シンギュラリティとは?社会に与える影響や実現可能性について分かりやすく解説



人工知能が人間の知能を超える世界ーー。アニメ「攻殻機動隊」やSF映画「ターミネーター」を通してその世界が描かれましたが、これらの実現は間近に迫っているといわれています。

この人工知能が人間の知能を超える転換点を「シンギュラリティ」と言います。

この記事では、シンギュラリティの意味や社会に与える影響について、お伝えします。

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シンギュラリティ(技術的特異点)とは?

シンギュラリティ(Singularity:技術的特異点)とは、 「人工知能(AI)」が、人間の知能を超える転換点を指す言葉です。

シンギュラリティはもともと、数学や物理学の世界で使われる「特異点」を意味する言葉でしたが、最近では「シンギュラリティ」という言葉は通常「技術的特異点」を指すようになりました。

この概念は、米国の数学者ヴァーナー・ヴィンジ氏により最初に広められ、人工知能研究の第一人者レイ・カーツワイル氏も提唱するようになりました。

シンギュラリティは、ヴァーナー・ヴィンジ氏が1993年に著作「The Coming Technological Singularity」において、「30年以内に我々は、人間を超える知能を生み出す技術的手段を手にするだろう。それからまもなく、人間の時代は終わる」と表現したことで、より具体化されました。

25年以上前から唱えられていたことには驚きですが、実際に1993年の30年後である2023年に、表記されているような世界が訪れることは予想しづらいでしょう。

では現在シンギュラリティはいつ起こると言われているのか、ここからご説明します。

※参考:1993by Vernor Vinge “TECHNOLOGICAL SINGULARITY”

【2045年問題】シンギュラリティが起こるのはいつ?

2045年問題と言われることが多いシンギュラリティですが、いつ到来するかは複数説あります。

シンギュラリティを最初に広めたヴァーナー・ヴィンジ氏は2023年より前に、人工知能研究の第一人者であるレイ・カーツワイル氏は2045年ごろに到来すると予想しています。

■レイ・カーツワイル論

レイ・カーツワイル氏は2005年に著書「The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology 」において、2045年には10万円のコンピューターの演算能力が人間の脳の100億倍になると表現しました。

彼によると、人間の脳は100兆個の極端に遅いシナプスしかなく、2029年には、すでにAIの思考能力が人間の脳の演算能力をはるかに超えるだろうと予測しています。

また、彼が考えるシンギュラリティ到来後の世界は楽観的であり、人間はコンピュータに接続することで、さらに人間らしくユニークな存在になりうると述べています。

※参考:The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology

■ヴァーナー・ヴィンジ論

冒頭述べたように、ヴァーナー・ヴィンジ氏は著書の中で「30年以内に、情報技術の進歩によって、機械は人知を凌ぐ超越的な知性を獲得する」ことを述べています。

しかしこれにより実現される世界は、ただ技術革新が進んだ明るい未来ではなく、

・人間は生命とテクノロジーが融合したサイバネティック生物、いわばサイボーグになる
・情報技術は指数関数的に成長していき、人間の理解力では把握できない段階にまで至る

と悲観的な世界として記されています。

プレ・シンギュラリティ(前特異点)とは?

シンギュラリティの前にはプレ・シンギュラリティという社会変動が起こると言われています。

これはスーパーコンピューター開発者であり、次世代の汎用人工知能の研究者である齊藤元章氏が提唱しており、2030年ごろに実現されると表現しています。

シンギュラリティは、AI(人工知能)が人間の能力を超えるという技術的な変化を示す点であるのに対して、プレ・シンギュラリティは現在の社会的なシステムが変化する点を指しています。

具体的には、
・エネルギー問題が解決されて無料で提供される
・貨幣が無くなる
・人間の労働が無くなる


などの変化が予想されています。

シンギュラリティが社会に与える影響

これまではプレ・シンギュラリティが社会に与える影響について述べましたが、シンギュラリティが到来した後はどのような影響があるのでしょうか?

「雇用の変化」「社会制度の変化」「人体の変化」という3つの観点でお伝えします。

■雇用の変化

シンギュラリティにより、一部の仕事や職業が人工知能に置き換わることが予想されています。

2014年、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らが発表した論文「雇用の未来—コンピューター化によって仕事は失われるのか」においては、20年後には今ある仕事の47%はなくなるという結論が導き出されました。

具体的には、以下のような職業はAIの発達により無くなってしまう職業だと言われています。

・スポーツの審判
・レジ係
・訪問販売員
・弁護士助手


一定の基準により判断を行うことのできる仕事や、比較的単純な作業を行う仕事はなくなるとされていることが分かります。

一方で、以下のような職業は残るとされています。

・歯科医師
・漫画家
・栄養士
・教師


クリエイティブな仕事人体に影響を及ぼす仕事などはAIではなく人間が行うべきだとされていることが分かります。

■社会制度の変化

シンギュラリティが到来し人間の仕事がAIに代替されると、ベーシックインカム制度が導入される可能性があると考えられています。

ベーシックインカムとは、簡単に言うと最低限の所得を保障する仕組みです。

国民に対して政府が最低限の生活を送る為に必要な額の現金を定期的に支給する政策で、国民配当/基本所得保障/最低生活保障と呼ばれる場合もあります。

ベーシックインカムが導入されると考えられている理由は、AIに仕事を奪われて貧困格差が広がることなどが挙げられます。

政府は一定の金額を支給することで、貧困格差の拡大を防ぐ動きに出ると考えられています。

一方で、ベーシックインカム導入にはデメリットもあります。一定の賃金を得ることで、労働意欲低下などを引き起こすリスクもあり、必ずしも実現するとは限らないと言えるでしょう。

■人体への変化

シンギュラリティが加速すると、発達した人工知能により、人間の脳や臓器の仕組みや働きを全て解明することができ、人体の一部を人工化することも可能になるのではないかと言われています。

今まで技術的に代替が不可能と言われていた臓器でも代替が可能になると言われており、その結果人類は不老不死を手に入れる可能性もあります。

シンギュラリティの実現可能性は?実現要因について

シンギュラリティの実現性を考える際には、「ムーアの法則」「収穫加速の法則」という2つの法則を根拠にされることが多くあります。

それぞれお伝えしていきます。

■ムーアの法則

ムーアの法則は、インテル社の創業者であるゴードン・ムーア氏により論じられた指標で、「半導体の集積率が18ヶ月で2倍になること」を指します。

半導体はコンピュータのCPUなどに用いられていることから、半導体の集積率が2倍になることは、コンピュータの性能が上がることに繋がります。

しかしムーアの法則は、近年その限界を指摘されることも多くあります。

そのうちの一人が、カーツワイル氏です。カーツワイル氏は、ムーアの法則を一般テクノロジーからさらに思考範囲を広げて、「収穫加速の法則」を生み出しました。

※参考:過剰と破壊の経済学 「ムーアの法則」で何が変わるのか? (アスキー新書 042)

■収穫加速の法則

収束加速の法則とは、技術進歩において、その性能が直線的ではなく、指数関数的に向上する法則です。

つまり、新しい技術が発明され、複数のそれらの技術が次の段階の発明に利用されることにより、次世代の技術革新までの間隔が短くなることです。

収穫加速が起こったその先に、シンギュラリティが実現すると言われています。

シンギュラリティに対する批判について

シンギュラリティがこないと主張する人物としては、ドイツの哲学者であるマルクス・ガブリエル氏、人工知能の権威であるジェリー・カプラン氏などが挙げられます。

• マルクス・ガブリエル氏

ドイツの哲学者、マルクス・ガブリエル氏も、シンギュラリティの到来を否定しています。「知性」は人間の非生物的、感覚的な部分であり、「知性」と人工知能は異なるため、シンギュラリティの到来を反対しています。

• ジェリー・カプラン氏

人工知能の権威であるジェリー・カプラン氏は、「人工知能は人間ではないので、人間と同じようには考えない」として、シンギュラリティはこないとの見解を示しています。また、映画やドラマなどの作品の影響などもあり、人工知能に対して過剰な危機感を抱く人が多いと述べています。

シンギュラリティの到来で変わる企業のマネジメント

プレシンギュラリティーが起こるとされる2030年ごろ、シンギュラリティーが起こるとされる2045年、いずれも決して遠い未来ではありません。むしろ、その時期はもっと早まるのではないかともいわれています。

大切なのは、パラダイムシフトが起こったときに環境変化に対応できるよう、予測し対策をしておくことです。

ここでは企業ができる対策に関して、「マネジメントの変化」という観点でお伝えします。慶應大学SFCの教授で、ヤフーのCSOでもある安宅氏は以下の5つが変化すると提唱しています。

■①経営資源は「ヒト・モノ・カネ」から「ヒト・データ・キカイ」へ

今後マネジメントで重要な仕事の1つは「人間はどこで価値を出せ、どこはキカイ(AI)とデータの判断に任せるべきか」判断することです。

現場がAIとデータを用いて洞察を得て、それをもとに業務を進めるようなマネジメントが必要になります。

その新しい力を引き出すには、マネジャーがAIやデータの能力・限界に精通しているかどうかが非常に重要になると言われています。

■②目指す姿を設定し、正しい問いを投げかけることが業務の中心に

これまでマネジメント業務の中心は、実行を担保するための指示や実行管理でしたが、AIの進化が進めば、問いを正しく枠組みに落として、組織に投げ込めるかがマネジメント業務の中心になると言われています。

■③異常値対応が重要な責任に

AIが進化すると、一度自動化すると決めたことはAI×データに任せたほうが正しく進む方が多くなります。つまり、これまで通り人間が最終的な意思決定を行うというデータドリブンの延長線上では回らなくなるということです。

AIデータ利活用全体のチューニングを行い、例外的な問題が起こった際にその重要性を判断して問を投げかけ原因を究明し、ガイドしていくのがマネジメントの役割になっていきます。

■④AI化する系の全体をどう制御するかが大切に

AIに任せる部分は多かれ少なかれブラックボックス化します。そのため、これから発生するリスクマネジメントをどう考えるかは、マネジメントの重要な判断になります。

ブラックボックス化しやすいAI化には慎重な判断をしたうえで、機械に任せずにコントロールする変数を決めていくことが重要になると考えられています。

■⑤ソフトなスキルがこれまで以上に大切に

これまでも人を理解し動かしていくマネジメントは重要でしたが、これまで以上にAIと人間の世界を繋ぐソフトなスキルが重要になります。

誰も機械に支持されたいとは思っていないため、AIやデータから生み出されたインサイトを、現場の一人ひとりに丁寧に伝えていくことは重要なスキルになると考えられています。

ここまで、シンギュラリティの到来に備えて企業が対策できることについて述べてきました。

AIに任せられない部分ももちろんあるため、AIと人間が担う部分をうまくコントロールしていくことが大事だと分かりました。

しかし、「AIが人間を超える」と言われているなかで、AIと人間の違いは一体どこにあるのかは曖昧な部分があります。ここからはAIと人間のすみ分けについて、お伝えしていきます。

※参考:人工知能―――機械といかに向き合うか (Harvard Business Review)

AIと人間のすみ分け

安宅氏は、著書の中で、AIは人間のすべてをカバーすることはできないと述べています。具体的にAIに不可能なこととして、以下の8つが挙げられています。

■①AIには意思が無い

AIには個体としての意識がありません。どうありたいという欲望や欲求も無いため、ビジョンやゴールなどを設定することはできません。

■②AIは人間のように知覚できない

肌触り、気持ちよさ、美しさなどの人の価値観は、ロジックというよりかは感情や感覚と連動しています。

こういった質感の理解をして改善をしていくことは、AIにはできないと言われています。

■③AIは事例が少ないと対応できない

AIは前例や類似事例をもとに論理的に判断します。人間は前例のないものでもアナロジーを利かせて判断しますが、AIには難しいと言えます。

■④AIは問いを生み出せない

AIは問いを投げかけるスキルを持っていません。問題提起や課題設定はできないため、解くべき課題(イシュー)の明確化や構造は人間の仕事として残ると言われています。

■⑤AIは枠組みのデザインができない

オプション出しや課題にあった判断の軸整理など、総合的な枠のデザインはAIにはできません。何をAIにやらせるかデザインし、言語化することは人間の仕事として残るでしょう。

■⑥AIにはヒラメキがない

セレンディピティと言われるような、「普通には思いつかないアナロジー」「まったく新しい組み合わせ」はAIにはできません。つまり、クリエイティブな思考には強くないと言えます。

■⑦AIは常識的判断ができない

人としてのルールや常識的判断は、人間が膨大な社会の経験の中で学んできたことです。AIに一定は教えることができても、すべてについて言語化し教えることは難しいと言われています。

■⑧AIには人を動かす力、リーダーシップがない

AIがどれだけ論理的で効果的な提言ができても、対人的な影響力を持つのは困難だと言われています。

記事まとめ

この記事ではシンギュラリティの意味や到来時期、AIの持つ力についてお伝えしました。シンギュラリティが到来し、AIが人間の仕事を代替する時代が来るかは不透明です。

しかし、AIが発達し、人間の仕事をアシストしたりAIと人間が協働する時代はおそらく到来するでしょう。いくらAIの技術が素晴らしいといっても、AIでなく人間でないと対応できないことも多くあります。

私たちにとって大切なのは、これから進化するAIを知り、人間を知り、AIとより良い協働ができるように準備をしていくことでしょう。



著者プロフィール

  

湯浅 朱菜

【プロフィール】
採用を主な専門領域とし、 リンクアンドモチベーション入社後、ベンチャー企業向けのコンサルティングに従事。 現在は採用の専門性を活かし、大手企業の採用コンサルティング支援を行う。 IT系業界、小売業界など幅広い業界の企業様にコンサルティング経験を持つ。
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