前」と思い込んでいて、相手が自分と同等の気遣いを返してくれないと不満に思います。
当然その相手方にはなぜその人が不機嫌になっているのかが伝わらないため、お互いに大きなストレスを生む関係になりがちです。




攻撃的なノン・アサーティブ・コミュニケーション

「攻撃的なノン・アサーティブ・コミュニケーション」は、自分の意見は主張するものの、相手の気持ちや意見を尊重しないために自己中心的に見え、結果的に自分の主張も受け取ってもらえないようなコミュニケーションです。単に「アグレッシブ=攻撃的」と表現されることもあります。相手はその場で黙り込むことが多いため、本人は自分の意見が通って勝利したように思うかもしれませんが、「今後関わりたくない人」と思われて避けられるようになります。
このようなコミュニケーションスタイルが多い人の根底には「自己否定的な感情」があるとも言われます。いわゆる「手負いのケモノ」状態で、自分の弱点を隠そうとして攻撃的な反応をしていると考えられています。





なぜ今、職場でアサーティブ・コミュニケーションが注目されているのか

このような個人的な問題とされてきたことが、なぜ今職場の問題として注目されつつあるのでしょうか。

理由①退職防止に有効な人間関係向上施策

退職理由の上位に「人間関係の良さ(悪さ)」が上がっているのは昨今よく取り沙汰されているところです。
職場の人間関係を改善すると言っても根本的解決策はなかなか見当たらず、「ランチ会や飲み会を経費で実施する」「社内チャットルームを導入する」「上司と部下の1対1の面談の場を持つ」など一時的なイベント導入に留まっていることも多いです。 それに対して、コミュニケーションは職場においては日常的に頻度高く行われますので、改善すれば大きな効果が得られます。なかでも「自己主張」という互いに緊張感の高い場面で用いるのに有効なアサーティブ・コミュニケーションの習得は、人間関係改善に大きな効果が期待できます。




理由②メンタルヘルス対策

労働政策研究・研修機構の調査によれば、事業所(職場)が認識する「メンタルヘルス不調者が現れる原因」の1位は本人の性格、2位は職場の人間関係となっています。
アサーティブ・コミュニケーションは心理学の認知行動療法として当初取り入れられたことからもわかるように、メンタルヘルス向上に有効です。特に「受け身的なノン・アサーティブ・コミュニケーション」をとりがちな人はいわゆる「生真面目」タイプで、メンタルヘルス不調に結びつきがちと言われます。 自らトレーニングに取り組むことはもちろん、会社としてもメンタルヘルス対策の1つに取り入れることは有効な手段でしょう。

出展:「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する」調査結果


理由③ハラスメント対策として

メンタルヘルス対策とともに、企業として悩ましい問題の1つが「ハラスメント」です。 職場の雰囲気とストレスの相関関係を調べるある調査においても、下記のように「温かみや信頼関係」がストレス低下につながるという調査結果がでていますが、「温かみ」を強化するのはむずかしいものです。 出展:『職場のコミュニケーションに関するアンケート調査』

よって企業においてはハラスメント対策としては企業のリスク管理が重視され、ケースワークなどを用いた研修が積極的に行われていますが、超えてはならないOBゾーンを伝えることに留まっているのではないでしょうか。 アサーティブ・コミュニケーションでは具体的にどのようなコミュニケーションが攻撃的であるかを認知させ、どのように変えればよいかを理解させることができますので、職場におけるハラスメント対策の1つとして有効です。
さまざまな目的で活用できる可能性を秘めたアサーティブ・コミュニケーションですが、ではその実践方法を具体例とともに見ていきましょう。




アサーティブ・コミュニケーションの実践 
~アサーティブ・コミュニケーションの4つの柱~

では、実際のアサーティブ・コミュニケーションの手法を4段階に分けて説明します。

ステップ①「空気」ではなく、「事実」を見る ~妄想のほとんどはウソ?~

ファーストステップは「事実を正しく受け取る」ことです。 「空気を読まない」とは、自分勝手をしろというわけではありません。 あなたがいつも読んでいるその「空気」は本当に正しいのかを、一度自問していただきたいと思います。 眉間にシワを寄せて、パソコンに向かってだまって仕事をしている相手に対して、 「不機嫌そうだから、今は声をかけないでおこう」 と思ったとします。でも実はもともとそういう顔なだけ、ということは多々あります。
それにもかかわらず勝手な妄想をして、ビクビクしながら声をかけたりしてはいないでしょうか。 それでは不機嫌でなかった人も不審げな表情で答えてしまうことにもなるでしょう。 政治家や行政で一時取り上げられた「忖度(そんたく)」も、同じ仕組みで行われ、世間の批判をあびることになりました。

  • 「不機嫌そう」ではなく、「今は誰とも話をしていない」「眉間にシワがある」と捉える
  • 「特別扱いをしてほしいと思っている」のではなく、単にその人に●●という肩書きがあると捉える
  • 「若い人だから早く帰りたいと思っている」のではなく、「同じ職場で働いている人」「自分が年上で、相手が年下」と捉える
  • 「苦手な上司」ではなく、単に「上司」として見る

自分がどう認識しているかは、自分だけの問題であって相手には無関係です。 事実ではないことを心配して、伝えたいことを伝える機会を逸することのないように、一度自分の見方をリセットし、主観を排除して、事実のみを客観的に捉えることを心がけるところがスタートになります。


ステップ②「説得」ではなく「共感」する ~アニメ ドラえもんに学ぶ~

「自分の意見を伝える」と言うと、強く言わなければいけないと思うかもしれません。アサーティブ・コミュニケーションは、自分も相手も大切にするコミュニケーションスキルですので、一番重要なのは「共感」です。よって会話の最初には説得ではなく、自分自身の状況を相手に説明し、「あなたもOK、私もOK」を互いに紡ぎます。
「今あなたと話したいと私は思っている」
「あなたがこういうことをして私は悲しい」
という作為・不作為の希望を感情とともに相手に伝えましょう。

わかりやすい例として、『ドラえもん』から引用してみます。 しずかちゃんは「のび太さんが勉強がんばってくれてうれしい!」「そんなのび太さんを見るのは悲しいわ」と、相手にしてほしいことを感情とともに伝え、相手の共感を得ます。もししずかちゃんがジャイアンのようなコミュニケーションをしたら・・・
「のび太さん、なんでいつも勉強しないの!?」
「のび太さんのくせに、私の視界に入らないでよ!」
と、ここまでは言わないと思いますが、このように相手(のび太くん)が共感できない前提を突きつけて、一方的に行動を変えることを求めるのではないでしょうか。こんなしずかちゃんはやっぱり見たくないですよね。

次にいつものジャイアン「のび太のクセに、オレサマに口答えするな!(暴力)」、これをアサーティブにすると、
「のび太の意見はわかった。確かにそうだよな!ただオレはさ・・・」
いかがでしょうか。ぜひ日常のコミュニケーションにおいても思い浮かべて流用したいと思います。


ステップ③「命令」ではなく「提案」する ~語尾に注意しましょう♪~

互いの間に共感の土台を作れたら、いよいよ自分の意見を伝えます。 ここで「命令」という形で自分の考えを押し付けてしまっては、ここまで培ってきた共感が台無しです。注意するのはその語尾です。
「〜〜しなさい」「××してください」ではなく、「◯◯しませんか?」「してはどうでしょうか」と相手に提案をしましょう。 表面的に伝わる印象というのは大きく物事を左右します。 語尾の影響の大きさを表すエピソードを1つご紹介します。 中身も外見もかなりコワモテな上司がある日いきなりメールの最後に「♪(音符マーク)」を付けるようになりました。
業務を指示するいつものメールの最後に、「以上を対応してください。よろしく♪」。 書類の提出期限を守れなかった部下へ、「ちゃんと提出期限を守ってください♪」。 部下たちは最初の頃は打ち間違いだと思っていたようですが、厳しいフィードバックでも「次回はしっかり頼む」のあとに「よろしく♪」と書いてあると少しほっとして、フィードバックを怖がらずに受け取れるようになったそうです。 (実はその上司は、自分の上司に言われて「メールの最後に音符マークを付ける」ということを自身の業務として機械的に対応していただけだったそうですが・・・)

ステップ④「否定」ではなく「受容」する ~ダメ!口ぐせ!~

条件反射的に「いや・・・」「でも」と口にする人がいますが、それは禁物です。 せっかくここまできたのですから、その一言をまずはぐっとこらえましょう。 そのために一番有効な方法は、「受け入れられなくても当たり前」とあらかじめ思っておくことです。 そうすれば相手の答えがYesであってもNoであっても、余裕の笑顔で「よくわかります」と答えられるようになるでしょう。 そのうえで、それでもやはり伝えたい意見があるなら、代替案を伝えましょう。


4つのステップの実践例
~上司「例の件、どうなってたかな?」~



上記の①〜④のステップに近しい方法として、「DESC法(デスク法)」と呼ばれるフレームワークでまとめられていますのでご紹介します。

DESC法


もうがまんしない!生きづらさを解消するために

ここまで見ると、アサーティブ・コミュニケーションを行うことはかなり面倒だなと感じるかと思います。でもどこかで、グサッと心に思い当たるシーンがあるのではないでしょうか。

もし自分が、がまんせずにイヤなことはイヤだと言えたら。
もし上司が、厳しい指摘をやめてくれれば。
もし後輩が、「えっ!」「いや・・・」「でも・・・」という口ぐせをやめてくれたら。
もしあの部長が、いつも笑顔でいてくれたら。
もし、うちの職場で、意見が活発に交わされたら・・・。

そうです。 自分だけではなく、自分の周りの人もアサーティブ・コミュニケーションを習得してくれることが、あなた自身ががまんしないこと、真の生きづらさの解消につながります。これまであきらめてきたことを実現するには、並大抵の努力では足りないかもしれません。 それでもまずは自分の職場でその一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
職場にアサーティブ・コミュニケーションをあふれさせる方法を見ていきましょう。

アサーティブ・コミュニケーションによるがまんしない職場づくりの実践
~職場変革の3つのステップ~

変革に向けた心理学的土台

どんなに小さな職場であっても、1つの組織を変革するのはむずかしくて勇気がいることです。 何かのきっかけで変わったとしても、気が付くと元に戻ってしまっていたり。 リンクアンドモチベーションでは、態度変容を促すために必要不可欠な要素をまとめ、どこでも再現可能な技術として用いていますが、ここではその「コツ」をつかってアサーティブ・コミュニケーションを広める職場変革方法をご紹介していきます。




【Unfreeze:解凍】自分が「ノン・アサーティブ」であるという気づき

個人の態度変容、職場変革でのファーストステップは「Unfreeze:解凍 変わるきっかけの醸成」です。自分で「変わりたい!」「変わらなきゃ!」と強く思わなければ、いくらやり方を教えられてもやりません。 凝り固まった概念を“解凍”し、職場メンバーに「自分はアサーティブ・コミュニケーションの習得が必要だ」と自覚してもらうための土台づくりから始めましょう。

①職場サーベイ、個人サーベイの活用

各企業で実施されている職場サーベイや個人サーベイの場で、特にコミュニケーションの項目に注目して話し合ってみましょう。

②専門的なアンケートの活用

アサーティブ・コミュニケーションの専門的なトレーニングで用いられるアンケートを活用することも、職場メンバーの気づきを促す方法としては有効でしょう。 以下はアサーション・トレーニングの日本の第一人者である平木典子氏考案の自分の考え方を知るチェックシートです。回答結果を周囲の人と比べてみると、「自分の考え方≠他の人の考え方」であることが客観的に理解することができると思います。

出典:平木典子『改訂版アサーション・トレーニング』(株)日本・精神技術研究所


いきなり「アサーティブ・コミュニケーションが必要です!」と伝えるのではなく、こうした機会を通じて職場のメンバーが、
「自分のコミュニケーションで不快な思いをしている人がいるかもしれないな」
「あの人が不機嫌な理由って自分が思っていたのと違ったのかな」
そんなことを思ってくれれば、まずはファーストステップ成功です。


【Change:変化】アサーティブ・コミュニケ―ションの具体的手法を学ぶ機会をつくる

職場メンバーがアサーティブ・コミュニケーションの必要性を理解してくれれば、いよいよ具体的手法を学ぶ機会をつくります。これは一般的なコミュニケーション研修でもいくつか取り入れられているのでそれらを活用することももちろん可能です。 このときに重要なことは、「自分にもできる」と思ってもらうことです。
「あの部長に遠慮せずモノを言うなんてできるわけがない」
「あの部下が素直に言うことを聞くなんてあるわけがない」
そんな思い込みを捨て、実現したい職場の未来を共有し、「みんなで一緒に変わりましょう!」「やればできる!」を伝えることに重点を置きましょう。


【Refreeze:再凍結】アサーティブ・コミュニケーションを職場で実践する

職場変革において、「変革」よりも重要なことは、「元に戻らせないこと」です。 ダイエットで言うところの「リバウンド防止」です。 そのためには職場で意識して実践をすること。そのための「仕組み」をつくることが有効です。

    「アサーティブ」という言葉を上司が積極的に使う メールの最後は必ず励ましで終えることを課す 日報で「今日のアサーティブ・コミュニケーション」を共有させる 元気なあいさつを全員でする
できれば毎日簡単にできることで、目に見える形にすることがコツです。



アサーティブ・コミュニケーションに一番必要なのは「自分を大切にすること」

自分の意見を主張する方法として昔から数々のスキルが形にされてきましたが、 なかでもこのアサーティブ・コミュニケーションの特徴は 「自分の意見を主張するために、自分と相手を大切すること」を伝えている点です。

『自分の意見を主張するために相手の意見を大切にすること』 ここに大きな逆説があるのにお気づきでしょうか。 自分の意見を主張するという目的で、相手の意見を大切にすることはできるのでしょうか。 アサーティブ・コミュニケーションのトレーニングにおいてはこの逆説に対して、自分自身を大切にすることの大切さを説いています。

『相手を大切にしようと思ったら、自分をまず大切にしなければならない』 これの逆説もまた同じです。
真のアサーティブネスに向けて、一人ひとりが、そして一つひとつの職場が、組織が取り組んでいくことによって、職場の活性化が図られることを祈っています。





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