自分自身のキャリアと向き合うことで得られる、女性社員のさらなる成長のきっかけ

2004年より本格的に女性活躍支援・促進施策に取り組み、 制度や環境を充実させてきた株式会社東芝。

その結果、女性役職者比率を飛躍的に伸ばすなど、 一定の成果は得られたものの、一方で新たな問題も浮かび上がってきた。

その問題を解決するために、原因をどのように捉え、 女性社員にどのような機会を提供することで彼女たちに変化のきっかけを与えることができたのか。 株式会社東芝 多様性推進部 きらめき企画担当の原、青木両氏にお話しいただきました。






女性活躍推進におけるこれまでの取り組み

当社は男女共同参画を推進する社長直轄の組織として、20 04年に「きらめきライフ&キャリア推進室」を立ち上げました。 これは現在の「多様性推進部」の前身となる部署です。

きらめきライフ&キャリア推進室では、女性の「採用数増加」「養成」「離職率減少」 という3つの施策を展開することにより、女性のステップアップ支援を行ってきました。

様々な取り組みのなかで大きなインパクトがあったのは、「きらめき塾」です。 「きらめき塾」は次代の女性リーダーを養成する時限的な施策として、 女性の役職者候補者層を対象に実施した合計2週間の集中研修です。 「管理スキルの向上」と「プロ意識の醸成」に主眼をおいた 「きらめき塾」の卒業生からは多くの役職者が誕生しました。

他の様々な取り組みの成果もあり、2004年度の女性役職者比率が0.9%だったのに対し、 2010年度には3倍以上の3.4%にまで引き上げることができたのです。



女性活躍推進に取り組むなかで新たに見えてきた課題

2007年には組織名を「多様性推進部」へと変更し、活動対象を女性従業員だけでなく、 障がい者や外国人、高齢者まで広げました。 活動対象を広げるなかで、女性のステップアップ支援については一定の成果を得られたという認識もあり、 2010年度の年間プランには、女性の活躍に関する施策は組み込んでいませんでした。

しかし、当時の人事担当役員から「女性役職者の比率が伸びてきていると言ってもまだまだ十分なレベルではない。 現場レベルで、果たして本当に女性が男性と同じように活躍できているのか」という疑問を投げかけられました。 そこで、改めて現場の女性の声を吸い上げるところからスタートしたのです。 計6事業所、合計28人の若手女性社員にインタビューを実施したところ、 「評価も、教育・育成の機会も男女平等だと認識している」という回答がほとんどでした。

しかし一方で「上長から日頃の業務に対するフィードバックはあっても、中長期的なキャリアパスの話はない」 「長く働きたいとは思うが、定年まで働くイメージができない」という声もありました。 また、2010年6月に社内で実施した意識調査の結果を、30代の社員にフォーカスして 男女別の結果に差があった設問をピックアップしてみたところ、 「リフレッシュできている」「過剰なストレスを感じることなく働くことができている」 「仕事の量は適切である」という3つの設問については、女性のほうが高い結果でした。

一方、「あなたの仕事は、能力の向上とともにステップアップしている」 「あなたの仕事は、自分の能力を伸ばしてくれる」「日頃からイノベーションを起こす取り組みを実践している」 という3つの設問については、男性のほうが高かったのです。 これらのインタビューや調査から、「男性と比較すると、女性は仕事においてチャレンジされる機会が少なく、 仕事の負荷を男性ほど感じることがないのではないか。その結果として、本人は男女平等だと認識していても、 知らず知らずのうちに男女の成長のスピードに差がついてしまっているのではないか」と推測しました。

これまでは両立支援制度を充実させることで、女性社員の活躍を促してきました。 しかし制度が整った上で改めて全体を見渡してみると、それぞれのキャリアに対する感じ方・考え方の違いなどから、 どんなに整備された環境があっても十分に活かせず、自身の活躍(チャレンジ)へと繋げることができていない社員も 多いように思いました。



女性社員向けに、リンクアンドモチベーションのキャリア研修を導入した背景

施策を検討するにあたって、「上司を教育することで、女性の部下によりチャレンジする機会を 与えるようにすべきなのでは」との考えもありましたが、もともと当社は意欲のある社員に対しては 積極的に仕事を任せる風土があります。

そこで、「まずは女性社員が意識を変えることで、上司から『チャレンジする機会を提供したい』と 思われるような存在になってほしい」という想いを込め、 彼女たちが自ら成長していこうとする意識を醸成する場として、 女性社員向けのキャリア研修を実施することに決めました。 意識啓発をするためには、参加者に深い気づきを与えることが必要です。 その上で着実に女性社員の変革に繋げていくために、よりクオリティの高いプログラムを、 個々人の意識に直接働きかけられるような影響力のある講師にお願いする必要があると考えていました。

リンクアンドモチベーションさん(以下LM)からは、 女性において、「自分のキャリアは自分でマネジメントするものである」という“気づき”が 成長の過程で重要な要素であること、女性がキャリアについて悩み始める28歳位までに、 仕事で一皮むける経験をすることが、その後のキャリアに大きく影響する可能性が高いこと、 そして女性がキャリアを考える上では、「川くだり」※の考え方を伝えることが有効であることについて お話しいただきました。

その内容は私たちの考えとも一致し、とても納得することができましたし、 LMの方は皆さんとてもモチベーションが高く、安心して研修をお任せできると思うことができたので、 今回のキャリア研修を導入することにしました。





キャリア研修のなかで印象に残っている場面

まずは素晴らしい講師の方々を派遣していただけたことに感激しました。 研修中、講師の方ご自身が経験されてきた、キャリアにおけるターニングポイントについても触れてくださいました。 たとえば、かつて海外に転勤になられた際、部下からも「日本人のくせに」「日本人になにが分かるんだ」と 差別的な発言を受け、誰も言うことを聞いてくれないような厳しい状況でも、 日本人とか外国人とか関係なく、メンバー一人ひとりと目線を合わせて 腹を割ってコミュニケーションを取ることの大切さに気づき、環境を改善させたこと。

他にも、ご家庭の事情で、女性であるご自分が息子さんを養っていかなくてはならなくなった際には、 もともと弱いと思っていた自分が強くなることができ、 「働かなくてはいけない環境をつくってくれたこと」を 息子さんに感謝できるようになったことなどもお話しくださいました。

そのような経験談を通して、人生にはいろいろな転機があり、 「こんなはずじゃなかったのに」ということが起こってしまうものだが、 自分のキャリアをどのようにつくっていくのかはそれぞれの考え方と選択にかかっていること。 人生でどんなことが起こっても大抵はなんとかなるものだが、 「自分がどうなりたいのか」「どうしていきたいのか」という軸からはブレずにいることが重要であること。 環境は必ずしも自分の思ったとおりにはならないが、意志があれば必ず自分の人生は切り開かれていく、 といった内容にはとても深みがあり、「こういう人になりたい」と思った参加者も多かったようです。

キャリア研修の内容については、「『川くだり』の考え方を知ることができてよかった」という声が非常に多かったですね。 「これからずっとキャリアを築いていく」、 もしくは逆に「家庭中心でやっていく」と決めている女性なら大丈夫だと思いますが、 結婚や出産などで仕事が中途半端な状態になってしまい悩んでいる女性は、 そのように「悩む」ことをネガティブに捉えがちです。

まさに私自身、「会社からしてみると、はっきりとしたキャリアビジョンがなく、 いつまで仕事を続けられるか分からない社員を雇っていることはデメリットなのではないか」と思っていました。 しかし「川くだり」の考え方を知ると、悩むことは決して悪いことではなく、 悩んだ上で立ち止まってしまうことが問題だと思えるようになりました。

そして、自分なりに前向きに日常を積み重ねていけばよいのだと分かり、 私自身、とても救われた想いがしました。
また、じっくり時間をかけて、自分たちのこれまでのキャリアを紐解いたこともいい機会になったようです。

仕事へのモチベーションが入社してからどのように上がったり下がったりしたのかを振り返り、 仕事に対する自分のポリシーとは何なのかを洗い出しておくと、 今後の人生で迷うことがあっても選択がしやすくなりますからね。 この研修の受講対象とした年齢層(目安として28〜35歳)もよかったと思います。 研修後のアンケートを見てみると、多くの参加者が「この研修をぜひまわりの女性社員に薦めたい」と回答していました。

28歳以前だとまだあまり深刻に悩む機会がなく、35歳以上になるとすでに悩みきった上で 自分なりの結論が出ていることが想定されるため、このような研修に参加してもあまりピンとこないかもしれません。
将来設計において第2・第3の選択肢が出てくることの多い年齢層である彼女たちを、 今回の研修対象者としたことは正解だったと実感できました。

加えて、同世代で、同じ東芝グループ内ではあっても異職種の女性社員同士が集まる機会も少ないですから、 このキャリア研修を通してコミュニティーやネットワークができたことも大きかったです。
職種が違うと考え方や価値観も異なってきます。 ですから、部署や職種を越えて接するだけでもコミュニケーションが活性化し、刺激を与え合うことができたようです。



これからの多様性推進への想い

今後は、女性だけではなく、多様なメンバーで構成されている組織を どのようにマネジメントしていくのかが重要になってくると思います。 「多様なメンバーがいると新しいものが生まれる」という考え方は多くの社員が納得しますが、 それがどう業績に結びつくのかと問われると、残念ながらそれについての因果関係が示されたものはありません。

さらに、多様なメンバーは「上手にマネジメントしないと、それぞれが違う方向を向いてしまい、 バラバラな組織になってしまう」という危険もあります。 ですが、「そこをうまく乗り越えて組織をまとめたときにこそ、イノベーションが生まれ、 会社の成長に繋がっていく」という考えのもと、どのように組織をまとめていくべきかについて、 「ダイバーシティマネジメント」の観点から取り組みを進めていきたいと考えています。


※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。




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