コンプライアンス研修とは?
実施の目的やテーマ例を紹介




企業の不祥事が経営の危機に直結する事態などを目の当たりにすることも増え、近年「企業のコンプライアンス」への注目度は高まっています。

では、「コンプライアンス」とは一体何でしょうか。「コンプライアンス=法令遵守」と訳されることが多いのですが、コンプライアンスは単に「法令遵守」という意味だけにとどまりません。

この記事では、コンプライアンスの本当の意味、コンプライアンスが叫ばれるようになった背景、コンプライアンスに必要な要素、そして企業に所属する皆様が意識すべきことや会社としてコンプライアンス向上を図るための方法などについて解説します。


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企業におけるコンプライアンスとは?

コンプライアンス(compliance)は、一般的に「法令遵守」と訳されることが多いでしょう。

つまり、単純に解釈すると法律を守るという意味になりますが、本記事で取り扱うのは個人レベルでの話ではなく、企業レベルでの法律の遵守ということになります。 一方で、法令遵守=コンプライアンス といっても法律を全社員に余すところなく正確に理解させればよいかというと、残念ながらそんなに単純ではありません。

企業の責任としてのコンプライアンスの範囲は広がっており、「法令を遵守する」ことに加え、「法律として明文化されてはいないが、社会で暗黙的に認知されているルールを守る」「刑罰・罰金にはならないが、お互い気持ちよく過ごすための決まりごとを守る」といった内容も含まれるようになっています。

<代表的なコンプライアンス問題>
※1990年代から2000年代初頭にかけて企業の不祥事が相次いだことはコンプライアンスが注目されるようになった一つの大きなきっかけです。

▼代表的な例
・2000年および2004年の三菱自動車リコール隠し
・2002年の牛肉偽装事件
・2005年の構造計算書偽装事件
・2006年のライブドア事件など

加えて、粉飾決算による倒産の増加も、企業にコンプライアンス重視の姿勢を求める要因の一つとなっています。また、2001年12月のエンロン社の倒産、2002年7月のワールドコム社の倒産など、アメリカでは粉飾決算による大企業の倒産がありました。

これを契機に、コーポレートガバナンスを重視する姿勢が求められ、監査の独立性や情報開示の強化などを規定した企業改革法(SOX法)が2002年7月に制定されています。EUでも2001年7月に「企業の社会的責任(CSR)に関するグリーンペーパー(政策の提案)」を発表するなど、CSRの推進を進めています。

最近ではコンビニや飲食チェーンで多発している不適切動画の問題など、 SNSが普及したことで生まれた新たなコンプライアンス問題も記憶に新しいでしょう。また、企業内外におけるパワハラ、セクハラなどのハラスメントもコンプライアンス違反に含まれます。


なぜコンプライアンス問題が起きるのか?

■会社とは

「会社」とは、法人が生まれたばかりの頃は限定された地域で便宜上使われる存在でした。 しかし、株式会社として東インド会社が誕生するあたりから、儲けを追求する体質が強まり、いわゆる資本主義と法人が結びつくようになりました。

そして同時に、会社は関わる人たちの欲望を効果的に実現する手段として機能するようになりました。実際、「会社=カンパニー」というのは、イタリア語の「パンを分け合う人々=カンパーニャ」が語源になっているそうです。

つまり、会社とは、そこに関わるたくさんの人たち(株主、生産者、消費者、従業員等)の欲求を効果的に実現するために、人間がつくった発明品なのです。


■本当に取り組むべきは「社員による統制」

会社は、経済合理軸だけで動き、色々な問題を起こしかねないという宿命を持っています。だからこそ、それを制御するために、コンプライアンスや内部統制など、ルール強化の動きが近年多く生まれています。

しかし実際は、ルール統制だけでは限界があります。過度なルールで縛ってしまうと、非効率さが頭をもたげてくるからです。また、そもそもルール統制というのはすべて、性悪説を前提としてつくられており、真摯に仕事に取り組もうとしている人のモチベーションを下げかねないという点も大きく存在します。

そこで、本質的に取り組むべきこととは、会社の「経済合理軸で動く宿命」と「経済合理軸以外の価値観を排斥する空気や体質」に対して、株主や市場による統制ではなく「社員による統制」が正しく働く組織をつくることなのです。そのために必要なこととは、①数字以外の目標を共有する、②社員と金銭報酬以外の共感点を持つ、③組織の「間」の問題に目を向ける、の3つです。

①数字以外の目標を共有する


②社員と金銭報酬以外の接点を持つ

数字や儲け以外の使命や目標によって、社会と接続する



③組織の「間」の問題に目を向ける

組織の問題とは、実は「間」に起きることを理解する必要があります。そもそも会社組織というのは複数の人が集まっている“協働体”であり、生き物の血の循環と同様、コミュニケーションの血流が滞ってしまうと、組織は病気にかかってしまいます。

コミュニケーションには、「内外間」(社内の論理と社会の規範)、「上下間」(幹部と現場等)、「左右間」(本社と支社等)の3つがあります。こうした間にコミュニケーション不全が起きてしまうと業務効率低下やモチベーション低下を引き起こし、上手く社員統制が働かなくなってしまうのです。

コミュニケーション不全には、具体的に起こりやすい症状が5つあります。適切に自社の状態を見極め、対処することが、社員統制実現への効果的な一手だと言えるでしょう。



※「間」で起こりやすい組織の症状

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コンプライアンス研修とは

■コンプライアンス研修とは

これまでのコンプライアンスが起きる背景等を踏まえ、不祥事防止や企業価値向上のため、従業員へコンプライアンスの重要性や違反のリスク、さらに遵守すべき法令や企業規則の基本的な知識を身に付けさせる目的で行われるのが、「コンプライアンス研修」です。




■コンプライアンス研修の目的

①社会人としての基本的なルールや感覚を身につける

コンプライアンスは、人事や経営者のみが意識すべきことではなく会社に所属する一人一人が理解し、意識して行動すべきことです。新入社員や新卒社員は特に社会人としての感覚・知識も未熟なため、早い段階で社会人・企業人としての基本的なルールを理解し身につけることが重要です。

例えば、一般的な法令や企業規則だけでなく、社会人として常識と良識のあるSNSの取り扱い、情報管理の方法、取引先との適切なやり取りなども育成テーマの中に盛り込むべきでしょう。

②一般常識、自社の常識、個人の常識のズレを解消する


コンプライアンス違反のリスクは、「知識の少ない新入社員」に限ったことではありません。組織のルールや常識にどっぷりつかっていると、無意識のうちに世間一般の常識と異なる判断軸になり、それが正しいと思い込んでしまいがちです。

多くの場合、組織のルールはコミュニケーションコストを下げて仕事を効率化したり、生産性を引き上げることにもつながります。一方その「社内の暗黙の了解」が世間の常識の変化に合わせて変化していなかった場合には、適正でないことに気づくことができず組織内で改善することもできません。

法令を含む、今の世の中のルールやあるべき判断基準を認識し、個人の常識、自社の常識とのギャップを確認することは経験を積んだ企業人だからこそ常に必要なことです。

③コンプライアンス違反によるリスクマネジメント

コンプライアンス違反が発生すると、個人としてだけではなく企業も社会への責任を負うことになり、場合によっては重大な企業ブランド価値の損害にもつながりかねません。

例えば、近年頻発している従業員が勤務中の不適切行動を撮影し、SNSや動画サイトへ投稿する「バイトテロ」も、コンプライアンス違反による重大な責任問題のひとつです。(正社員だけではなく、アルバイトやパート社員の行動まで責任を負うべきことが分かります)

コンプライアンス研修では、実際にどんな行動がコンプライアンス違反にあたるのか、また起きた際の影響範囲を適切に認識させ従業員自身の言動の影響範囲への自覚を促しリスクマネジメントを行うのも重要な目的です。

④企業価値向上

ここでの企業価値の向上とは、社会に「必要とされる企業」「不要とされない企業」になれるということを指します。 コンプライアンスへの取り組みによって、消費者や取引先に安心と安全を提供することができ、企業としての信頼を積み上げることができます。

消費者にとってより価値のある商品・サービスを提供することは、企業経営ではもちろん大切なことであり企業価値の向上に寄与しています。 しかし、それと同じようにコンプライアンスを守ることが企業価値の向上に繋がっていることも事実です。また、正しく企業活動を行なっている自覚は従業員の仕事への誇りを醸成することにもつながります。


■コンプライアンス研修の対象分野

コンプライアンスのテーマは多岐に渡りますが、主に着手しやすく、また優先順位も高いテーマとしては①ハラスメント②情報セキュリティ の2つがあげられます。

①ハラスメント

パワハラ、セクハラといったよく知られている種類の問題について研修を行うことが中心です。一方、アルハラ(アルコールハラスメント)や、在宅勤務が主流になっている現在ではリモハラ(リモートハラスメント)等、今後も様々な種類のハラスメントが社会問題化することが予想されます。

そのため、ハラスメントの概念や、想定されるハラスメントの種類といったハラスメント全般についての基礎知識に関する研修も必要です。

②情報セキュリティ

情報セキュリティについては、すでに多くの企業で実施されていますが、マルウエアなどは比較的最近登場した脅威であり、また様々なITツール・SNS等により新たなリスクは生まれ続けています。

常に最新の状況を踏まえて、継続的に研修内容を更新しつつ、かつ定期的に実施することが重要です。

コンプライアンス研修で使用されるテーマ例

コンプライアンス研修の目的を説明しましたが、ここでは研修を行うに当たって多くの企業でも取り上げられている具体的なテーマを紹介していきます。

①個人情報保護やSNSの取り扱いなどの情報セキュリティ

情報社会となった現代では、個人情報の取扱いについては非常にセンシティブな対応が求められます。 ニュースでも、顧客情報の漏洩により顧客や世間からの信頼を失ってしまったという話は後をたちません。 そういった情報漏洩のリスクや要因について、実例やケースワーク等を用いて理解していきます。

また、最近では上記のようにSNSにおける情報管理についても注目が集まっており、特に若手社員の多くはSNSに慣れ親しんでいることで情報管理に対する意識が低いこともあります。自身の言動により企業にどの程度大きな影響があるのか、リアルに起こりうるリスクを理解させることが必要です。

②ハラスメント

ハラスメントの種類は数多くあり、代表的なものには、 職務上の優位性を利用して部下に対して精神的・肉体的苦痛を与えるパワーハラスメント。 主に男性から女性に対して行われる性的いやがらせのセクシャルハラスメント。

言葉や態度等によって周囲に精神的苦痛を与えるモラルハラスメント。 強引に飲酒を迫るアルコールハラスメント。 などが挙げられます。

ハラスメントは「ひと昔まは許されていたのに、今は許されない」ということが起こり得るため、特に現在管理職にある人は昔の常識が通用せず無意識にハラスメントを犯しやすい可能性もあります。

以前からの変化も含め、どういったことがハラスメントに当たる可能性があるのか、末なことも理解することが重要です。

③著作権・特許権の侵害

特に記事を書いたり資料を作成することが多い企業においては、写真やデータ等の取り扱いに注意が必要です。自社の写真やデータを利用することは何も問題はありませんが、他社の記事などからデータや写真、記述を引用する際にはルールがあります。

勝手に引用してしまうと、著作権の違反になってしまい、知らぬうちにコンプライアンス違反を起こす可能性があるため、特に注意する必要があります。

コンプライアンス研修を実施する方法

■オンラインで行う

オンラインで行う場合は、通信環境、端末の整備ができればいつでもどこでも学ぶことができ参加しやすいという点が最大のメリットです。

集合型研修という形でも、個人個人が自宅などで自分のペースで学習することもできます。
ただし、実践を伴うスキルや知識の習得などはオンラインでは難しいというデメリットもあります。


■派遣講師を呼ぶ

メリットとしては、専門性の高い講師から直接学び、直接質問したり、教材等だけからは学べない講師自身の知見による学びも得られる点です。一方、派遣講師を招いて研修する場合は交通費や講演料などのコストがかかります。


■社外研修を行う

社外で行われるセミナーや研修などに社員が参加するという形の場合は、社外の人材とコミュニケーションを取る機会にもなるため、他者からの刺激を受けたり「自分・自社の“当たり前”との違い」を認識しやすいという点が大きなメリットです。

ただし、多様な参加者がいるため一般的な内容になりやすく、内容・時期などは完全に自社の課題に即する形で行うことはできません。

コンプライアンス研修の効果を出すためのコツ

コンプライアンス研修の効果を最大化するために、どんな観点が必要でしょうか?

■実施するタイミング

コンプライアンス研修は定期的に行うのではなく、以下の適切なタイミングで実施することでより成果を上げられます。

(1)実際にコンプライアンス違反が発生した後、または発生しそうな時
 →危機感が醸成されており、浸透しやすい
(2)同業他社または社会問題に発展するコンプライアンス違反が話題になっている時
 →自社でも起こりうるリスクの回避
(3)社内のルール改定や組織体制の変革があった時
 →変化に対し運動神経良く対応できる状態にする
(4)新入社員の入社後など、従業員の認識が変化したり多様化する時
 →会社として・常識としてのルールを共通認識化する


■テーマを変える

より効果的にコンプライアンス研修を行うため、対象によって研修の主なテーマを変えることが必要です。

(例)
・新人や一般の従業員→コンプライアンスの基礎知識
・係長や主任クラスは、コンプライアンス事例への具体的な対処法
・マネジメント層→管理職として・組織としてのコンプライアンスを機能させるための知識
・経営者や取締役員クラス→企業・組織としてのコンプライアンス遵守の仕組みづくり、社会への使命


■環境を作る

対象の社員がよりコンプライアンス研修に参加しやすい環境、学びやすい環境を整えることが必要です。業務内容の見直しや、時間の調整が行いやすいオンライン実施の検討などを行い、対象社員が参加できる環境を整えましょう。


参考:あしたの人事 コンプライアンス研修の目的と成果を上げるポイント


記事まとめ

様々な感情や価値観を持つ人の集合体である企業組織においては、必然的にルールや常識に対する認識の齟齬が起こりやすい宿命にあります。

まずはコンプライアンス研修などを通して正しい知識を身につけながら、個人・他人・自社・世の中の”当たり前”の違いを理解しすり合わせる姿勢を一人一人が持つことが必要ではないでしょうか。

著者プロフィール

神門 美紀

【プロフィール】
リンクアンドモチベーション入社。 大手・リーディングカンパニー向けの営業コンサルティングに従事。 育成・組織開発を中心に、企業価値向上に向けた 「ダイバーシティ推進」「理念策定・浸透」「制度改定」の実績等。 小売サービス業、インフラ企業、IT企業様など数多くの業界のお客様を支援。 営業をしている。
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