パワハラとは?当てはまる言動や特徴、効果的な対処法とは

 

厚生労働省によると、2018年度の民事上の個別労働紛争の相談件数トップは「いじめ・嫌やがらせ」に関するもので、8万件を超えています。そのような実態を受け、2020年6月にパワハラ防止法が施行されました。今回は、パワハラの定義や具体的な行為、パワハラが起こる要因、パワハラを防止するために行うべきことなどを解説します。

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パワハラとは?

厚生労働省の定義によると、パワハラとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を言います。

労働施策総合推進法では、パワハラの3要素を規定しており、

①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるものであり、

この3つを満たすものがパワハラであると定義されています。

それぞれ細かく見てみましょう。

要素①「優越的な関係を背景とした言動」

まず、①「優越的な関係を背景とした言動」とは何でしょうか?

1つ目は、職務上の地位が上位の者による行為で、皆さんがパワハラと聞いてイメージする上司から部下への嫌がらせ等の行為です。

2つ目は、同僚または部下による行為で、豊富な知識や経験を持っている者が円滑な業務遂行に協力をしない行為です。

3つ目は、同僚または部下からの集団による行為で、抵抗したり拒絶したりすることが困難な行為を指します。

注意すべきは、パワハラとは上司から部下への悪質な行為に限らず、同僚または部下からの同様の行為も含まれるということです。

要素②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」

続いて、②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とは何でしょうか?

これは、業務上明らかに必要性のない行為、業務の目的を大きく逸脱した行為、業務を遂行するための手段として不適当な行為、当該行為の回数・行為者の数など、その対応や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える行為、を言います。

要素③「労働者の就業環境が害される言動」

最後に、③「労働者の就業環境が害される」とはどういうことでしょうか?

上記のような行為により、労働者が身体的・精神的な苦痛を感じ、能力の発揮に重大な影響が生じるなど、労働者が仕事をする上で見過ごせない程度の支障が生じることを指します。

この判断にあたっては、個々人によって様々な視界があるため、感じ方・受け止め方にバラツキがありますが、社会一般の労働者が就業する上で看過できないレベルの支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当とされています。

参考:厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕

なぜ、パワハラが起こるのか?

パワハラ問題の裏側には、実は必然的な背景があります。

その背景を紐解くためには、まず会社とはどういう存在なのかということを改めて理解しなければなりません。

歴史をさかのぼること400年前。1600年代に東インド会社が誕生するあたりから、会社は儲けを追求する体質が強まり、資本主義と結びつくようになりました。そして同時に、会社はそこに関わる人たちの欲望実現の手段としても機能するようになりました。

ここでは、便宜上、会社に人格を与えて会社を「カイシャ君」と呼ぶこととします。

カイシャ君は、2つの性質を持っています。

1つ目は、お金のことしか考えない「守銭奴」であるということです。カイシャ君は、欲望実現を目的として存在しているため、「儲からないことはやらないし、やるべきでもない」という経済合理軸を中心として動きます。

2つ目は、周囲と摩擦を起こしやすい「問題児」であるということです。社会は、必ずしも経済合理軸だけでは動きません。しかし、カイシャ君は経済合理軸以外の価値観を受け入れないため、社会と摩擦やトラブルを起こしやすいのです。

一方で、カイシャ君の中にいる従業員は、「限定合理的感情人である」という特徴を持っています。人間は、必ずしも合理的に動くわけではなく、現状を維持しようというバイアスや目先のことを優先しようというバイアスなどが働きます。また、周りと同じように行動しようというバイアスもかかります。

このようなカイシャ君と従業員の「間」の構造によって、 カイシャ君が儲けのために少々法律や倫理規範を逸脱していたとしても、従業員は「おかしいのではないか」「やってはいけないのではないか」という疑問を表明できない”空気”や”体質”が出来上がってしまったり、そもそも間違っていることをおかしいと感じることすらできなくなったりしてしまいます。

つまり、「儲けのためであればこのくらいの叱責は当たり前」という風土が出来上がってしまうと、パワハラが蔓延してしまうのです。

<参考>「コンプライアンス問題を起こさないために最も大切なこととは

代表的なパワハラ行為

職場におけるパワハラの状況は多種多様ですが、代表的な言動の6つの類型が厚生労働省より提示されています。

行為①身体的な攻撃

該当すると考えられる例としては、殴打や足蹴りを行ったり、相手にモノを投げつけたりする行為です。誤ってぶつかることはパワハラに該当しにくい例と言えます。

行為②精神的な攻撃

相手の人格や能力を否定したり、長時間もしくは繰り返しの罵倒、叱責を行うことはパワハラに該当します。反対に、遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意しても改善がなされない相手に対して強く注意をしたり、会社にとって重大な問題を行った者に対する注意を行ったりすることはパワハラには該当しません。

行為③人間関係からの切り離し

意に沿わない相手を別室に隔離したり自宅研修をさせたりすること、1人の労働者に対して集団で無視し、職場で孤立させることはハラスメント行為に該当します。

一方で、新規採用者の育成を目的として短期集中的に別室で研修をしたり、懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し一時的に別室で必要な研修を受けさせることはパワハラには該当しません。

行為④過大な要求

肉体的な苦痛を伴う過酷な環境下で、直接関係のない作業を長期的に命じたり、新卒採用者に対して必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業務目標を課し、達成できなかったことに対して厳しく叱責をしたり、業務とは直接関係のない私的な雑用を強制したりすることはパワハラに該当します。

反対に、育成を目的として少し高いレベルの業務を任せたり、繁忙期に業務上の必要性から通常時期より一定程度多い業務を任せることはパワハラには該当しません。

行為⑤過小な要求

気に入らない労働者に対して嫌がらせを目的として仕事を与えないこと、管理職である労働者を退職させるために、誰でも遂行可能な業務を行わせることは、パワハラに該当します。

他方、労働者の能力に応じて、ある程度業務内容や業務量を軽減することはパワハラには該当しません。

行為⑥個の侵害

職場外でも継続的に無視したり、労働者の性的指向や病歴などの機微な個人情報について、本人の了解を得ずに周囲に漏らすことなどは、パワハラには該当することがあります。

労働者への配慮を目的として、家族の状況をヒアリングしたり、本人の了解を得て個人情報について人事部門担当者に伝達することなどはパワハラには該当しません。

以上、6つの代表的な言動を見てきました。個別の事案によって判断が異なることは十分にあり得ますが、いずれも言動の裏側にある動機が相手を貶めることであればパワハラに該当する可能性が高くなります。会社としては、判断が微妙なグレーゾーンの事案も含め、広く相談に乗るといった柔軟な対応が求められます。

参考
厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部 職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕

パワハラ社員の特徴

パワハラの行為者となる従業員には、どのような特徴があるのでしょうか?先ほどの「カイシャ君」や「人間は限定合理的な感情人である」という考え方をベースに考えてみましょう。

特徴①業績に対する強い責任感を持っている

会社が「儲けのためであれば何でもする」という経済合理軸で動くことは先述した通りです。管理職や経営に近い立場であればあるほど、業績向上のプレッシャーがかかることは想像に難くありません。

進捗状況が芳しくなく、「何としてでも予算を達成させなければならない」という強い責任感が裏目に出てしまうと、周囲のメンバーへの高圧的な態度に繋がってしまいます。

責任感が強いことは良いことですが、周囲に対して限度を超えて高圧的に振舞うことは許されることではありません。言い方や伝え方に注意を払い、チーム内で適切に役割分担をしながら予算達成に向けて組織を牽引しましょう。

特徴②問題を「間」ではなく「個人」に帰着させる

リンクアンドモチベーションでは、問題は「個人」ではなく「間」に起こるものであると定義しています。

しかし、パワハラが起こっているシーンに光を当てると、立場上優位にある者が、起こっている問題や事象の原因を劣位にある者に押し付けている構図が見受けられます。

その問題の原因は自分にもある、ということを理解しておらず、”自分は正しい”という自己中心的、他責的な思考があることが多いのです。

再三になりますが、問題は「間」にあります。どうしたら問題を解決できるのか、双方が歩み寄り、対話を行うことが重要です。

特徴③相手の感情に配慮できない

人間は、完全合理的な経済人ではなく、限定合理的な感情人であることも先ほど述べた通りです。「こういう時はこうあるべき」というように、合理のみで判断をしてしまい相手への感情的な配慮が欠けてしまうと、時にパワハラに該当する事案に繋がりかねません。

受け止め方や感じ方は人それぞれであることを理解し、感情に配慮しながらコミュニケーションをとることが重要です。

パワハラの具体例

パワハラ防止法で規定されているパワハラの3つの要素と関連付けながら、パワハラの具体的事例を見ていきましょう。

事例①身体的攻撃

係長であるAさんが、覚えの悪い部下Bさんに対して、足蹴りをしたり、罵声を浴びせたりしている。周囲の職員から見てもとても不愉快で、「係長Aさんとは同じ職場で働きたくない」との声が出ている。部下Bさんは係長Aさんから叱責されることは仕方のないことだと捉えており、上記の行為に対して窓口に相談していない。

このケースは、上司・部下の関係、すなわち優越的な関係が背景にあること、足蹴りや罵声を浴びせるといった行為が業務の適正な範囲を超える行為であること、周囲の職員が不愉快に感じていることが就業環境を害することになることから、パワハラに該当すると考えられます。

このような言動が続くと、部下Bさんはもちろん、他の従業員の退職申請に繋がる可能性もあります。係長Aさんの行為を止めさせると共に、このような行為を行ってはならない理由を指導しなければなりません。

事例②精神的攻撃

課長Aさんは、業績の振るわない部下Bさんの指導を続けている。Bさんの人事評価はこの2、3年悪化していた。今年度も成果が顕れず、課長Aさんは部下Bさんに次のようなメールを送った。「全くやる気が伝わってきません。部署にとっても会社にとっても損失です」。このメールの宛先には、部下Bさん以外の当課の従業員も含まれており、本文は赤字かつ太字で記載されていた。部下Bさんは精神的に辛くなっていった。

このケースでも、上司・部下の関係であることから優越的な関係を背景としていることになります。また、人格を否定するようなメール文となっており、業務の適正範囲を超えています。

さらに、赤字や太字などの文章を強調するフォントを使用していること、本人以外の従業員にも展開されていることも業務の適正範囲外とみなされるでしょう。

そして、部下Bさんは辛い思いをしており、メールが送られてきた他の従業員にも悪影響が出ると予想されることから、課長Aさんの行為はパワハラに該当すると考えられます。

業績が振るわない部下に対して指導をすること、伝達手段としてメールを利用することは問題ありません。

しかし、メールでの指導やコミュニケーションは一方的になりがちであり、相手に過剰に伝わる可能性があります。オンラインでのコミュニケーションが増えてきた昨今だからこそ、相手に過度な威圧感を与えない内容か慎重に注意を払わなければなりません。

事例③人間関係からの切り離し

Aさんは対人関係が得意でなく、他の従業員とコミュニケーションをとるのが上手ではない。ミスが多く上司Bさんにいつも叱られている。同僚の前で叱責されることも多く、同僚はAさんと関わると自分も巻き込まれるのではないかという恐れからAさんと距離を取るようになった。Aさんからの質問も適当にあしらったり、同僚同士のグループラインからAさんだけ外されたりしている。そのため重要な連絡もAさんのみ知るのが遅くなり、上司Bさんに叱られる、という悪循環が起きていた。Aさんは出勤するのが困難な精神状態になっていった。

このケースは、上司・部下という関係性もさながら、同僚からの集団による嫌がらせ行為であり、数を優位としていることになります。

また、Aさんからの質問を適当にあしらったり、重要事項が流れるグループラインから除外することは、Aさんの業務遂行を妨害することになり、業務の適正範囲を超えています。

さらに、Aさんが出勤するのが困難なほどの精神的苦痛を得ていることから、就業環境が害されており、パワハラに該当すると考えられます。

人間関係からの切り離しについては一番の責任は、上司にあります。職場内でいじめが起こっている状況を把握し、Aさんの強みを生かす役割設計や異動の検討、職場内でのオープンな対話促進を行うべきです。

また、上司自身の言動もパワハラに繋がりかねません。職場状況を冷静に俯瞰し、適切な対応を図りましょう。

事例④過大な要求

世間の働き方改革に対する要請が強まり、部長Aさんから「残業時間は決められた上限時間を死守するように」という通達がなされた。同時に、「プロジェクト完遂の期限厳守」も強く課せられており、多くの仕事を抱えるようになった部下たちは、残業時間を虚偽申請しながら深夜まで働き、精神的に追いつめられるようになった。

このケースも上司・部下間で起こっている問題のため、優越的な関係を背景としていることになります。

また、部下に過度の残業を強いるような過大な仕事を課す行為は業務の適正範囲を超えていると見なされます。

さらに、過大な要求に対して複数の部下が虚偽の申請をしてまで残業を行っており、精神的に追い詰められています。部長Aさんは、部下に残業時間を超えないように、と伝えていますが、部下たちは結果として深夜まで仕事をしているため過大な要求に当たり、パワハラに該当すると考えられます。

定められた残業時間内に業務を終えられるよう工夫することは大切なことです。

しかし、結果として深夜残業が続き、さらに虚偽の申請を行っていることはコンプライアンスに違反することになります。上司としては、指示を出しっぱなしにするのではなく、部下の勤務状況に配慮する必要があります。

また、日ごろから部下が相談できるような風通しの良い環境づくりを行うことが重要です。

事例⑤過小な要求

課長Aさんは、仕事の出来が良く、部下からの信頼も厚く、将来が期待される人材である。Aさんの上司である部長Bさんはこのことを不快に思っており、Aさんにきつく当たったり難易度の高い仕事を与え続けたりした。しかし、Aさんはその仕事もそつなくこなし、Aさんの株は上がり続け、部下たちは部長Bさんよりも課長Aさんの指示を聞くようになっていた。憤怒した部長Bさんは、課長Aさんを大きなプロジェクトから外したり、重要な業務を他の従業員に任せたりしてAさんの評価が上がらないようにした。最初は我慢していたAさんだが、あからさまな行為に黙認できなくなり、本部に相談したことで問題が発覚した。

このケースも、上司・部下の間で起こっており、優越的な関係を背景とした行為に当たります。

また、上司の私欲のために大きなプロジェクトから部下を外しているため、業務の適正範囲を超えているとみなすことができます。部下も我慢できなくなり思わず相談したとのことから就業環境が害されており、パワハラに当たります。

個人的に不快な思いをしたとしても、優秀な部下に対して程度の低い仕事を行うように命じ続けることがあってはなりません。上司・部下間で話し合いの場を設け、部署全体の業務生産性を上げるようにすべきです。

事例⑥個の侵害

社員Aさんは、上司Bさんより、休日に業務に関するメッセージが送られてきていたが確認していなかったことを厳しく叱責された。また、上司Bさんは他の社員に対しても休日や勤務時間外にSNSを使った業務連絡を行っており、「今時SNSを使ったコミュニケーションもとれないのか!」と怒鳴っていた。このようなことが続き、社員Aさんは仕事に集中できなくなった。

このケースも上司・部下の間で起こっています。また、休日や時間外に業務に関する連絡を行っていることは業務の適正な範囲を超えていますし、私生活に立ち入ることになります。Aさんが仕事に集中できなくなる状況を引き起こしていることから、就業環境を害しているとも言え、パワハラに該当する行為となります。

上司は、業務の緊急度・重要度を十分に考えて安易に私生活に立ち入らないようにすべきです。

また、時間外でのSNSの発信はプライベートな内容であったとしても、パワハラに該当する可能性があるという認識を持つことが重要です。

参考: 東京人権啓発企業連絡会 パワハラ事例集
meden パワハラ防止法 過小な要求とは

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パワハラ被害にあっている場合の対処法

パワハラを受けた際、どのように対処すべきなのでしょうか。

対処法①パワハラの証拠を残す

まずは、パワハラの事実について記録を残しましょう。

内部通報をはじめ、周囲に助けを求める場合には、どのような言動をどの程度受けたのか、客観的な事実がなければ取り合ってもらえない可能性があります。

パワハラを受けた期間、場所、相手の言動、周囲で見ていた人などをメモに残すようにしましょう。必要に応じて、ボイスレコーダーで発言を録音したり、映像を録画したりすることもおすすめです。

対処法②会社内で相談する

社内のハラスメント相談窓口や人事部などに事実を伝え、相談してみましょう。また、信頼できる上司や同僚に相談することも一つの手段です。

ただし、相談したことがパワハラの行為者の耳に入ると、二次被害を受ける可能性があります。相談先を慎重に選ぶことが大切です。

対処法③会社外で相談する

場合によっては、第三者機関や弁護士に相談することも有効です。外部機関としては、労働局や労働基準監督署にある「総合労働相談コーナー」や、最寄りの法務局や地方法務局に電話が繋がる「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)などがあります。

また、本人が直接企業に相談しても取り合ってもらえなかった場合、弁護士が交渉することで企業側が応じてくれるケースもあります。依頼を受けた弁護士は、企業側との協議や交渉を代理で行ったり、パワハラの中止を求める文章を作成したりできますし、訴訟などに発展した場合にも訴訟対応を行ってくれます。心強い味方となり得ますので検討してみてください。

対処法④転職・退職を検討する

精神的に追い込まれておりパワハラへの対処が難しい場合や、今後一切パワハラの行為者や会社と関わりたくない場合には、転職や退職を検討するべきです。精神疾患にも繋がりかねない状況ですので、決して無理をしないようにしましょう。

事情があり退職を申し出ることが難しい場合には、「退職代行サービス」の利用を検討してみましょう。退職手続きを弁護士などの第三者が代行してくれます。

パワハラ防止法とは

パワハラ防止法とは、改正された労働施策総合推進法のことです。ハラスメントのない社会の実現に向けて、職場のパワハラやセクハラ対策を強化するために改正されました。この法律により、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月からパワハラ対策が義務付けられます。

パワハラ防止法では、国の施策として「職場における労働者の集合環境を害する言動に起因する問題の解決の促進」(ハラスメント対策)が明記されました。

また、パワハラを具体的に定義したり、パワハラ防止のため、事業主に相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講じることが義務付けられました。

さらに、パワハラに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停の対象とするとともに、措置義務等について履行確保のための規定が整備されています。

パワハラ防止法で義務付けられる項目

■社内方針の明確化と周知・啓発

企業には、パワーハラスメントの内容およびパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが義務付けられます。

また、パワハラ行為者については厳正に対処する旨と対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に通知・啓発しなければなりません。

■適切に対処する体制整備

苦情を含む相談窓口をあらかじめ定め、労働者に通知することが義務付けられます。また、相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすることも必要です。

パワハラが実際に起こっている場合だけでなく、今後発生する恐れがある場合や、パワハラに該当するか否かグレーな場合であっても、広く相談に対応することが求められます。

■職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

パワハラに関する相談があったり、行為が見受けられたりした場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認することが重要です。

そして、事実関係を確認できた場合には、被害者に対して配慮のための措置を速やか且つ適切に行うこと、行為者に対する措置を適正に行うことが求められます。また、再発防止に向けた措置を講ずることも必要です。

■プライバシー保護、不利益取扱いの禁止

相談者や行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知することも義務付けられます。

また、事業主へ相談したことや事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したことなどを理由として、解雇やその他不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に通知・啓発することが求められます。

パワハラを放置するリスク

パワハラを看過することには様々なリスクがあります。重大な問題に繋がる前に、早期発見・対応を行うようにしましょう。

リスク①被害者のリスク

直接被害を受けている本人は、心身の不調によって生産性が低下したり、精神疾患の罹患によって長期的なキャリアや収入に影響が出たりします。

また、直接被害を受けていないとしても職場の従業員も強い緊張状態に置かれることがあります。パワハラが発生しているということは、良好なコミュニケーションが取れていないということですので、多くの従業員のストレスの要因になったり集中力の低下を引き起こしたりします。

リスク②行為者のリスク

行為者による言動がパワハラと認められる場合、民事・刑事両面で訴訟を受ける可能性があります。訴えが認められた場合、慰謝料や弁護士費用などの損害賠償が請求されます。また、会社より懲戒処分を受ける可能性もあります。

リスク③会社のリスク

パワハラが起こっていることを知りながら企業が該当行為を放置・黙認した場合、企業責任を問われることがあります。パワハラ防止法では罰則は規定されていませんが、違反すると勧告・指導の対象となる可能性もあります。場合によっては、社名が公表されることもあります。

万が一、職場のパワハラが原因で従業員が自殺するようなことがあると、使用者として損害賠償を支払う義務が生じたり、企業に対するレピュテーションが低下するリスクがあります。

パワハラ対策の実態と取り組み事例

厚生労働省によると、2021年現在、約8割の企業が「ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」および「相談窓口の設置と周知」を実施しています。

一方で、「相談窓口担当者が相談内容や状況に応じて適切に対応できるようにするための対応」ができている企業の割合は約4割にとどまりました。

では、パワハラを防止するために具体的にどのような取り組みを行うと良いのでしょうか。

事例①製造業A社(約2,300名)

国内に6つの工場を展開する装置産業型のメーカーA社は、業態上どうしても男性中心かつ年功的な職場になりがちで、年長者が過去に自分が受けたのと同じように若年層を指導することもあり、ハラスメント事案が発生していたと言います。事案の発生を機に、以下のようなハラスメント対策を行うようになりました。

・事案発生直後、社長からハラスメント防止対策を指示。
研修を行うにあたり、社長訓示を全事業所にライブ中継。

・行動基準にハラスメント防止を明記。

・全役員従業員を対象として、匿名のアンケートを実施
提出方法は後納郵便で人事部門に直送、労組の立ち合いの元、投函地域が分からないよう消印を削除するなど徹底。

・全生産現場に対して体感型ハラスメント防止研修を実施。
行為者・被害者・傍観者をそれぞれ体験し、それぞれの立場の感情を理解するようなロールプレイングを実施。

事例②建設業B社(約2,500名)

大手親会社のグループ企業として新築住宅販売、リフォーム、不動産など、個人向け住宅の建築関連事業を展開するB社では、下記のようなハラスメント対策を行っています。

・年4回実施するeラーニング研修の受講徹底。
仕組みとして、4回すべての研修を修了しないとグループ共通のイントラネット(社員専用のデータベース)を利用できないようになっている。

・展示場を統括する店長に対して年1回集合研修を実施。
業績の追求とハラスメントの防止を同時実現させることの重要性を伝達。

・コンプライアンス・マニュアルを全社員に配布。
グループ全体のルールに加え、住宅事業領域の内容に絞り込んで編集した「コンプライアンス・マニュアル」を冊子にして配布。展示場を統括するエリアマネージャー職研修でも活用し、研修後はエリアマネージャー自身が講師となり、担当エリアの社員に浸透を図る。

事例③製造業C社(約4,800名)

多数の製品別・事業別企業で構成されるグループ企業であるC社は、国内にとどまらず海外にも多く展開しています。外国人社員も多く在籍し活躍していますが、働き方という面ではまだまだ日本人男性を中心とした同質性の高い職場環境で、残業の多い働き方が見受けられました。ハラスメント対策は、こうした状況を霧消するきっかけになるのではないかという期待も込めて下記のような取り組みをしています。

・クレド(信条)で多様性の尊重を謳う。

・実態を把握するために、「やる気、やり甲斐」アンケートを実施。

・海外赴任前に海外文化と対人関係の研修を実施。
現地法人との人事交流を盛んに行い、真の意味のダイバーシティを体感し、「相手に対する敬意」を身につけさせる。

・内部通報のためのグループ全体の窓口、当社の独自窓口、弁護士事務所、グループ会長への直訴といった、4つの相談窓口を設置。

参考:職場のパワーハラスメント対策 取組好事例集

記事まとめ

会社の持つ性質上、パワハラはどうしても起こりやすい構造にあります。しかし、パワハラは、職場全体に悪影響を及ぼし、時に従業員の命を奪ったり、企業全体の評価を下げたりすることに繋がりかねません。

パワハラの相談を受けたり、見かけたりしたら、速やかに調査を実施し、被害者のケアや行為者の処分を適切に行うことが大切です。就業規則の見直しや従業員への周知・啓発を強化し、一点の曇りもなくパワハラのない職場環境を目指しましょう。

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