組織課題解決に最適なマネジメント手法とは?


昨今、企業経営において組織課題への取組みの重要性が高まっています。ただ、組織の課題を捉え、適切な解決策を打つことは容易ではありません。本記事では組織の課題の一例を取り上げた上で、解決に向けた考え方やマネジメントの方法を記載します。


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組織の課題とは?よくある組織課題例とは?

以前よりも「組織」に関する注目度が高まっています。その背景には、顧客ニーズの多様化や戦略の複雑化など、企業を取り巻く外部環境の変化があります。環境変化によって、戦略は高難度化・複雑化しているからこそ、その戦略を実行する組織の力に焦点が当てられています。

また、従業員の価値観の多様化や、リモートワークによるコミュニケーション機会の減少によって、組織内に”認識のズレ”が生じることも多くなっています。そのため、組織課題が発生しやすくなっていることも注目が集まっているもう一つの要因です。

さて、組織の課題には具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。一般的な組織課題としては以下のようなものがあります。


事業戦略や企業理念が現場まで伝わりきらず、実行されない

経営陣が考えた「戦略」や大事にしている「理念」も、現場で実行されなければ企業成長は見込めません。また、経営からのメッセージだけではなく、現場からの意見も経営陣に伝わらなければ、適切な意思決定ができず、結果として市場から選ばれなくなってしまいます。

会社は階層や職種で役割を分けて機能を高めていますが、組織規模が大きくなればなるほど階層や職種が複雑に分かれるため、情報の連携が難しくなります。

組織課題として最も多く取り上げられるのは、階層や職種・職場間の連携(組織の分かれ目での縦・横の連携)が十分に機能していないという課題です。


現場最適が行き過ぎてしまい、全体視点が失われてしまう

現場は目標数字に向けて日々努力していますが、目の前の課題や目標にばかり目が行き過ぎてしまうと、かえって全体の利益を損ねてしまうことが多くあります。

本来、部署や個人の目標は会社全体の目標を砕いて設定されるため、全体の目標と現場の目標は接続されているはずです。ただ、現場の社員は、日々の業務に集中しすぎるあまり全体の目標の目的や意図・背景から乖離して手段を目的化して動いてしまうという状態に陥りがちです。

また、管理職の経営目線の不足や、現場の部署間での対立といった問題も起きてしまうことがあります。


制度や仕組みが現場で活用されない

組織の成果を高めるための制度や仕組みも、意図や背景が伝わりきらないと、効果的に活用されず結果として現場の効率を下げてしまうことがあります。

現場からは細かく設計してほしいという要望が出てくることも多いですが、事業や組織の変化が目まぐるしい中では、制度設計だけで最適な仕組みをつくることは難しいものです。ただ、現場からすると「誰か」を悪く言っているわけではないので、人事制度や仕組みは多くの場合に非難の的にされることが多くなっています。


勘や経験、現場の主張の強い人の声に振り回されてしまう

組織には多くの人の意見や感情が含まれます。だからこそ、組織課題の特定や解決が難しく、結果的に勘や経験に基づいた判断が多くなってしまいがちです。また、現場の意見を聞いた際には、主張の強い人の声に流されてしまい、課題解決に動いたとしても、組織に悪影響を与えてしまうことがあります。

勘や経験による判断にも、主張する意見にも、悪意はないことが多いですが、結果的に成果に繋がらないことがよく見られます。多くの人が関わる大手企業にとっては、効果的な解決策を打つための組織改善の仕組みの重要度が一層増しています。

組織課題の解決に向けて有効な考え方やフレームワークとは?

上記のような組織課題を適切に捉え、効果的な解決策を打つためには、組織課題の特定を行う「診断」と組織課題の解決を行う「変革」の2つのフェーズを適切に行い、診断→変革・変革→診断と連続させていくことが非常に重要です。

「診断」フェーズでのポイントは、組織全体で最も解決すべき課題は何かを特定することです。経営から解決を指示される組織課題も一部勘や経験に基づくものもあるため、本当に解決すべき課題をきちんと整理することが重要になります。診断の納得感がなければ、従業員の賛同も得られず、その後の解決にも繋がりません。

「変革」フェーズでのポイントは、特定した組織課題に対する解決策を打ち、改善を確認することです。打ち手を実行することはあくまで手段に過ぎないため、解決する目的や指標となる目標を設定し、課題の解決に向かっているかを確認することが重要になります。解決によるメリットが感じられなければ、どのような施策でも途中で終わってしまいます。

診断も変革も「何をゴールにするか」によって進め方は異なります。現場の応急処置が必要なのであれば、課題の発見ができる簡易な「診断」で問題ないですが、組織全体の課題を解決することが必要なのであれば組織全体の課題が整理できる本格的な「診断」が必要になります。

また、目的に応じて簡単な「変革」で良いのか、本格的に変える覚悟が必要な「変革」なのかも変わります。

診断や変革のそれぞれのポイントを解説します。




「診断」フェーズのポイント①:問題の相対化

診断の際には、問題を相対化し、優先順位を決めることが重要になります。

不満や満足といった満足度だけを把握すると、多くのことが問題として取り上げられがちです。取り上げられた問題を「重要度」や「緊急度」といった判断軸で相対化することで、今取り組むべき問題を絞り込むことが可能になります。

ただ、組織の中の立場が変わると、問題の捉え方も変わるため、全員が合意できる優先順位を決めることは容易ではありません。組織課題解決をゴールとするならば「現場の期待度」と事業成果を優先するならば「事業からみた重要度」をもとに相対化していくことが重要になります。

また、相対化する際には社内だけではなく、他組織の状況との相対化も判断の参考材料となります。

「診断」フェーズのポイント②:問題の特定化

絞り込んだ問題に対して、解決施策の進め方や解決後の効果を決める「課題を特定するプロセス」が次に重要になります。

現場の声をもとに問題を特定しようとすると、具体的な状況が明確になる一方で全体の効率を落とす恐れもあります。

一方で、経営視点のみで問題を特定してしまうと、現場にとっては「決められたこと」のように捉えられ、「やらされ感」が生じる恐れがあります。そのため、現場視点と経営視点の両方から問題を特定すると同時に、「変えることが可能な問題」に落とし込むことが重要になります。

鍵となるのは、「誰か」や「何か」に問題を寄せるのではなく、解決可能な「誰かと誰かの間」や「何かと何かの間」に特定することです。「誰か」や「何か」に問題を帰着させることは容易ですが、「人のせい」「誰かのせい」にしてしまい、主体者がいなくなりがちなため、本質的な解決にはつながらない恐れがあります。

また、問題を特定した後に、解決することで本当に目的に近づくのかという検証も忘れずに行うことが重要です。


「変革」フェーズのポイント①:課題の選定

問題を特定するプロセスで打ち手は一定決まるので、診断と変革を切り離すことはできないですが、特定した問題(=課題)に対して、どのような打ち手を打つかが次の論点になります。

組織課題を解決するための方法は、「目標設定のSMARTの観点(※)」で観察できるレベルのものが望ましいです。具体的には、「解決に向けた行動が取れるものか」(自分たちでコントロールできる変数か)や「行動が定量化でき、行動修正できるものか」という問いに答えられれば良い目標と言えます。

重要なポイントは、変革施策を決定することに時間を掛けすぎないことです。変革施策には答えはないため、施策の決定は難しいものです。ただ、変革の効果は、「施策の決定に掛けた時間」ではなく「施策を実施した後の行動修正の回数」に強く影響を受けるため、まず行動を起こすことが重要になります。

※目標設定のSMARTの観点:目標を設定した際にチェックすべき5つの観点のことを指します。
具体的にはSpecific(具体的で)、Measurable(測定可能で)、Achievable(達成可能で)、Related(経営目標に関連しており)、Time-bound(時間制約がある)という観点です。


「変革」フェーズのポイント②:経過観察

課題解決においては、行動を起した上で「実際に効果が見られたか」という効果検証を行うことが重要になります。組織課題は、個人個人の状態や認識によっても変わるため、変化することが多く、解決策にも万能な答えはありません。だからこそ、行動を起した上で効果を測定し、解決策を修正するか、継続するかの判断をしていくことが重要になります。

また、解決のアクションにおいても効果が測定できなければ、ただ苦しいだけの効果が分からない筋力トレーニングと同じで継続できなくなります。 経過を観察し、一定の改善が見られたら、次の問題を洗い出す「診断」のフェーズに戻り、診断と変革を繰り返すことが重要です。


組織課題を解決し成果を向上させるマネジメント方法とは?

組織課題の解決策にはどのようなものがあるのでしょうか。

人事施策としては、採用や育成、評価や制度、配置や登用など様々な施策があります。これらは組織マネジメントの視点で分けられ、「ヒューマンリソース(個人)」「ルール(仕組み)」「コミュニケーション(人と人、人と仕組みをつなぐもの)」という3つの「組織の操作変数」で整理することで、効果的な打ち手が見えてきます。


「ヒューマンリソース」マネジメント

ヒューマンリソース(=HR)マネジメントとは人材の採用や育成など、個々人に光を当てて成長を促すマネジメントのことを指します。各個人に焦点をあて、スタンス強化・スキル付与によって行動の変革を実現すること、そして役割定義を明確にし、各人の責任範囲を設定することで行動の変革を実現することが目的です。

HRマネジメントにおいては、成果創出に向けた能力を整理するフレームである「人材要件フレーム」を用いることが有効です。



組織課題として設定した際には、入社後の方々を対象とするため解決策として研修が用いられることが多いです。

(参考)ビジネススキル・ポータブルスキル研修

特に、ビジネススタンスの早期開発こそが若手社員パフォーマンス向上(≒早期戦力化)に寄与することは、リンクアンドモチベーションの研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所の研究結果からも明らかになっています。

(参考)モチベーションエンジニアリング研究所 「新入社員時のビジネススタンスと成果の関係」に関する研究結果


「ルール」マネジメント

ルールマネジメントとは、組織に適した機能分担のあり方、業績管理ユニットの括り方、あるいは個々人の評価や報酬に関する一連のルールを切り替えることを指します。日常のOJTツールの中に埋め込むことにより、目標や評価と「求められる行動」が接続され、PDCAサイクルを必然化することができます。

ただ、前段の組織課題の一例でも取り上げたように完璧な制度設計は存在しません。複雑性を高めれば高めるほど、柔軟な対応がしづらく、シンプルさを追求すればするほど、現場の解釈力が必要になります。
ルールマネジメントにおいては、複雑性と実効性を踏まえて設計・運用を行うCPモデルの考え方が重要です。


(参考)CPモデル(複雑性と成果の関係を表した図)
組織にとって複雑性の最適値を見極めてルールを設定することが重要であることを意味しています。目指す姿を実現するためには、ルールだけではなく、コミュニケーション・信頼関係によって最適値の成果を最大化することが求められます。



最近話題になっている「ジョブ型」や「成果主義」のようにルールマネジメントはテーマに上がりやすいものです。ただ、CPモデルでもわかるように、HRやコミュニケーションとの接続を十分に図らなければ成果の期待できないものになっています。

(参考)人事制度設計・構築コンサルティングとは? 設計手順や目的について


「コミュニケーション」マネジメント

コミュニケーションマネジメントとは、現場と現場、人と人をつなぐコミュニケーションを変革することを指します。どのようなコンテンツ(内容)をどのようなチャネル(手段)で組織内に浸透させるかを考え、マネジメントすることを意味します。

組織にとっての血流である「コミュニケーション」に光を当てた施策を充実させることで、HR(個々人の能力や意志)やルール(仕組みや制度)の効果を最大化させることができます。

理念の浸透や組織課題の解決においても、第一歩となるのはコミュニケーションマネジメントです。最も変えやすく、一方で最も認識齟齬が起きやすいものだからこそ、見える化を進めながら活用していくことが重要になります。

コミュニケーションマネジメントにおいては、経営と現場を繋ぎ、組織と事業の両方をマネジメントする下記のマネジメントの4象限が重要になります。



起点となるのは、会社全体のビジョンであり、そこから現場ごとに戦略・PDCA・メンバーのマネジメントへと砕いていきます。

コミュニケーションマネジメントが機能しない際には、起点となる理念・ビジョンへの共感が薄いことが組織課題に多く挙げられます。理解や斉唱はしているものの、行動に結びついていないときには理念浸透などの施策から始めることが重要です。

(参考)経営理念(企業理念)浸透コンサルティング

また、理念・ビジョンは共感されていても、間をつなぐマネジメントが機能していなければ現場に浸透もしません。事業状況や組織状況が変わる中で、適応できる管理職を育てることも課題解決の一助になります。

(参考)マネジメント役割理解研修


組織課題の解決に効果的なITツールとは?

「ヒューマンリソース」「ルール」「コミュニケーション」の3つのマネジメントにおいて効果的なITツールをご紹介します。リモートワークや直接のコミュニケーションが制限される中では、3つのマネジメントの量と質の両方の担保が必要になるため、事業モデルや仕事内容、組織状態に合わせたITツールの選択が有効です。


ヒューマンリソースマネジメントの効果的なツール

組織全体のパフォーマンスを最大化するために人材の持つ能力や価値観、特性などを見える化し、配置や組織編成に活かすことができます。

(ツール例)
・Oracle HCM Cloud(株式会社シー・エス・イー)
・カオナビ(株式会社カオナビ)

ルールマネジメントの効果的なツール

客観的な人事評価を行い、目標設定から評価面談までのプロセスを管理しながら、社員の生産性向上や管理職の育成、離職率の低下に活かすことができます。

(ツール例)
・人事評価システム(株式会社あしたのチーム)
・HR-Platform(フォスターリンク株式会社)

コミュニケーションマネジメントの効果的なツール

社員同士のコミュニケーションや、現場でのメンバー・マネジメントでのコミュニケーション、経営陣と現場の対話などを促進し、各種のコミュニケーションを効果的・効率的に行うことができます。

(ツール例)
・Slack(Slack Technologies, Inc.)
・Teams(日本マイクロソフト株式会社)
・Communication Cloud、Teamwork Cloud(株式会社リンクアンドモチベーション)

3つのマネジメントバランスが機能しているかの確認ツール

「ヒューマンリソース」「ルール」「コミュニケーション」もそれぞれ一つずつでは成り立ちません。全体の中でバランスを取り、「組織として機能しているか」を確認することが重要です。

3つのマネジメントの上位概念に当たる「エンゲージメント」を測定することで、3つのマネジメントのバランスが機能しているかを確認することができますが、「エンゲージメント」の定義は多様であり、効果や実績をもとに活用ツールを判断するのが良いと考えます。

(参考)エンゲージメントは業績を高めるのか-66万人のデータから明らかになった2つの関係-


まとめ

これまで、勘や経験をもとに行われたマネジメントも、データやツールを駆使して効果的・効率的に行うことが求められるようにと変化してきました。

また、「個」に光が当たる時代だからこそ「組織」や「風土」が企業の競争優位としても注目されています。組織課題に対する知見は日本企業に蓄積されておらず、欧米諸国に先行を許していますが、今後一層注目が高まり、各企業のナレッジや事例が多く注目されると想定されます。

マネジメントや組織課題の解決は、理念の実現のための「手段」に過ぎませんが、会社の寿命が短くなっている時代だからこそ、貴社の持続的な成長に向けてぜひとも役立てて頂きたいと考えます。


著者プロフィール

  

林 優里香

【プロフィール】
新卒でリンクアンドモチベーション入社。 以降、一貫して大手企業向けクラウド事業に従事。 現在、幅広い西日本企業のクラウド運用をサポート。

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