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ジョブ型雇用とは?メリットや制度設計のポイントを解説

withコロナの時代となり、働き方を見直していかねければならない企業が増えてきています。従来の雇用形態の見直しも図られてきました。日本のこれまでの雇用形態で主流だったのはメンバーシップ型という形でした。

それに対し欧米で大半を占めるのはジョブ型で、生産性向上といったメリットにつながる働き方として注目する日本企業が増えています。

雇用環境の変化に対応し、成果を出せる組織作りを進めるためにジョブ型・メンバーシップ型の働き方それぞれの違いやメリット・デメリットについて理解しておきましょう。

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目次[非表示]

  1. 1.ジョブ型雇用とは
  2. 2.メンバーシップ型雇用とは
  3. 3.ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いと特徴
  4. 4.ポストコロナ時代にジョブ型雇用が必要とされる背景とは
  5. 5.ジョブ型雇用を推進するメリット
  6. 6.ジョブ型雇用を推進するデメリット
  7. 7.ジョブ型人事制度の要点
  8. 8.ジョブ型人事制度設計・運用上の留意
  9. 9.記事まとめ


ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用は、欧米で主流となっています。一言で表すと“仕事に人を割り当てる働き方”です。

求人の時点で職務内容や勤務地、給与などがジョブディスクリプション(職務記述書)によって明確に定められており、労働者はその内容に自分の希望・スキルが合っていれば応募します。ジョブディスクリプションが更新されない限り、配置転換や昇給、キャリアアップは生じません。

メンバーシップ型雇用とは

メンバーシップ型雇用は、“人に仕事を割り当てる働き方”と言えます。

仕事内容や勤務地などを限定せず、候補者はポテンシャルや人柄を考慮に入れて採用されます。そのため、メンバーシップ型での採用は“就職”というより“就社”に近いといわれることもあります。昇給・スキルアップ・配置転換・勤務地の変更など勤務環境が大きく変わる制度となっています。

日本企業の多くは終身雇用・年功序列とともにメンバーシップ型雇用を採用しつづけてきました。

(※参考:https://data.wingarc.com/job-type-or-membership-type-21655

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いと特徴

仕事に人を割り当てるジョブ型雇用では、仕事がなくなれば職場に居場所がなくなってしまいます。企業が方針転換や業務縮小を行えば大量解雇が行われることも起こり得ます。

一方、メンバーシップ型雇用では仕事がなくなっても配置転換により雇用が確保されるのが通常です。またスキルだけでなくポテンシャルもみられるため、職務能力・経験に欠ける若者も仕事につきやすいです。ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いは以下の通りです。


※参考:BIZHINT「ジョブ型雇用」

ポストコロナ時代にジョブ型雇用が必要とされる背景とは

■事業環境の変化(VUCA時代の突入)

情報通信技術の進歩や交通・輸送手段の発達により、ヒト・モノ・カネ・情報が国境を超えて移動することが以前に比べて容易となりました。しかし、デジタル化やグローバル化への対応が遅れてしまった日本企業の国際競争力は大幅に低下しています。

不確実性の高いVUCA時代を企業が生き抜くためには、優秀な人材を多く集め、付加価値を高めていかなければなりません。

このような理由から、高度な知識や専門スキルを持つ人材を確保し、その能力を最大限に発揮してもらうための土台としてジョブ型雇用を採用する企業が増加しています。

▼VUCAに関する記事はコチラ
VUCA(ブーカ)とは?生き抜く方法と必要なスキルを解説

■労働環境の変化(終身雇用の終焉)

多くの日本企業が急速な発展を遂げた高度経済成長期において、従業員の終身雇用、年功序列、企業別労働組合の3つを柱とする日本型雇用システムはとても合理的なものでした。

しかし、日本経済の長期低迷によって状況は一変し、企業の継続的な成長を前提とした制度を維持することが難しくなったことにより、メンバーシップ型雇用についても見直す必要性が出てきたと考えられています。

■同一労働同一賃金の施行

政府主導による働き方改革の一環として2020年4月に施行された「同一労働同一賃金」。これもジョブ型雇用を後押しする一因となっています。同一労働同一賃金とは、正社員と非正社員の間にある不合理な待遇差の解消を実現するために作られたルールです。

同一労働同一賃金では、雇用形態にかかわらず同じ労働に従事する労働者には同じ賃金を支給しなければならないため、職能給から職務給への移行に合わせてジョブ型雇用の導入を検討する企業が増えています。

■新型コロナウイルス蔓延によるリモートワークの推進

新型コロナウイルス感染拡大防止をきっかけに、在宅勤務を実行した企業は少なくないでしょう。業務や勤務形態が変わることで、雇用の仕方も変わってくると想定されます。

成果ベースで働くことができるジョブ型雇用は、リモートワークと相性が良いと考えられ、注目されています。

ジョブ型雇用を推進するメリット

■専門分野に強い人材の採用と育成

求めるスキルに合わせた報酬を提示することで、高い専門性を持った人材を獲得しやすくなります。 ジョブ型雇用における従業員側のメリットとして、「専門性を追求することができる」「スキルアップが収入アップに直結する」といった内容が挙げられます。

企業がジョブ型雇用にシフトすることで、このような願望を持っている高い専門スキルを持った人材とのマッチング精度があがります。

そのため、知名度の低い中小企業でも双方の希望や条件が一致していれば、高度な知識や優れた専門スキルを持つ人材を獲得することも可能です。

また、職務内容や責任の範囲、職務遂行に必要な能力、報酬などの条件が募集段階で明確に示されているため、雇用のミスマッチを未然に防ぐことも期待できます。

■リモートワークとの相性、働き方改革・ダイバーシティの推進

転勤や長時間労働が基本的に発生しないジョブ型雇用は、毎日の通勤やフルタイムでの勤務が難しい女性や障害者にとって魅力的な選択肢です。

ワークライフバランスが実現され、多様な人材が活躍できる環境であれば、イノベーションの創出や生産性向上にもつながります。

また、withコロナ時代のリモートワーク環境下においても働きやすい雇用形態であり、注目を集めています。

■役割の明確化による生産性向上

職務内容や責任の範囲、職務遂行に必要な能力、報酬が明確になっているジョブ型雇用であれば、従業員は自身のやるべき仕事が明確になります。

仕事が明確になると、仕事内容への満足度や組織へのコミットメント、仕事のパフォーマンスが高くなると言われています。

また同様に、自分以外のメンバーの役割も明確になっていれば、お互いの相互理解も深まり、チームの成果に繋がる一因となるでしょう。

ジョブ型雇用を推進するデメリット

一方で、ジョブ型雇用の導入において気をつけるべきデメリットも存在します。

■人材の定着化が困難

企業の方針転換や経済状況が変化した際に契約終了になる可能性が高く、また、自律的にスキルアップができなければキャリアアップが難しくなるため、人材の定着が困難になりやすいと考えられます。

■会社側の都合で転勤や異動をさせにくい

人に対して仕事を割り当てるメンバーシップ型雇用と違い、仕事に対して人を割り当てるジョブ型雇用ではジョブディスクリプションに記載されていない業務をお願いすることはできません。

また、ジョブディスクリプションの内容は会社都合で勝手に変更することができません。このような硬直性を受け入れることができるかどうかが、ジョブ型雇用導入のポイントとなります。

ジョブ型人事制度の要点

一概にジョブ型といっても、企業が営む事業の性質、組織ステージ(創造性・指揮・委譲・調整・協働など)によってマッチ度は変わってきます。よりよい選択をするために、設計・運用時の留意点について紹介します。

▼ジョブディスクリプション テンプレート例


■必要な仕事=ポジションの明確化

まずは、その会社に必要な仕事=ポジションを明確化します。日本企業であればポジションは、職種×役職(階層)で整理するとイメージしやすいと思います。

■ポジション内容の定義

次に、ポジションの内容を定義します。内容が記載されたものを、ジョブディスクリプション(ジョブプロファイル・職務定義書など)と呼びます。

ジョブディスクリプションの内容は各社によって違いますが、主にポジションの目的、果たすべき責任(ミッション)、必要な経験、必要なスキルが含まれています。

■ジョブの序列化

次にジョブディスクリプションの内容に基づいて、ジョブの大きさを図り、序列化します。ジョブディスクリプションを作成する前に、現有情報で仮の職務評価をし、大枠の認識合わせをするケースもあります。

対象社員が多いジョブレベルの測り方は、職務評価ツールを使うケースが多いですが、内部で基準を用いて測ることも可能です。

■経営・事業貢献との連動性の担保

そして、ジョブの大きさに基づくジョブレベル、もしくはそもそもポジション自体に報酬を設定し、経営・事業貢献との連動性を担保します。

さらに評価についても設計しますが、ジョブディスクリプションに応じた成果への評価、必要スキル/経験に対する現状測定と開発目標への行動評価をすることがが多く見られます。

ジョブ型人事制度設計・運用上の留意

■ポジション変更に伴った給与ダウンによる変更しづらさ

下位にポジション変更をしたい場合でも、給与が大きく下がってしまうので変更しづらいという点があります。任せたポジションに対して成果が見合わない場合、周囲のモチベーションや抜擢したい人材の機会損失、会社業績に影響を与えることになります。

そのため、ポジション変更を検討することになりますが、がくんと報酬を下げてしまうと、本人のモチベーション低下や先述したリスクが懸念され、なかなか変更できず、いつのまにか硬直化しやすいところです。

対応のひとつとして、報酬レンジを広く設定し、等級間で一部を重複させるという方法があります。

これにより、下位のポジションに変更後、段階的に報酬を下げていくことができ、その間に対象者の能力開発を促しつつ、一定の報酬額に落ち着かせるということが可能です。

■ジョブディスクリプション管理ルールの明確化

ジョブディスクリプションの管理ルールを定め、運用担当を明確に、定常業務として組み込んでおくことが必要になります。先述の通り、正直厳密にジョブディスクリプションを管理(変更・修正)することは大変です。

そのため、どのレベルであれば修正するか、誰の意見をどのように確認・反映するか、だれが作業をして、いつ・どの機関で決定するか、ということを予め定め、業務化しておいた方が良いと考えられます。

例えば、ジョブ型を導入している大手メーカーでは。ガイドラインを定め、運用担当を明確に決め、年・半期の一度の組織改編があれば、そのタイミングで見直しを行っています。

記事まとめ

以上、ジョブ型雇用の特徴をメンバーシップ型雇用と比較してまとめました。

外部環境の変化に応じて人事制度を修正・改定すること自体は社員にとってよい影響があると思いますが、将来の事業環境に応じた組織・人材のあるべき姿に向けて、人事制度というツールをどのように使うかを考えることがまず大切です。

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LM編集部
LM編集部
理念・採用・風土・制度など組織人事のトレンドを発信しています。 基本的な用語解説から、多くの企業で陥っている実態、 弊社が培ってきた組織変革技術の知見を踏まえたポイント解説まで 皆様のお役に立ち情報をお届けします。

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