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エンパワーメントの定義とは?
導入のメリットやデメリットと運用事例を紹介




最近、エンパワーメントという言葉を耳にすることが多くなったのではないでしょうか。実はエンパワーメントというのは、VUCAの時代と言われる変化の激しく先の見えない環境において、企業が生き残っていくためにはとても重要なキーワードになっています。

この記事ではエンパワーメントという言葉の定義やメリット/デメリット、導入していくうえでの注意点などを紹介していきます。より良い組織作りのためにお役に立てれ場幸いです。 


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エンパワーメントとは?

エンパワーメントは、「力(権限)を与える」という意味のempowerから派生してできた言葉です。また、組織のひとり一人が自ら意思決定を行い、自発的に行動を起こすことができるようになることを表しています。

もともとこのエンパワーメントの概念は、1976年のソロモン(B.Solomon)による著書「黒人のエンパワメント:抑圧されている地域社会によるソーシャルワーク」にて重要性を指摘されるようになりました。

そして、介護におけるエンパワーメントの概念をソーシャルワークの領域に初めて取り入れたという歴史的背景があるのです。

その後、1950年から1960年代の自由公民権運動や1970年代のフェミニズム運動などの社会変革活動が活発になったことによって、エンパワーメントの考え方は世界中で注目されるようになりました。

近年の日本においてもエンパワーメントは注目されており、リンクアンドモチベーションでは、マネジメントにおけるやり方を、4つのタイプに分類しています。

①正すマネジメント
②教えるマネジメント
③励ますマネジメント
④任せるマネジメント

そのうち、「任せるマネジメント」ができている仕事が、部下に対してエンパワーメントできている状態だと言えるでしょう。



ここで最も大事なことは、部下と上司の間で、どの仕事をどのタイプでマネジメントするかをすり合わせることです。部下ができないと思っている仕事を無理やり任せることは、上司の無責任に値する行為になりかねないので注意しましょう。

分野別に異なるエンパワーメントの定義

エンパワーメントという言葉は、ビジネスの世界では「権限委譲」や「能力開花」などという意味で使われることが多いですが、他の領域では異なる意味合いで使われることもあります。その違いについて、「教育」「福祉/介護/看護」「市民運動/国際開発」の3つの領域で解説していきます。

■教育

教育の領域におけるエンパワーメントという言葉には、「人は生まれながらにして誰もが素晴らしい力を持っており、人生を通してその力を発揮し続けることができる」という意味をがあります。つまり、何かを教えるのではなく、人間の本来持つ能力を信じ、引き出すという意味合いで使われることが多いです。

例えば数学の問題を解くとき、毎回手取り足取り教えると、自発的に問題を解決する力を養う機会を奪うことになってしまいます。そうではなく、自分で問題を解くところを見守ってあげることで、自分自身で試行錯誤しながらうまく解く方法を発見できるように教育していきます。

■福祉/介護/看護

福祉/介護/看護の領域においてもエンパワーメントという概念は重要視されています。これらの領域では、利用者または患者の自立的な生活を送ることが最終ゴールになります。

そのため、エンパワーメントという言葉は「日常生活において自分自身が主人公になるために自分で意思決定する力をつけて、自ら生活や環境をコントロールできるようにする」という意味で使われることが多いです。

■市民運動や国際開発

もともとエンパワーメントという概念は「権威付け」という意味で使われていましたが、ブラジルの教育思想家であるパウロ・フレイレ氏が識字教育で偉業を成したことにより、「読み書きができるようになることで、自分の境遇を理解し、自分の生活を変えていける」という社会学的な意味合いが付与されるようになりました。

つまり、「当事者自身の意識化」「能力の獲得」「生活の変革」の3つの概念が新たに付与されるようになり、抑圧からの解放を求めて様々な運動や国際開発に広がっていきました。

企業におけるエンパワーメントのメリットとデメリット

ここまでエンパワーメントとは何かを説明してきました。 それではビジネスの世界でエンパワーメントを促進することでどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

■エンパワーメントのメリット

①自立型人材の育成につながる

任せるマネジメント(エンパワーメント)を推進することで、メンバーにはストレッチなゴールセットがされることになります。それによって自分で考えながら仕事に取り組むことができるようになります。

つまり、難しい課題に対して、自発的に意思決定し、試行錯誤をしながら進めていくプロセスはメンバーの自立を促し、成長を促進することができます。

②個人の能力が最大化される

任せるマネジメント(エンパワーメント)を行うことで、メンバーの成長を促すことができると同時に、リーダーやマネジメント層も一段上の仕事に取り組むことができるようになります。

つまり、組織内の業務が最適化され、個人にとって適切なストレッチがかかった業務を遂行できる環境が創出されます。そのため個々人の能力が最大化される組織が実現します。

③意思決定スピードが向上する

任せるマネジメント(エンパワーメント)を推進することで、メンバー一人ひとりが自ら考え意思決定する力の向上が期待できます。意思決定能力をうまく伸ばせれば、上司の判断なしで意思決定が行えるようにもなるでしょう。

したがって、迅速な意思決定ができるようになります。VUCAの時代と言われる変化の激しい環境において、迅速な意思決定の重要性は更に高まりつつあり、顧客満足度の向上や機会損失の低減、企業の競争力向上にもつながります。

■エンパワーメントのデメリット

①顧客価値の属人化

エンパワーメントを推進すると、メンバーの自己判断による行動を促すことになります。つまり、顧客への価値提供がメンバーの属人性に起因することになります。常に安定した価値を提供できないことにもつながるため、顧客満足度が下がってしまうケースも起こりえます。

このデメリットへの対策としては、成功事例の共有やナレッジの共有を促進することで、一定型化されたサービス提供の方法をメンバーが活用する仕組みを作ることが求められます。

②部下の管理難易度の向上

エンパワーメントを推進した結果、組織の統制やメンバーの管理機能を必要以上に失ってしまう可能性があります。また、自発的に考えることを推奨したことで、メンバーの行動と組組織が掲げた目標にズレが生じ、組織として目標達成ができなくなってしまうリスクもあります。

したがって、いきなり任せるのではなく、メンバーができると思っている仕事に限定して適切に権限委譲を行う必要があります。

③オペレーター型人材のパフォーマンス低下

組織の中には決められたことや言われたことをその通りに遂行することで高いパフォーマンスを発揮するようなオペレーター型人材も存在します。このような人材はいきなり任せるマネジメントをされてしまうと何をやればいいかわからず、パフォーマンス、モチベーションともに低下する可能性があります。

これも同様に、メンバーに任せる仕事とマネジメントのタイプを適切に見極めて権限委譲する必要があります。

エンパワーメントの導入ステップ

実際に組織にエンパワーメントを導入するためにはどのようなステップを踏む必要があるのか解説していきます。

■導入ステップ① 目標への合意を得る

エンパワーメントを行う際には、上司とメンバー間で目標への合意が得られていることが重要です。その際、メンバーが目標に対して、以下の4つの確認事項を認識できているか確認することが大切です。

■チャレンジングな業務であること
■頑張ればできそうという適度な達成可能性を感じ、自己効力感を持てていること
■目標に対して自分が取り組む価値を感じていること
■目標の達成基準を理解していること

■導入ステップ② 情報の公開・権限委譲を行う

目標への合意が得られた後は、目標達成に向けて必要な意思決定ができる状況を創り出す必要があります。意思決定に必要なものは、情報と権限です。上司は目標達成に向けて必要な情報とメンバーが自発的に考え動けるように権限を委譲することが大切です。

■導入ステップ③ 失敗を許容できる状態へ

情報と権限を付与した後は、メンバーは自分で考えて行動するため、失敗してしまうこともあるでしょう。そのためメンバーが失敗を恐れずチャレンジできるように、失敗が許容され、メンバーが安心して試行錯誤できる環境を創る必要があります。

具体的には、失敗を奨励する制度を作ったり、人の組み合わせを工夫し、支援できるような仕組みを創ると効果的です。まずは仕組みによって支援できる環境を創ることが重要です。

また、定期的にコミュニケーションを取って不安を和らげてあげることも重要ですが、なんでもかんでも口出ししてしまうのも失敗をする機会を奪ってしまうので注意しましょう。

エンパワーメントを運用する際の注意点

実際にエンパワーメントを導入し、運用する際に注意することは何なのでしょうか。 3つの注意点を紹介していきます。

■権限委譲と責任放棄をはき違えてしまう

権限委譲を行う際に重要なことは、メンバーに権限を与えると同時に、責任は上司が担保することで本当の意味でメンバーが自由に考え、意思決定することが可能になります。

権限を与えたメンバーが失敗を犯してしまい、顧客に損害を与えてしまった場合などの責任は権限を付与した上司にあるという考えを念頭に置く必要があります。

権限を付与したメンバーに対して、責任まで押し付けるというのは単なる上司の責任放棄と捉えるべきです。

■権限委譲が目的化してしまう

企業がエンパワーメントを導入する目的は、メンバーの自立的な成長を促し、組織の成果を最大化させることです。しかし、権限委譲を行うことが目的になってしまい、手段が目的化していることも多々あります。

エンパワーメントは、メンバーに権限を自由に与えることが目的ではなく、自由な意思決定が可能となったメンバーが、試行錯誤しながら自発的に成長し、その結果、組織に好影響を与えることが最上段の目的になります。

■必要以上の大きさの権限で部下が萎縮してしまう

メンバーが担う仕事とマネジメントタイプにズレが生じている場合、エンパワーメントを実行しても期待した効果は得られません。さらに言えば、メンバーのモチベーションが低下し、逆効果と言えます。

いきなり「任せる」マネジメントを行ってしまうと、メンバーが萎縮してしまい、積極性や自発性は失われてしまいます。エンパワーメントを実行する際には、任せる仕事を適切に見極める必要があります。

エンパワーメントの権限委譲のポイント

では、権限委譲をする際のポイントを紹介していきます。

■譲渡範囲を明確にする

権限委譲をする際に最も重要なことの1つは委譲する範囲を明確にすることです。権限を持ったらなんでも自由にやっていいとなるとメンバーの大きな失敗に繋がりかねません。

したがって、どこまでメンバーに権限を委譲し、どこからは上司の判断が必要かという合意形成を行っておく必要があります。

■部下からの報連相を徹底する

権限を委譲した後は、メンバーの失敗などに即座に対応できるように進捗などの情報を把握しておく必要があります。そのためには常にメンバーから報告、連絡、相談を受けられるような関係性を築いておくことが重要になります。

また、決まった時間に報連相を行うようにルールを決めておいてもいいでしょう。

■判断基準を明確にする

メンバーが自己判断で動き続けるとあるとき間違った判断基準で意思決定をしてしまうことがあります。それを未然に防ぐためには上司の判断基準をしっかりと引き継いでおくことが大切です。上司とメンバーの微妙な判断基準のズレが時間が経つにつれて、大きなズレとなる可能性があります。

判断基準は可能な限り具体的にしておくとよいでしょう。

■失敗を厳しく罰しない

「任せる」マネジメントで起こりがちなことは、失敗したときに厳しく罰してしまい、メンバーが委縮してしまうことです。しかし。メンバー自身は、必死に試行錯誤しながら頑張っているのです。

失敗しても厳しく罰せず、どうすれば改善できるかを提案したり話し合ったり、お互いのコミュニケーションで解決することが求められます。そのためにも、いつでもメンバーが助言やフォローを求めることができるように心理的安全性を高めるためのコミュニケーションを怠らないようにしましょう。

エンパワーメントを導入した企業事例

実際にエンパワーメントを組織に導入した成功事例を紹介します。変化の激しい時代において迅速な意思決定が求められる中、どのように従業員一人ひとりのオーナーシップを発揮させているのか企業事例をもとに解像度を高めていきましょう。

■星野リゾート

星野リゾートでは、エンパワーメントを促進するために3つのポイントを押さえています。

①正確で重要な情報を全社員に共有すること

顧客に価値を届ける現場社員が保有している情報と代表が保有している情報を全て見える化することで情報の網羅的に共有することを可能にしました。また、代表自ら経営理念や経営戦略を分かりやすく全社員に共有するといった試みも行っています。

②権限のボーダーラインを明確にし、自律的な働き方を促すこと

星野リゾートでは可能な限り、従業員が希望する仕事に携われるように一定の自由度を儲けています。さらに、従業員自身がやりたい仕事ができているか確認する仕組みを作ったことで、従業員のモチベーションが向上し、自律的に働く環境を整えることができました。

③セルフマネジメント・チーム型組織の推進による当事者意識を高めること

星野リゾートでは多くの人事異動が立候補によるものになっています。これは階層化した組織から脱却し、組織編成を従業員一人ひとりが自発的に統率を行うチームに変えたことで、従業員のモチベーションの向上に繋がっています。

記事まとめ

いかがだったでしょうか。組織のパワーを最大化するために必要不可欠なのがエンパワーメントです。単なる権限委譲ではなく、メンバーの育成やマネジメント力の向上にもつながる考え方になりますので、積極的に取り入れて成長し続ける組織創りの一助になれば幸いです。

※参考:小倉広『任せる技術』

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